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「まあ、アイツが状況証拠から似た様な術式を考え出して、クリスさんが作り上げたわけだが……やべえな、アレは。表に出せるモノではないし、あの家は術式から得られた結果に対する長年の蓄積(ちくせき)から相手の心の動きを想定しているわけだ。昨日今日作り上げたような術式だけで対抗できる相手じゃねえよ」

 首を左右に大きく振りながら、パウルは溜息を付く。「付け加えれば、第二座に伝わる神器、アレは完璧にこっちの心を読み取るモノだ。継承者に相伝されていてもおかしくない以上、できる手は全て打つべきだと思うんだぜ?」

「……まあ、一門秘伝の術式を再現した魔道士を取り込まないという理由もありませんからねえ」

 初めて聞く情報にフリッツは唖然(あぜん)としながらも、何とか返事をする。

 七大名家にはそれぞれ伝来の何かしらの技術がある。

 大体が(いにしえ)の魔王退治の際に見つけ出した各々の神器由来のものなのだが、秘伝として外に伝えないのは勿論(もちろん)、情報すら出さない家もある。

 当然、情報を出せば対策を練られてしまうことを怖れてなのだが、表立って使わざるを得ない家もあり、中でも第二座ケブレスは心を読み取る“(さと)り”の術法がよく知られていた。

「何はともあれ、シェリーは全力でアイツを()として(もら)わんと色々と困るのだよなあ。ぶっちゃけ、俺の片腕になって貰わないと色んな意味で困る。新型魔道具の構想はアイツの発想から始まっているのが他家に()れるのは本気で(ふせ)ぎたい。むしろ、俺と一緒に魔道具開発担当にまわって欲しい。それだけでも王国は百年の技術的優位を周辺諸国に取れるんだ」

 魔道具技師としての見解をパウルは大真面目な顔付きで言ってのける。

 現在、新型魔道具の本当の発案者が誰なのかを知っているのは、七大名家の当主と魔道院の上層部の一部だけである。

 画期的(かっきてき)としか言い様のない機構は量産の目処さえ付けば魔軍を含めた周辺諸国との戦力格差を優位にする大発明と位置付けられていた。

 そのため、王国魔道院魔道具開発部門は現行型の制作と同時に新型魔道具の量産研究も並列して行っていた。

 パウルはその部門に大魔法使いの弟子をすぐにでも入れるべきだと強弁したのだが、それは魔道院の頂点に立つ三人によって妨げられていた。

 余所(よそ)の目に付かぬうちに取り込めなくなった以上、次善の策である妹による政略婚を強引にでも進める他なくなったというのが現状なのである。

「まあ、その点では最大の強敵がベルナルド様なのが笑えませんねえ」

「ベル兄はとっととシェリーとアイツをくっつける動きをしてくれよお、もう」

 魔道具開発部門への即時配属を反対したベルナルドではあったが、少年をカノーに取り込むことは最優先課題であると認めていた。

 しかしながら、それを最も簡単に行える術を結果的に防いでいるのがベルナルドの存在であり、この議題が出る度に壁にぶつかるのも大体がベルナルドの所為であった。

「ま、なる様にしかなりませんよ、殿」

 頭を抱えて(うな)り込む主君に、フリッツは肩を(すく)めて(なぐさ)めるのだった。


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