前編・適当に書け
「なんか話を思いついた! よし書こう!」
と思いつつも、ついついゲームしたりなろうを読んだりして一向に書き進められない私。せめて部屋の掃除でもすれば片付くものを。
いざスマホに向き合っても(スマホ入力する執筆スタイルです)、細部が詰められずにすぐストップ。
モチベが全然上がらない……!
そんな私が、とりあえずちょっとずつでも書き進められるように心に飼っている名言たち。
それらを紹介し、皆さまに「こんなんでいいんだ」「自分が飼っている名言は何だろう」などと思っていただければ幸いです。
別に、この名言通りにすれば上手く書けるとかそんなんではないです。そもそも名言なのかよというものも混じっております。
よろしくお願いします。
・「俺の宇宙では鳴るんだよ」
映画『スター・ウォーズ』の監督、ジョージ・ルーカスのお言葉。
ある人が、
「宇宙での戦闘シーンで、爆発音が聞こえるのはおかしい。真空なんだから音は伝わらないだろう」
と言ったそうな。
そう言われるとそうやな(感心)。
それにジョージ・ルーカスが答えていわく。
「俺の宇宙では(音が)鳴るんだよ」
俺の宇宙では鳴る。
俺の宇宙。
ええやんそれ……!
つまり、物語を面白くするために、本筋に関係ないところは意図的に考証を無視する。そういうのはアリということなんだと思います。
ちなみにこのエピソードはネットロアであって、実際は細部まで考え尽くした世界観としての「音のある宇宙」なのですが……。私はそこを、あえてネットロアの方のニュアンスで解釈しています。
なんか、矛盾を突っ込まれて「俺の宇宙では鳴るんだよ!」みたいなキレてる感じがいい。
緻密な考証ができずに書けないくらいなら、とにかくふんわり世界観でもいいから書け。そういう自らへの鼓舞として心に飼っている名言です。
俺のナーロッパには男女共学全寮制貴族学校があるんだよ! 俺のナーロッパは名字+爵位呼びなんだよ! 俺のナーロッパは近代風だけど紙幣があるかどうかあやしいよ! 俺の……(以下延々と続く)
・「やることが..やることが多い..!!」
漫画『金田一少年の事件簿 犯人たちの事件簿』(原作天樹征丸・金成陽三郎・さとうふみや 漫画船津紳平)1巻より、犯人のお言葉。点々は2点リーダ×1です。
このお話は『金田一少年の事件簿』の、犯人サイドの視点で本編ストーリーが繰り返されるスピンオフなのですが。
めっちゃ犯人が大変で笑う。
推理小説で時々思う『トリックは華麗だし話は面白いんだけど、これ犯人は大変だな!』を体現してくれる漫画です。
ちなみにこの名言は、犯人が短時間のうちに殺人と偽装工作を行って、あちこち走り回っている時に繰り出されたもの。大変だな!
これのどの辺が名言(と思ってる)かというと、『可能か不可能かで言えば可能なんだけど、キャラが少々不自然な行動を取ってたり、偶然の要素がやたら強かったりとご都合主義。でも面白いからこれでいいんだ』というところです。
プロの作品でも『この恋人同士、何でこんなに偶然のトラブルが次々起こってすれ違うの〜!?(←その方が面白いから)』『このキャラ、なんで主人公の言動をここまで悪意にとってライバル化するんだ(←その方が面白いから)』とかありますよね。
まして素人さんの書く小説。敵キャラが知能低下デバフくらってるとか、主人公がそこらへんを歩くだけでトラブルに巻き込まれるとか、全然あり。
イケるイケる。とりあえず整合性に悩むヒマがあったら書け。
・「プリンです、女王さま。」
C.S.ルイスのファンタジー小説『ライオンと魔女』より。鉤括弧閉じる前に読点あり。
異世界に迷い込んだ少年エドマンドが、白い魔女から好きな食べ物を訊かれた時の答えがこれ。
その後、魔女が魔法で大量のプリンを出してエドマンドに与えます。「あまくて、ふわふわしていて……」
ふわふわ? プリンが??
最近知ったのですが、原作ではプリンではなくターキッシュデライト。トルコの、羽二重餅とか求肥っぽい食感のお菓子だそうです。
ターキッシュデライトでは日本の読者に伝わらないため、分かりやすい「プリン」と訳したのだとか(ちなみに新訳版では「ターキッシュデライト」にした上で、後ろに説明文を追加しています)。
全然プリンじゃない。
つまり、実際にその世界ではどうだったかよりも、読者への分かりやすさを優先して別の言葉にしてしまうのはアリということ。
エドマンドが、白い魔女に魔法の食べ物で籠絡されたのが重要なのであって、それがターキッシュデライトだろうがプリンだろうがシュールストレミングだろうが本筋には影響しない。ここは読者がみんな知っていて、同じ機能を持つものに適宜変更すればよろしい。そういう考え方です。
異世界の長さや重さは、便宜的にメートル法に翻訳されている。ジャガイモと称する野菜は実際はナーロッパ固有種の謎の植物かもしれない。サンドイッチはナーロッパでは名称も形状も別物なのを、読者が分かるようにサンドイッチということにしている。
異世界らしい名称を思いつかなくて手が止まるくらいなら、大きさ15センチのポテトサンドイッチとか出してもいいから書け。とりあえず書け。
・先読みされることは問題がない
TRPGのルールブック(以下ルルブ)より。
具体的なルール名は忘れましたが、F.E.A.R.の出した複数のシステムのルルブにこの記述がありました。
要約すると『あなた(ゲームマスター)のシナリオの展開を、先にプレイヤーに言い当てられることは問題ない。なぜならあなたのシナリオはちゃんと相手に伝わって、理解されているからだ』とのこと。
私、推理メインで書いてるんですけど、やっぱり犯人やトリックを先に当てられたらどうしよう的な気持ちはあります。
しかし考えてみましょう。言い当てられるということは、ちゃんとあらすじが理解できるように書かれ、登場人物に差異があり、伏線を読み取ってもらえているということなのです。
やった! ちゃんと話が伝わっている! それに比べればオチがバレているなんて些事ですよ!
まあね、これはあくまでTRPGのテクニックなんですけどね。プレイヤーはシナリオを先読みすれば、それに相応しいロールプレイを前もって考えられますからね。それはそれで楽しめるので、小説とは条件が違うんですけどね。いいんだよこれは作者を鼓舞するフレーズということで小説にも適用するぞ(早口)。
先読みされるほどどっかで見た話でもいいから書け。書かないよりは書け。
ちなみにプレイヤーの先読みが正解だった場合、「ふふふ、どうだろうね?」などと言って意味深に笑うと、相手は勝手に深読みを始めてくれるとルルブに書いてました。
感想欄に先読み正解が出た場合の参考にどうぞ。