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「まあ、そうなるかな。魔道の秘奥に触りたければ、自分で探し出して学ぶか、そこに辿(たど)り着いている方から直接教えを受けるしかない。幸い、バーニーも乗り気だったし、二人してアポなし突撃で教えを受けに行ったんだよ」

「よくもまあそんな無謀なことをしましたね。あの時期のアルバート老師って、(まつりごと)に振り回されて、自分の研究も出来ていない時代だったのでは?」

 男の返事を聞き、少年は確信に至る。

 この男は間違いなく“王国最強”の弟子として認知され、その後継者として見込まれているのだ。

 そして、本人の自己申告が正しければ、ブレイブサーガ0時代の何らかのハッピーエンドルートで最後の最後に“大魔法使い”の称号を授かった。

 少年が覚えている限り、設定資料集で発表された0のエンディングで“大魔法使い”の称号を授かるものもあった。その条件の一つが魔導師となって魔道院関係の功績を挙げることだったと記憶している。

 要するに“王国最強”たるアルバートの弟子となって後継者と目されることでその条件をクリアしたのではないか、そう考えたのである。

「バーニーが片付けても問題ない書類を片付ける代わりに、そこで生まれた時間を使って教えを受けたのさ。お陰様で、バーニーは在学中から宮廷魔導師見習いとして魔道院の重要文書を片付けることになったけれど、何年か早まっただけだからね」

「いやあ、流石にそれはどうなんですかね……」

 少年は言葉を濁す。

 男の言っていること自体は正しいのだ。

 アルバートの死後、ベルナルドは魔導師の頂点に立つこととなり、宮廷で重きをなしていく。アルバート時代よりも魔道院の発言権は増し、彼が属する七大名家の当主代行として国政にも参与することとなる。

 だが、それもこれも少なくとも原作第一作目以降の話である。学生時代から、魔道院の仕事をしていたわけではない。

 魔道院のトップが決済するいかなる書類であろうとも、七大名家の本家に近い傍流(ぼうりゅう)の出身とはいえ、一介の学生が係わって良いものではないのだ。

「介入しないとアル爺さんが死ぬのは間違いないからねえ」

「それはそうなんですが……」

 男の言うことは間違いなく真理であった。

 ベルナルドが早めに魔道院の政に介入しない限り、アルバートの処理能力を超した仕事量により、アルバートの魔導師としての性能や後継者作りへの時間が失われ、若手の不満が溜まり、回り回ってベルナルドとアルバートの対立が回避不能な状況へと導かれる。誰かが、魔道院に積まれいていく仕事の山を消化しない限り、未来は確定しているのである。

 問題は、魔道院で処理できなくなった仕事というものの大半が機密事項の塊であり、生半可な者ではそれに触れることすら許されていないのである。

 魔道院の運営に携わる高位の魔導師以外だと、国政に携わる七大名家出身の魔導師でもない限り、取っかかりにすら触れることを許されていないのだ。

 解決できる存在は、アルバートと対立していない時点のベルナルドか、もしくは原作知識を持った七大名家生まれの転生者でもない限り状況把握すら許されない、然う言う話なのだ。

 だから、男の言っていることの理は通っているのである。

「一応確認のために聞いておきますと、貴女の家は七大名家にも建国の功臣などと云った特別な功績を立てた家門ではないのですよね?」

 恐る恐る少年は更に面倒な事になりそうな要因があるかないかを確認してみた。

 世の中意外な処から意外な問題が出来(しゅったい)するものである。

 これ以上ややこしい状況は御免であった。

「残念ながらね。だからこそ、バーニーに魔道院をアル爺さん存命中の状況下で牛耳って貰わないと二進(にっち)三進(さっち)も行かなくなるのさ」

「そこの介入は是非もなし、と」

 少年も男の言い分を認めざるを得なかった。

 自分でやれなかった以上、それを為せる任せるに足る他人に委ねるしかない。

 そうとなれば、七大名家が出身母体で、なおかつ原作でも当主代行として辣腕(らつわん)を振るっていたベルナルドは打って付けなのだ。

 これがその後に起こることを十分に計算し()くした結果の方策だったのならば、少年も素直に納得したであろう。

 ただ、どうにも言葉の端々から、この男がその場のノリと勢いで動いている様にしか少年には思えなかったのだ。

「勘違いしないで欲しいのだがね、ボクはこれでもバッドエンドは大っ嫌いだよ? 何もかも上手く行くように立ち回っているつもりだ」

「そこは疑っていません。結果的に先のことを考えていないようですけれど」

 少年ははっきりと答える。

 男に悪意がないことぐらい、少年は認めていた。

 問題は、計画的に物事を実行していないために先々原作通りの出来事が起こるかが怪しくなっている点である。

 原作知識が役に立たない状況に陥った場合、少年が立てていた未来設計図は全て水泡に帰す。

 それだけはなるべく少年からすると避けたい事態であった。

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