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ガバチャー奮闘記  作者: 高橋太郎
幼馴染み
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「これで身内だけなんですか?」

 少年は小声でクリスに尋ねた。

「まあ、(くさ)っても、七大名家宗家主催の夜会だからねえ。最低限と云っても方伯(ほうはく)級が開く盛大な夜会と同じ程度にはなるね」

 想像以上の集まりを見て驚いている少年に大したことは無いよと言った感じにクリスは笑みを浮かべる。

「方伯というと、地方軍司令相当の家ですか?」

 少年は前世知識から当て嵌まった家格を言ってみる。

「国境付近だと辺境伯とも云うね。侯爵家相当の権限を持った伯爵家だよ。七大名家は分かり易く云えばどれもこれも王家と同じだけの権威がある。まあ、その王家だって、七大名家の首座(しゅざ)であるウェゲナー家だが、どの家にも王となる大義名分は(そな)わっている。ただ、慣例的にウェゲナー家が王を務めた方が国を回しやすいということから暗黙(あんもく)の了解で王家となっているだけさ。それに、“勇者”を排出しやすい家柄だからね。自然と祭り上げられることにもなる。他の家もそれぞれに強みを持っている。そして、知ってのとおり我らが魔道院に最も強い影響力を持つのがカノー家だ。その当主は直系でなおかつ魔道士であることを求められる」

 ちらりと主催(しゅさい)を見て、「あそこで前面に出ているのがバーニーだ。後ろに(ひか)えているのが直系の公子と公女。現状、直系の二人は魔道士資格を持ちえていないから、直系に最も近しく、魔道士としての才覚が最も優れているバーニーがカノーを仕切ることになっている。あまりよろしくない話だがね」と、クリスは呟いた。

「よろしくない?」

 今までの話の中のどこによろしくない要素があったのか、少年はとんと見当が付かなかった。

「ああ。シェリーちゃんと結婚して陣代(じんだい)となっているなら兎も角、現状はただの乳兄弟(ちきょうだい)だからね。側近の専横と取られかねない危険な状態さ。正統性が微妙(びみょう)にない」

「政治的に不味(まず)い、と?」

 関わり合いたくないなと言った表情を浮かべながら、少年は自分の師が何を問題にしているかを理解する。

「シェリーちゃんと正式に婚約していれば兎も角、婚約予定がある、で済ませているわけだからね。そのまま結婚せずに、御家乗っ取りを考えていると(うたが)われても仕方ないんだよ、ワイズメル家は」

 当人にその気はないのだけどね、と聞こえるか聞こえないかの声音(こわね)でクリスは続けて言った。

「だったら前面に出なければよろしいのでは?」

 少年は(もっと)もな疑問をぶつける。

「それはそれで、乳兄弟を捨てたと悪評(あくひょう)が立つ。面倒な話だよ」

クリスは肩を(すく)め、「最初から詰んでいるのさ。どうしようもなくね」と苦笑した。

「……ははあ、急いで僕と引き合わせようとしているのは、壇上(だんじょう)の方々とですか?」

 ここまで聞けば、少年もクリスが何を(あせ)っていたのかが見えてきた。

 カノー家の御家(おいえ)騒動(そうどう)軟着陸(なんちゃくりく)させるためにも、パウルを魔道士にしたいのだ。

 問題は、何のために御家騒動を(おさ)めたいのかの意図が見えてこないところだが、悪意はないようなので少年はとりあえずその点を無視することにした。

「そうだよ。パウル君は致命(ちめい)的に魔力容量が足りないからね。他の才覚は十二分に魔道士たり得るのだから、もしかすれば……」

 少年からするといささか前のめりな感じでクリスはぎりぎり少年にだけ聞き取れるぐらいの声で(つぶや)く。

 少年からすると短い期間とはいえ常日頃からクリスから与えられる印象は悠然(ゆうぜん)とした態度であった。

 それが、何とも言えない今は(あや)うさを感じた。

 足元を(すく)われるような焦りなのかどうかを判断するためにも、

「師匠はパウル様とは親しい間柄(あいだがら)なのですか?」

 と、(たず)ねる。

「まあ、バーニーの乳兄弟だからね。ボクは学園生時代に魔道士資格を得た事もあり、一縷(いちる)の望みを()けてか、かなり早い時期に引き合わされているよ。無駄足だったとまでは云わないが、残念ながら焼け石に水だったけどね」

 肩を軽く竦ませ、自嘲(じちょう)気味に笑う。

「僕のやっていた方法を知っていたんですよね?」

 少年は首を傾げた。

 少なくとも、前世で原作をプレーしていたと言うことは原作での能力上げの方法を知っているということである。

 少年自体、魔力容量が増えたのも原作設定集に()っていたやり方を(ため)したに過ぎない。

 原作が自由度が無駄に高いゲームであったからこそ、仲間キャラクターですら能力をある程度好き勝手に上げられたことを考えれば、この世界においても自分以外にも能力上げのやり方は効果があるのではないかと類推していたのだ。

 残念ながら、少年の周りにはそれを実感できるほど優秀な相手が居なかったために、少しずつ能力の底上げは可能であるという程度の結果しか分からなかったのだが。

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