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つづきです!


広島は今日も寒いです。

みなさんの地域はいかがですか?

がんばっていきましょう^_^

れいちぇるは会社勤めだってハヤトくんは聞かされている。

社会人から半日くらい返事がないとか、別に普通のことじゃない。


でも、彼らのつながりは今んとこ、小さな画面の中だけのことだからね。


少しでも空白ができると、「The END」が頭をよぎっちゃってさ。

ハヤトくんは生きた心地がしなかったよ。

 

その繰り返しで、まだ顔も合わせちゃないのに、ハラハラドキドキするっていう何だかへんてこなやり取りを、10日間ばかり繰り返しただろうか。


最初っから会う前提でハヤトくんは会話を重ねていたけどさ、そこはれいちぇるがはぐらかし続けていたんだね。

まあ、きっと本当に忙しいのかもしれないし、あまりにしつこく迫って嫌われてしまってもね。

ハヤトくんもそこは慎重に話を進めていたわけ。


でもついに、二人は具体的な日取りをやり取りし出したんだ。

そして、待ち合わせが大学病院に決まったってわけ。

ロータリーもあるし、車の出入りもしやすいし、いいだろうって。れいちぇるも徒歩で行ける距離だって言うしさ。


それで木曜日の15時に、ハヤトくんが迎えにきたんだ。


もちろん、待ち合わせのやりとりでも2人の間には紆余曲折があったよ。


「セックスしたいね!」「こんなプレイしようね!」その示し合わせはついてたけど、実際会うとなると渋りだす女性は多いからね。


特に大胆なことばっかり積極的に言ってくる女に限って、いざリアルに会おうってなると、臆病になるもんさ。

最初から現実にする気がないから、でっかいことが言えるってことなんだろうけどね。


まあ、それは男だって同じかな。「GUCCI買ってやる」とか「愛宕あたごに連れっててやる」とかさ。

そんなセリフを吐く男に限って、はなから会う気はないんだよね。


じゃあ、なんのためにアプリをやるのか? 

きっと「いつもの自分と違う自分になりたいから」ってところじゃない、結局のところ。


そりゃあハヤトくんだって思いは同じなんだけど。

「いつもと違う自分へのなり方」が、人それぞれ違うってことだね。


あ、愛宕ってのはちなみに、国際通りのANAクラウンホテルの1階にある鉄板焼き屋のことね。

そうそう、中電向かいの白神社の隣のお店だよ。

あそこに生えてる樹が被曝樹木だなんて、ハヤトくんは知りもしないだろうなあ。

それだけ彼の感性はいつでも眠っているんだ。



ところで、アプリじゃあ、ほとんどの女の会話はマグロなんだよね。


そうそう、全然自分から話題を振らない。


ひたっっっすらに受け身なの。


あれ、何なんだろうね。ふだんめちゃくちゃお喋りなのは女性のほうなのに。


それと比べるとれいちぇるは自分から話題を振ってくるし、ハヤトくんのこと知りたがるし、ほめるし。

趣味のこととか、お仕事お疲れ様とか。


そんなメッセージが届くと、ハヤトくんは不覚にも、ほっと心がほぐれたもん。

それに、ほどほどにミステリアスだし、おまけにちょうどいい具合の淫乱だし。


車とか、年収とか尋ねられないのもハヤトくんは嬉しかったよね。


彼は別に特別貧しくもないし、自分なりに満足いく暮らしをしていたけどさ、何だか女性に値踏みされるって、男にとっては嫌なことなんだよ。

何を答えてどう反応されても、屈辱的な感じがするというか。


それを気にする女性は別にどこにでも結構な確率でいるんだけど、アプリの場でお金の話をされたり、世に言うところのスペックを尋ねられるのは特に苛ついた。


自分だって、女性に同じことをしているくせにね。


いや、お金のことは訊かなくてもさ。「ただでヤラセて!」っていう発言は、女性からしたら、彼が感じているのと同種のもやもやを引き起こすせりふじゃない? 

別に売春がしたいわけじゃなかったとしてもさ。

何だか利用されてるような気分になるはずだよね。


そう考えると、れいちぇるはハヤトくんの欲望も否定しないし、かつ彼をきちんと一人の人格として興味を持ってくれる。

だから、ハヤトくんがれいちぇるに惹かれてしまうのも無理はなかったんじゃないかな。


そう――ハヤトくんは歳上のお姉さんを「口説いてる」つもりだったけど、実は「オトされてかけてた」のは、ハヤトくんのほうだったんだね。 


え? 

うすうすわかってたって? 

そうだよね。蟻地獄の底で待ってるつもりが、その地下にさらに巨大な蟻地獄がある――そんな調子でさ。


れいちぇるが仕掛けた摺鉢みたいな落とし穴に、ハヤトくんは螺旋を描く道筋を進まされながら、じわりじわりと誘い込まれていったんだよ。


狩るつもりが、狩られようとしているのは自分のほうだったってわけ。


つづきます!

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