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「最後に、魔力溜まりに魔力を戻して体内を回していた魔力を全て纏めます。蓄えられる容量の魔力以外はそのうち抜けて行ってしまいますが、魔力溜まりに今以上の魔力を蓄えるという癖を付けるための流れです。これが最終段階となります」
「成程、確かに理に適ってはいるな。外より取り込んだ魔力だからこそ、発散しなかったモノは自分に適応している。それに、このやり方ならば体外に発散して失われるよりも、自分の体内に取り込まれて活性化状態で残るものが多くなろう。ただ、量が多すぎると魔力酔いを起こして調子を崩してしまうだろうな」
「最初から調子が悪くなるほど取り込めるならば、魔力容量が大きいだけなのではないか、と」
始めた当初の微々たる量を思い出しながら、少年は自分なりの答えを言った。
「……まあ、魔力が視えずに取り込もうとする者ならば、確かにほんの少しでも取り込んで体内で回せれば良い方だろうな。参考までに聞くが、少年、君が最終段階まで至ったのはどれほど時間をかけたのだね?」
事前申告によりこの訓練を始める前と今の少年の魔力容量の差を知っていたため、実感のこもったその言葉の真偽を確かめたくなる好奇心を押さえ込み、興味深く話を聞いている二人に求める結果がどの程度で出るのかを知るための質問を口にした。
「さて? 僕の村はここほど魔力が豊富では無かったので、魔力溜まりに繋がっていると思われる大樹の下で汲み上げている感触を実感するまでに数年、そこからは徐々にではありますが一年ぐらいで到達したかと。後は日課としてひたすら続けてきただけです」
少年は首を傾げ、「ですから、逆に不思議なのです」と、続けた。
「ほぅ、何がだね?」
それまで強い意志の力で自分の疑問を口に出さなかった少年が尋ね返してきたことにベルナルドは強く興味を引いた。
「これだけ魔力が溢れている場所で生活しているのに、なんで魔力容量が必要量に満たないことがあるのでしょうか?」
王都に到達して以来、少年は疑問に思っていた。
魔力が満ち溢れた土地で生活するだけで、本来ならば魔力容量は増えていくはずなのだ。
実際、彼が知る原作でも魔力を全く用いずに休憩した場合、ほんの微量ながら魔力容量が増えるという挙動を示していた。
原作がこの世界を模したものならば、少なくとも王都の魔力が強い地域に住む者ならば、年々微量ながらも魔力容量が増えていいないと変なのだ。
「……まあ、少年からすると不思議かも知れないな。知ってのとおり、この世に生けとし生ける者全てが魔力を帯びているわけだ。その魔力を意図して利用できる者ともなると一気に数が減るわけだが、呼吸をするように無意識に魔力を使っている者も居る。魔力を使えば魔力が体内から失われるわけで、無意識に使っている量が増えれば増えるほど体内の魔力は常に擬似的な枯渇状態となる。まあ、完全に枯渇すると生命活動に悪影響を及ぼすので、ある程度のところで生存本能とでも云うべきものがその動きを阻害する。ここまでは良いかな?」
「魔力を何に使っているのですか?」
少年は首を傾げた。
自分が意図せずに魔力を使うという意味が分からなかったのだ。
「良い質問だ、少年。大抵が身体強化だな。中には発火現象やら体に稲妻を帯びるような特異体質を持つ者も居るが、例外中の例外だ。さて、無意識に魔力を消費している者が魔力切れで昏倒しないのは何故だと思う?」
「無意識の内に魔力を体外から体内へと取り込んでいるからでしょうか?」
「その通り。当然の帰結だ。そして、魔力容量が大きい者ほど体内の魔力が大きく、無意識の内に身体強化やらを行っても体調不良は起こさない。その上、王都ほどの魔力が満ち溢れた場に常時居るのならば、魔力の枯渇を気にせずに常時魔力を消費できる。無意識の内に、な」
少年はベルナルドの返事を聞き、
「無意識の内に魔力を消費し、無意識の内に体内に補充される。呼吸をするが如く自然な流れだから魔力を視るという意識すら育たないから、逆に魔力を体内で養えない? 魔力過多の土地柄故の悪影響なのかな」
と、小声で口に出しながら自分の考えを纏めていく。
原作が先か、この世界の理の方が先かと言った鶏卵考察をするためには材料が足りなさすぎるので割愛するとしても、少なくとも原作で自分がやってきた方法が正しいのならばなんで魔力容量の上限が王都に住んでいれば何もしなくても伸びているはずなのに変わりがなかったかの説明は付く。魔力容量ではなく、他の基礎能力の方に補整が付くようになっていたのだ。
そう考えれば、生まれ持った才能もあるのだろうが、良質な魔力溜まりを占有している七大名家の関係者の基礎能力がそうではない登場人物と大分差があったことに説明は付く。




