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 的確(てきかく)な情報を集めきり、想定外の要素(ようそ)も計算して、真の学院生の席をぎりぎりの最下位で手に入れるなど、本人の想定とは(はず)れているにしても、それを計算通りやってのけられる逸材(いつざい)がこの世に存在するものであろうか?

 彼の主君はそれを()(こと)とすら思いもしていないが、その計画に協力していたとは言え、フリッツからすれば異常な出来事であった。

 それを誰もがクリスの弟子ならばその程度はやるだろうという認識(にんしき)で一致していることが奇異であったのだ。

 あたかも、それが常識のように語られていることがどうにも──。

「深く考えすぎるな、フリッツ。それはそういうものだと割切(わりき)っておけ」

 心の内を読んだかのように、パウルは臣下が思考の迷宮に入り込む寸前で止める。「それはそうとして……外には()れないようにしてはいたが、当家の箝口令(かんこうれい)は機能していような?」

御意(ぎょい)に。私としてもあの者の情報が外に漏れることは危険と考えております故、事情を知る者だけで動いております」

 即座に思考を切り替えると、フリッツは少年の合格以来何度も()り返されてきた問いかけの最新の情報による返答をした。

「魔道院の人間だから手を出す者が居ないと(たか)(くく)ってしまったが、この様だ。ウチの身内だと知ってもちょっかいを掛けてくる奴らが出てくるのは目に見えている。あー、もう、うちの妹(シェリー)をさっさとファックしてくれれば解決なのになあ。家に来て妹をファックして良いぞと云っているのに」

「その言葉を真に受ける者が居たら、流石に首()ねますわ」

 フリッツは呆れたかのように首を左右に振ってから、溜息を付いた。

 一門から軽んじられていた頃から宗家(そうけ)(あと)()兄妹(きょうだい)忠誠(ちゅうせい)(ちか)ってきた少数派であった(ころ)から付き合いである。主君の軽口が本音かどうかぐらいの真贋(しんがん)はつくし、主家を軽んじる者がいれば即座に切る覚悟(かくご)は完了している。

 (たと)え自分でもそうなってくれると良いと思っていたとしても、七大名家に(つか)える者として宗家を軽んじる(やから)は面子にかけて即座に処断(しょだん)せざるを()ない。

 それを分かっていながらも本気でやれと言っている主君の気持ちも分かる分、考えなしに動くなよとしか言い様がなかったが、流石に表立っての諫言(かんげん)(はばか)られた。

「真に受けてくれないんだよなあ、全く。こっちは本気(ほんき)なのに」

「いやあ、まず、ベルナルド様の婚約(こんやく)予定者ってところでハードル高いでしょう? その上、七大名家直系の姫ですよ? 世間一般で云う普通の感性の持ち主ならありませんわ」

 どこまでも本気である主君に対して、フリッツは軽口に擬態(ぎたい)させた物事の常識的な見方を忠言(ちゅうげん)した。

「アイツ、世間一般で云う普通の感性など持ち合わせていないぞ?」

 ややもすれば、自分でもそう思ってしまうことを主君に言われたため、

「持ち合わせていなくても、それが意味するところはちゃんと理解できる知性は持っているんですから、()(とう)な判断を下しますよ」

 と、心にも思ってもいないというほどではないが、自分でも信じて良いのか半信(はんしん)半疑(はんぎ)月旦(げったん)(ひょう)進言(しんげん)した。

「よもや、シェリーが(この)みではないから手を出す気がないとかは……」

 身内の目から見ても美人である妹に対して、何ら行動に出ないのは興味を持っていないからではと言う根本的な問題点にパウルは(いた)ってしまう。

「いや、殿(との)以上に普通に異性への興味ありますからね、彼。姫やシルビー嬢ちゃんの胸や尻に目線(めせん)結構(けっこう)行ってますから。いや、尻というより太ももか?」

 媚薬(びやく)を用いるとか変な行動に出かねない結論に至らせる前に、フリッツは主君の思考を方向転換させるべく、自分の観察(かんさつ)(がん)で得た情報を言ってみた。

「そんなところまで見ているのか」

 ややドン引きした表情でパウルは股肱(ここう)の臣を(なが)める。

「まあ、何かあったら困るんで護衛としての(さが)ですかね。際疾(きわど)猥談(わいだん)には乗ってきませんが、普通の恋バナには食い付いてきますよ」

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