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第40話 時を超えたギフト(2)

 ──ガチャッ……バタン。


 小箱を開けに外へ出てたロディさん、無事帰還。

 毒かも……なんて言ってたから、ホッと一息。

 その手に握られてるのは、空になった箱と……。

 ……ニワトリの卵より一回り小さな、ツヤツヤした飴色の石っぽいの。

 えーと、あれって確か……。


「箱に収められていたのは、はくでした。お騒がせしてすみません、ははっ」


「そうそう、コハク! 宝石の仲間……ですよね?」


「ええ。なかなかのサイズですし、濁りもほぼありません。もし本物ならば、かなりの価値でしょう」


「本物……ならば? じゃあイミテーションの可能性も、あるということですか?」


「はい。琥珀は樹脂と凝固剤で作られたレプリカも、多く出回っていますから」


「ガラス細工のおもちゃの宝石……みたいなものですか。あらっ?」


 楕円がちょっと歪んだような形の琥珀……。

 その底に、数センチくらいの黒くて細いものが……。


「……中になにか混ざってますね。不純物でしょうか?」


「いえ。不純物ではなく、純然たる琥珀の一部ですよ。これはどうやら、大昔の両生類……イモリかサンショウウオの幼体ですね。外鰓がいさいがあります」


「ええっ? 琥珀の中に閉じ込められてるんですかっ?」


「はい。琥珀にはしばしば、こうして小さな生物が封じられていることがあります。長い長い時を超え、当時の姿を僕たちへ見せてくれる古生物。琥珀という宝石が持つ魅力の一つです」


「はあああぁ……」


 わたし、トカゲとかそれ系の生き物苦手だけれど、そう言われてみるとこの琥珀、なんだかとっても神秘的……。

 ロディさんの紳士的で優し気な説明が、そう思わせるのかもだけど。


「……とは言え、イモリやサンショウウオは大昔から姿を変えていない種が多い生物ですから。現代の湖沼で捕まえたものを樹脂に包んだだけの贋作……の可能性も、十分にあります」


「なるほど~。偽物を作る輩は、年代を特定されにくい生物を封じ込めるわけですね……。勉強になります」


「僕の妻が両生類に詳しいので、帰ったら真贋を確認してもらいますよ。噤みの錠で保管されているくらいですから、本物だとは思いますが」


 うっ……!

 イケメンの口から出る「妻」というワード、鋭利!

 耳と胸が痛いっ!


「それではエルーゼさん、そろそろ失礼します。ありがとうございました」


「あっ、こちらこそありがとうございましたっ! えっと、領収証になります。階段、足元にお気をつけくださいっ」


「ご親切にどうも。では」


 ──ガチャッ……バタン。


 はあ~……ロディさん、すてきな人でした。

 あの人を射止めた奥さんも、相当ハイスペックなんでしょうねぇ。

 美男美女で消費し合う世の中、夢も希望もなさげ……ふぅ。

 さて……いまのお仕事を、シアラさんへ報告しなきゃ──。

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