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お嬢様がヒャッハーし過ぎて負けるお話し。5

「リーンさん、相手の動きどう思いますの」


 クリスティーナ率いる騎馬隊は術式による高速機動により敵を側面から捉えていた。


 作戦によれば、グレド隊が白組本陣を襲撃し陣形崩しを行っている予定だった。

 しかし、こちらの作戦とは関係なく白組は2騎を本陣から切り離し、クリスティーナ隊へと突撃を掛けたのだ。


「時間稼ぎもしくは、こちらを潰す算段があるのかもしれない。どちらにしても好都合だな。シンディー隊を囮にして超加速で相手を抜き去ればいい」


「潰す算段の方かもね~♪だってあの中にジルちゃんいるし♪」


「加速する場合はタイミングの指示お願いします!リーン先輩!」


 クリスティーナ率いる騎馬隊の中でも高機動を誇るシンディー隊が速度を上げ、クリスティーナ隊の前へと踊り出る。


「囮は任せて、クリスティーナ。ジルちゃんに恨まれるのは怖いけど、まあ”栗走《もんぶRUN》”の限定モンブランで手を打ってあげる」


 シンディーが茶目っ気たっぷりな口調でクリスティーナに言葉を放つ。


「しょうがないですわねぇ、それなら後退しながら戦ってくれますの。そうすればリントさんの負担も増えるはずですわ」


「ご馳走さま~!」


 そう言うと、シンディー隊はさらに速度を上げて白組の2騎へと突っ込んで行った。


 シンディー隊と白組の2騎が激突する。

 その瞬間にリーンの合図で術式による超加速を入れ、白組の騎馬隊を高速で抜き去る。


 敵騎隊を抜き去る瞬間、白組の騎主の一人である小柄な女生徒から、クリスティーナ隊に粘液がぶちまけられる。


「お姉さまああぁあ!!!!私の愛を受け取ってくださいましいいいぃぃ!!!」


「お前は大人しくモンブランの犠牲となれ!」


 シンディーの叫びと共に小柄な女生徒の「お姉さまああぁあ!!!!」という悲鳴が聞こえてくる。


「クリス!!大丈夫か!!!」


「ええ、自動防衛システムがありますから、あの程度の量なら大丈夫ですわ」


「ええっ!私掛かっちゃいましたよ、半身にベッタリと!私死んじゃうんです?!」


「大丈夫よ~♪後輩ちゃんはジルちゃんに愛されてないから~♪」


「どどど、どういう事なんです!?」


 不意打ち的に寂しさをぶち込まれた気分になる私。

 その気配を悟ったのか、リーン先輩がフォローを兼ねた説明をしてくれる。


「ジルの魔法は、愛するものを溶かすという特性を持っている。だから、愛するクリスに関する物、そしてクリス本人さえも溶かしてしまうんだ。」


「えええええええええぇぇぇぇぇええ!!!!!!」


 クリスティーナの足を見るとその周囲に展開されている銀の膜が煙を上げて溶かされているのが分かる。


「すごく危険じゃないですか!?死んじゃうじゃないですか!?」


「そうね、凄く危ないわ。でも、ジルさんの愛に応えてあげられるのは私しかいませんもの。この位、どうってことありませんわ」


まさかの相思相愛!?!?


「う~ん。フィーナちゃん、ジルちゃんとクリスちゃんの関係性を説明するの、ちょっと難しいかも~♪」


「そうだな…、まあ気が向いたときに外伝か何か出るんじゃないか?」


外伝!?!?


 何かメタ的な発言が聞こえたが、脳ミソが破裂しそうだったので考えることをやめた。


 そんな雑談が刹那に行われている間に、クリスティーナ隊は白組本陣を射程圏内に捉えていた。


「大将の後ろががら空きですのよ!戦闘準備ですわ!!」


 クリスティーナの号令に従い、騎馬の速度を戦闘用にまで落としつつ、4人全体の四肢に術式を展開させて制動処理及び騎馬の安定性を確保する。


 クリスティーナが詠唱を行い、目を一瞬だけ伏せると胸に飾られた鉱石に右手を添えた。


「銀翼の魂よ…、我が城壁を脅かす者に祝福を」


銀の天球アルジョント・セレスフィア


 クリスティーナの目の前にコイン程の大きさの球体が現れる。


 そして一瞬にして、フィーナの魔法によってそれが100個近い規模に膨れ上がった。


穿うがちなさい…。天なる点(オーシェンティ)


 クリスティーナの凛とした静かに響く声を放つと同時に、約100個の銀の球体がその形を鋭い針状に姿を変えて、白組大将リントへ襲い掛かった。


 白組の大将リントはこちらの攻撃に気づくが、あまりの圧力に反射的に体を仰け反ってしまう。


「うわあああ!!!」


 あっさりと大将同士の一騎打ちの決着が着いたと思った瞬間、地面から踊るように木の根が現れ、防壁のように大将騎を包み込んだ。


 銀の針は、太くしなやかな木の根にはばかれ、大将リントに届く事は無かった。


「おいおい、いきなり容赦ねえなぁお嬢様。俺はもっと慎み深い淑女の方が好みだぜ?」


 モジャモジャ頭のガタイの良い男子生徒がクリスティーナ隊に語りかける。


「慎み深いのはその貧相な胸だけってか?だははははは!!」


「な、なんですってぇぇーーー!!」


 クリスティーナが前のめりになって相手に掴みかかろうとするのを、慌てて騎馬ごと後退させて回避する。


「何してますの!!早くあの如何わしい頭に銀の鉄槌を食らわさなくてはなりませんわ!」


 クリスティーナが足でガシガシと手を踏みつけてくる。


「落ち着けクリス!まだ暴走する時じゃない!まずは兄を倒さないとさすがにドラールを相手にするのは面倒だ!」


 リーナがクリスティーナを宥めるが、クリスティーナの怒りは収まらない。


「だはははは!やっぱり、大将を先に潰す作戦で来たか。でも残念だったな、大将はお前をおびき寄せる為の罠でしかないんだよ、なああぁぁ!!!」


 ドラールの叫びと連動して、大将リントが太い根と共に地面に引きずり込まれて行った。


 いきなりの想定外の出来事に、クリスティーナ一行は一瞬言葉を失う。


「これで、大将に手出しは出来ねぇ。さあて、俺とタイマン勝負と行こうか、お嬢様」


「…こ、これってルール的にいいんですか!?!?」


「ドラール、兄にもしもの事があったらタダじゃ済まないからな」


「フィーナ…本気モード」


 赤組の本陣陽動部隊は、健闘空しくグレド含む2騎が討ち取られており、白組本陣の残りと一騎打ち状態になっている。


 囮役のシンディー隊もいつまで持つかはわからない。

 クリスティーナ隊にグズグズしている暇はなかった。


「小賢しい真似をしてくれますわね。いいですわ。その腐りきった脳ミソ、モジャモジャと一緒に刈り取ってあげますわ!」


 白組と赤組の勝利を掛けた、最後のぶつかり合いがここに始まった。


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