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(2)

今回は、ハヤトくんの来歴です^_^

全24話の作品です。


また明日更新します〜

アプリで知り合う女性――やりとりが続く女性は――は、みんな率直でまっすぐだった。


女性がこんなにも、セックスに対してストレートに要求や要望を言ってくることに、ハヤトくんは驚いた。


だから、ハヤトくんも自分のやりたいことや好きなことは素直に相手に話すことにしていたのさ。


学校でもアルバイト先でも、ハヤトくんの周りにそんな女性はひとりだっていないのに、ひとたび手のひらを覗けば、淫乱な女性がたくさんいる。


だから彼には、アプリの中ってのは、なんだか不思議な異世界に思えたんだね。


それなのさ、待ち合わせすると実際に人間が来るんだよ。

その女性には、脚だってあるし顔もある。体温もあるし、感情もある。きっと、免許証や戸籍だってあるだろうね。


でも大抵、一度セックスすると、翌日から連絡がつかなくなってしまうんだ。

まるで最初から、そんな人間は実在しなかったみたいに。


ハヤトくんが、白昼夢か幻かでも見ていたとでもいうみたいにさ。


あの時確かに生身の女を抱いたのに、あとには何も残っていなくて、幽霊と過ごしたんじゃないかっていうような不思議な感覚。


そしてまた画面を覗けば、そこには誰か特定できないように加工された新しい女たちの顔がずらりと並んでいるんだ。


そんな神秘的なところも含めて、ハヤトくんはアプリでのセックスが好きだった。


ずっとこの方法で女性と関わっているから、これしかやり方を知らないというのもあるけど、自分だって幽霊になった気分になれるからさ。


欲望を満たしたあとは、煙みたいに空気にふうっと霧散して消えてしまう夢。


だからこそ、とことん大胆に、正直になれる。


相手も俺を忘れるし、俺も相手を追いかけずにすむ。


だから、お互い傷つかない。


罪悪感もない。


失敗したって別にへっちゃらだ。


だって、俺たちは画面の中の存在なんだから。


全部、なかったことにできる。


それにどれだけハヤトくんの心が救われるか。

「お互いにその場限り」って前提が、彼にとってはとっても重要なことみたいなんだな。


そんなわけで、ハヤトくんは今はもう28歳になったわけだけど、未だに歳上の女性をアプリで探し続けていた。


歯磨きとか、お風呂にはいるとか、それと同じくらいガールハントは彼の日常にもう何年も――10年近くだろうか――溶け込んでいるんだ。


転勤で大分から広島にやってきてからも、この習慣は続いている。


継続は力なりなんて言うけど、彼の場合は依存というほうが合ってるんじゃないかな。


無料なうえに心の摩擦も伴わないインスタントなセックスってさ、タダでばら撒かれている阿片のようなものだから。


これは、恋愛じゃない。

だから、人生経験にならない。


しかし、セックスと、セックスに持ち込むまでのプロセスの経験値は貯まっていく。


若い気分が抜けないハヤトくんは、ムードを楽しむなんてことも知らないから、最短距離で王手を取ることばっかり考えていてさ。

「目的」しか見えなくなるんだね。


だから、異性と心を通わす経験はほとんどなくて、彼の小さな脳みその中に積み上がっているのは、ガールハンティングのノウハウと知恵ばかり。


これこそまさに、「阿片」だよね。


だって心が伴わない、快楽だけを追求するセックスなんてさ、カロリーだけは高いけど、栄養が全然ないジャンクフードみたいなもんだから。


10代からそういう世界に入り浸っていたら、そうやってどんどん「セックスはできるけど恋愛はできない男」になっちゃうんだよ。


もちろん、こっそり隠れてやってることさ。


誰かが知れば、それはおかしい! だとか説教するだろうけど、ハヤトくん以外誰も知らない。そう、まるでパラレルワールドみたいに。


ハヤトくんは、いつだって何かもやつく心の不調を抱えながらも、社会人としての均衡を保ちながら暮らせている。


だから、まさか自分がアプリ中毒者だなんて自ら気付いたりするわけないよ。


せいぜい、こう考えるくらいじゃない?



「結婚前に遊んどかんと!」



もしくは、「男がすけべなのは当たり前やけん!」


うわあ、すっごい彼が言いそうなセリフ! そうとも、目に浮かぶよ。

つづく!

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