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本日二度目の更新です〜

よろしくお願いします。

今思えば、ハヤトくんはれいちぇるに会う前から、これまでのガールハントにはなかった――変な言い方だけど――生きた感情が生まれ始めていたんだ。

むしろ、いつも以上に即物的な会話しかしていないにも関わらずね。


あらかたセックスする日を約束したら、大抵は会う日までテンションを維持するつなぎとして、セックス以外の会話をやっとして、何となく関係を維持していくものなんだけど、れいちぇるはずっとずっとハヤトくんのセックスの話に付き合ってくれた。


ハヤトくんは、わざとらしくとってつけたようなことを聞かずに済んだし、れいちぇるにどんな卑猥なことを言っても引かずに受け止めてくれるから、逆に彼女に好かれたいとすら思うようになったんだよ。

だから逆に、れいちぇるからのセックスのリクエストにもとことん応えたいって思った。


れいちぇるは、一体どんな男が好きなんだろう? 

彼女にも好きな服装はあるのかな? 


ハヤトくんは気遣い始めた。

何かしてあげたいと思ったし、どうせなら彼女の好きな見た目にして、彼女に喜んでもらいたいと思った。


すると、れいちぇるからはこんなメッセージが届いたんだ。



「メガネかけてるリーマン好きだね~」



それがハヤトくんが、今日慣れないスーツを着ている理由さ。

ハヤトくんはスマホやゲームが好きなくせにさ、なぜか視力は悪くなったことがなくってさ、メガネなんて持ってなかったんだよ。


彼が季節はずれのサングラスを掛けてるのは、そのせいってわけ。

季節も変なら、スーツとの組み合わせも、どう考えたって変だろう。


誰かハヤトくんに教えてやってよ。

それは、女性が言う「メガネリーマン」じゃないよって。



まあ、そんなわけで。


逆光で顔が見えなくても、服装と雰囲気で彼女をれいちぇるだと確信したハヤトくんは、軽く会釈だけすると、すぐに回れ右して声も掛けずに歩き出した。


ハヤトくんが回りだした途中で、れいちぇるは「あのう、アプリの人……」と言いかけた。

「アプリの人ですか?」と訊きたかったんだね。


れいちぇるは、ハヤトくんがサングラスを掛けていたから驚いたんだ。

それが、ハヤトくんなりの「メガネリーマンファッション」だとわかるのは、あとからのことでさ。


薄暗い駐車場に無言で仁王立ちしている謎のグラサン男。

それにハヤトくんの髪型が、あまりにハヤトくんのプロフィール画像と違ったもんだから、一瞬戸惑った。


けど、れいちぇるも待ち合わせには慣れてたよ。

だから、「プロフィール画像と本人ベツモノ現象」は、ままあることだと理解していたから、やはりこの男がハヤトくんで間違いないだろうと確信した。


アプリなんか誰が見てるかもわからないから、自分だとバレるのは避けたいけど、自分じゃない写真を使っても女性に選んで貰えないという間を取って、「イメチェン前の自分」の画像を設定する男の何と多いことか。


ハヤトくんも同じだよ。

あんまりチャラいと清楚系のお姉さんたちに選んで貰えないのと、ギャルも全然好きなんだけど、あんまりにもイケイケな女性やヤンキーが来ても怖いから、プロフィールの画像は新卒時の頃にスーツ姿で自撮りした、黒髪のマッシュヘア時代の写真をモノクロに加工して使っていた。


だかられいちぇるも、「この人?」って迷ったんだけど、ハヤトくんはそんなれいちぇるの反応を気にする余裕がなかったんだ。


ハヤトくんは、手のひらの中の世界から光とともに飛び出してきたれいちぇるを目の当たりにして、妙に照れてしまったんだね。

これまでだって、初めて女性に会う時は実はちょびっと緊張してたよ。


そう、むしろ人見知りだから、ハヤトくんはアプリを使うんだもん。


見知らぬ人と話すのが平気なら、街で直接声を掛けるものね。

画面の中ではガツガツした本音を出せても、実際には口にできない。ハヤトくんは、実はかなりシャイな男なんだな。


欲望の力加減ができないし、駆け引きを楽しむ余裕もないから、いきなり核心に迫れて失敗したら親指ひとつで終わりにできるアプリを好む。


それにしても今日は、いつもより特別に照れちゃったよ。

通話したときもそうだったけど、やっぱりれいちぇるはしっかりしていそうに見えたんだ。


でもこれから、ハヤトくんはれいちぇるとセックスするんだから、男らしさを見せつけなきゃいけない。

特に、自分はSだって言って、「私Mだよ!」ってれいちぇるが言ってくれたから、しっかりリードしなきゃいけない。


女性が歳上でも、関係ないよね。

男たるもの男らしく、女性をリードしなきゃいけない。

そうでなけりゃいやだし、「何だか頼りないわね」って思われでもしたらとても傷つく。


そう、普段はのんびり屋でシャイなハヤトくんも、セックスの段となれば、オスの優位性を見せつけなきゃ、気が済まないんだよ。


つづきます!

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