表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガバチャー奮闘記  作者: 高橋太郎
幼馴染み
37/50

14

「爺様にしろ、バーニーにしろ、納得いくまで突き詰めるからねえ。時間の無駄までは云わないけど、本当かどうかを検証する時間に回した方がボクとしては効率が良いと思うからね。時間制限(タイムリミット)がある訳だし」

 それまでのどこかちゃらけた雰囲気から一転して、真面目な声色でクリスは言う。

「まあ、カノー(うち)の方が()め切りが近いのは否定できないな」

 ベルナルドは真剣な表情で一つ(うなず)く。

 カノー宗家の継承(けいしょう)がかかっている以上、長く見積もってもパウルの学園卒業までが期限であろう。もう、数年先に迫っている絶対的な時限である。

「そうそう。だからね、先に話を持ってきたのさ」

 軽い調子でクリスは言うとにやりと笑った。

 誰が最も説得しやすいかを分かり切っているぞ、表情がそれを如実に現していた。

「……お前は偶に恐ろしく計算高くなるな。だからこその【大魔法使い】なんだろうが」

 大きく溜息を付きながら、ベルナルドは降参とばかりに両手を挙げた。

「お褒めに(あずか)恐縮(きょうしゅく)だよ、バーニー。とりあえず、明日はよろしく頼むよ」

 慇懃(いんぎん)な態度でクリスは華麗にベルナルドに向けて一礼して見せた。

「やれやれ。爺さんの追及(ついきゅう)(おさえ)えながら納得(なっとく)させるなどと云う無茶振りはいつ以来だ、おい」

 カラカラと笑いながらも、クリスがなぜか急いでいることに多少心中でベルナルドは疑問を覚えた。

 自分のために急いでいるだろう事は分かっているのだが、それでも何か引っかかりを覚えた。

 クリス自身が急ぐ理由があるとすれば間違いなく自分であるという確信はベルナルドにはある。あるのだが、そうだとしても、昨日の今日で明日クソ爺を説得しに行くというのは流石に普段のクリスからしてみても急すぎる。

 ならば、急ぐ理由があるとするのならば、

(この少年のためか?)

 と、(かたわ)らで静かに(たたず)む少年を見る。

 居場所がないとばかりに挙動不審(きょどうふしん)になるのならば()(かく)、ベルナルドの注意がクリスに向いた途端(とたん)にそこにいない者と(あつか)えとばかりに自己主張を消し去る。片田舎の生まれの農家の小倅がする処世術(しょせいじゅつ)とは思えぬ身の処し方に疑念を抱く。

 本当にただの農家の小倅なのか、と。

 そうは言っても、この場でそれを追究するわけにはいかない。

 後ろに控える弟妹の好奇に満ちた視線が少年に集中している以上、それをすれば後々面倒な事になるのは確定である。

 クリスにネチネチ言われ続けるのは業腹(ごうはら)であるし、場の雰囲気が読めない男と認識されるのもお断りである。

(もう(しばら)く見届けた後でも問題ないか)

 そう腹を決め、ベルナルドは皆の意識を己に向けるため大きく一つ手を叩いた。

「では、今日のところは解散しよう。クリス、明日魔道院で良いんだな?」

「それでよろしく。パウル君とシェリーちゃんとはまた別の機会を作るから、今日のところはバーニーの指示に従ってね」

 興味津々(しんしん)と弟子を見詰(みつ)める二人に、クリスは(なご)やかに()げる。

 その様な場において、少年は全てにおいて無関心のように見えた。



 疲れ切っていて早く家に帰りたいと思っていた少年を深読みしまくる周囲の人間が後々面倒な事案をひっさげてくるようになったのはこの時の所為(せい)だと気が付くのはまだ先の話である。

 なんであの時と失敗を()やむことの多い少年が、この件に関してはどう足掻(あが)いてもどうにもならないと諦めの境地(きょうち)に至ったのも、旅疲れと(おさな)(ゆえ)の体力の無さはどう足掻いたってどうにもならないと分かっていたからである。

 ただ、第一印象を考えずにこの後周りの人間を勘違いさせる行動をし続けたことに関しては、浅はかだったと後悔するのだが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ