第62話 ロンディール城跡攻防戦(16)
「「永遠に誓わん! 何者にも縛れぬこの想い──!」」
赤い絨毯の上に並び立ち、合言葉……番の宣誓を行う二人──。
噤みの聖堂は、それ自体が錠。
だから新たに錠を持ち込んではダメ。
解錠するには、物理の鍵が二本必要……だったのね。
──キュイイィイイィンッ!
わわっ……!
二人の足元が光りだしたっ!
床の石畳の、石と石の継ぎ目を、光が伝いだして……。
それが周囲の地面へと、流れ込んでいく……。
こんな噤みの錠……初めてっ!
──ぞわわわっ!
……キャッ!?
全身に鳥肌立って、髪の毛が……静電気受けたみたいに逆立っちゃう!
噤みの力が……解錠師のわたしに干渉してるっ!
そ……外っ!
一旦外に出なきゃ……なんだかヤバそうっ!
──ガチャッ……バタンッ!
「えっ……!? ええええ~っ!?」
噤みの聖堂の影響を受けて、シアラさんが施した周囲のチェーンが光の線となって輝き……。
力は地面の下を伝って、城壁に到達。
城壁の最下段から最上段へと、ブロックとブロックの間を光が伝う……。
城壁を構成するすべてのブロックが、噤みのブロックとなっていってる……。
すごい光景……でも…………。
とっても、きれい……。
──ざわざわざわざわっ!
壁の向こうでは、「守る会」の連中が大騒ぎ。
レンさんとピャロさん……大丈夫かしら?
「……ヤバイぞっ、ピャロ! 噤みの施錠が増幅してやがるっ!」
「シアラの仕業かっ!?」
「わからん! 案外嬢ちゃんのほうかもしれねぇな! どちらにせよこのままじゃ、壁全面にアンチ・チルトが展開するっ! そうなったらもう、なにが起こるかわからんっ! 退くぞっ!」
「チッ……こんなド田舎まで来て無駄骨か! 覚えてろっ、シアラ、エルーゼ!」
──ドンッ! ドンッ!
大きな爆発音が二つ。
設置済みだった爆弾が爆発しても、壁にはもう穴はできない。
よかった……。
これでロンディール城跡が、世間の好奇の目から護られる。
……けれど本当に必要なのは、同性同士が人目をはばからず愛し合える世界。
あんな高い壁なくても、いい世界──。




