表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/50

「あのさあ、アイツがいくつの時から()()(から)み方していたわけ、フリッツ?」

 流石(さすが)のパウルも呆れ顔で突っ込みを入れた。

 少年との年の差を考えると、パウルでさえそれは身近な年上の同性からのウザ絡みなのではないかと思い当たるのだ。

「まあ、流石に猥談のお兄さんたちと思われたくはなかったので、学院に入るまでは遠慮していましたよ? クリス様からも(かみなり)落とされたくはありませんでしたから」

「それより前にベル兄から地獄を見させられているよ」

 その後、ふと思い付いたのか、「あと、カチュアちゃんからも()められるな」と、(つぶや)いた。

「あー、過保護ですねえ、彼の周りは」

 フリッツは頬笑(ほほえ)ましい光景を思い浮かべ、静かに笑う。

「まあ、農家の小倅(こせがれ)が貴族に対して変な印象を持つのを嫌っているとも云えるんだが」

「その筆頭である殿はあまり強いこと云えませんな」

 今更ながらの言い(ぐさ)にフリッツは吹き出しそうになる衝動を抑えつつ、真面目(まじめ)ぶって言い放った。

 腹心の内心を完全に読みきりながらも、

「この俺であっても流石に(おそ)れや身の程を(わきま)えているわけだが?」

 と、大真面目な顔付きでパウルは返す。

「何に対しての?」

「そりゃあ決まっている。ベル兄や王国最強様の領域には()み込めていないってことだよ」

 七大名家の当主をして、(はる)か高みにいる二人を引き合いに出す。

「比べている相手が相手なんですがねえ」

 少年が一番見ている高位貴族二人を基準にするのは当然であり、それが王国の高位貴族の中でも途轍(とてつ)もない(はず)れ値である場合、やはり外れ値でありながらもまだマシな自分の主君が謙譲(けんじょう)の意を示すのは仕方のないことであった。なるべくならば、その様な位置での争いすら無い方が理想なのだが。

「これでも七大名家の一角の当主ぞ? 王国の頂点を(にな)う存在ぞ?」

 幼きときからの(くさ)れ縁の臣下の考えなどお見通しである。声に出さずとも、顔に出ていた。

「だったら全権をいい加減ベルナルド様から引き()ぎなさいませ」

 フリッツにとっての悲願、自らの主君がカノーの頂点(ちょうてん)に立つこと、最早(もはや)、何度目か分からぬ進言をする。

「えー、俺様が今魔導器開発の第一線から退()いたら百年は進捗(しんちょく)が遅れるしー」

 そして、返ってきた答えはフリッツの想像通りであった。

 言わんとすることも分かるから、

「クソッ、事実だから云い返しようがねえ! 何てクソ君主だ!」

 と、悪態(あくたい)を吐くに止めた。

 それが並列して行えることならば説得のしようもあるが、最悪の乱世が(おとず)れると分かっている今、王国全体の戦力の底上げは必須(ひっす)である。

 それが、カノーがやれることならば止めることは許されない。

 許されないが、物心ついた頃からの夢を否定されたからには愚痴(ぐち)の一つでも言いたくもなった。

「多少は遠慮(えんりょ)してくれても良いのよ、フリッツ君。君たちは本当に主君に対する敬意はあれど遠慮は無いのよねえ」

 他の学友たちも同じ反応を絶対にするので、パウルとしては食傷(しょくしょう)気味(ぎみ)であった。

 だからと言って、自分に対して距離を置くような物言いをしてきたらそれはそれでいじけるのだが。

「殿、物心ついてからずっと従っているのですよ? 身内だけの場で今更遠慮できると思います? 先行きが無いと知って自棄(やけ)っぱちになっていた頃も付き従っていたんですからね」

「お前らには頭が上がらないよ。よくもまあ、こんな頼りない主君に付いてきてくれたものだ」

 なかったことにしたい(おさな)き日々の記憶の数々を人質にされては流石のパウルも折れるしかない。

 事実、もし、自分が彼らの立場であったならば、見捨てられていても仕方ないと思えるぐらいの失態であった。

 逆を言えば、よくもまあ付いてきてくれるものだと呆れるを通り越して感心するしかなかったし、感謝以外の感情が思い当たらなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ