表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/64

第15話 ワインは万斛の蝋涙の如し(9)

「この二枚目の扉も、まずはガリさんが試行錯誤すべきです。見てくださいあの、おとうさんの肖像画……。この扉の前で悪戦苦闘するガリさんの姿を、楽しんでるような笑顔ですっ!」


 ああ……よけいな口、挟んじゃったかも!

 でも、もう口開けちゃったから……最後まで言っちゃえ!

 師匠、途中で言葉被せないでくださいねっ!


「ガリさんっ! わたしもおかあさんの遺品の小箱、師匠の助けであっさりと開けられました……。でも、いまになって思うんです。合言葉を自分で、一生懸命考えてみたかったな……って」


「お嬢さんも、つぐみの錠の遺産を……?」


「一度解いた錠は……二度と元には戻りません。わたしはおかあさんの遺言で、師匠に解錠を頼みましたが……ガリさんは違います。一カ月でも……一週間でもいいんです。ガリさんのおとうさんが、『愛しの息子よ、次の扉はどうだ!』って考えた問題に、向きあってほしいんですっ!」


「んん……。確かにわたしは、一枚目の扉を開けるために、ワインの見識を広げました。父の目論見に、まんまとはまっているな……と、思いながら」


「ですよっ! 絶対……そうですよっ! この扉は、ガリさんにワインのことをいっぱい知ってほしくて、もっと好きになってほしくて、おとうさんが作ったものなんですよっ!」


「あの肖像画も……。わたしが扉の前で頭を抱え、右往左往する姿を思い浮かべながら、画家に描かせたのかもしれませんねぇ。いま思えば、実に憎たらしく、いい笑顔です」


「でしたらっ……!」


「……ええ。シアラさん、まことに申し訳ありませんが次の扉の依頼、キャンセルします。この扉に、父に……。いましばらく、向きあってみたいのです!」


 やったあ!

 あとは師匠が機嫌を損ねなかったら、万々歳なんです……けどぉ……。

 ちらっ……。


「……わかりました。錠にはまだ手をつけていませんので、こちらの解錠はなしということで」


「ありがとうございます。シアラさん、将来が楽しみなお弟子さんを、お持ちですねぇ……。ふっふっふっ……」


「さあ……どうでしょうか。フフッ……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ