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「成程?」

 確かに、少年が物心ついて以来、王国中央から送り込まれてくる魔力容量を調べる役人達は若手ばかりであった。知識がない少年からすればお役人様であったが、実際は魔道士であったという事だろう。

「そしてね、極まった魔道士の中には相手の動きを魔力の流れから見切れる者もいるのさ。そう、ボクのようにね!」

 声高らかに男はどや顔で歌い上げるかのように宣言する。

 それを聞き、少年は自分の動きが最初から読まれていたことに気が付いた。見えている世界が違うのだ。

「ああ、安心したまえ。こんなことできるのはボクを含めて我が国に片手の指で数える程度さ。まあ、ボクレベルになると、そこら中の魔力の動き全てを把握できるからね。意図的に絞っているくらいさ」

 少年の顔色から内心を読んだのか、男は慰めるかのような響きで種を明かす。

「安心出来る要素が今の言葉の中にあったのですか?」

 少年は胡乱(うろん)者を見る目付きで男を眺めながら首を傾げた。

「あったとも。少なくとも、君と同じ様な能力を持っている人類種はこの王国内にボクを含めて数人しかいないと云うことさ。ま、転生者となると、ボクも君が初めての相手だが」

「……? 誰が初めてなんです?」

 少年は思わず首を傾げる。

 男の反応から、他の転生者と面識がある者と考えていたのだから、意外な反応だったのだ。

 そんな少年の内心を知ってか知らずか、

「君さ。ボクにとって、初めて見る転生者であり、練達者(マスタークラス)でもないのに魔力の流れが()えている初めての人間さあ」

 と、続けざまに男は爆弾を落としていく。

「見えていませんけど?」

 少年は何を言っているんだという顔付きで男を見返した。

 その様なものが見えていれば、こんなに苦労してまで当てずっぽうで当たりを付けた魔力溜まりっぽい場所で瞑想などしていないのだ。

「視えているさ。そうでなければ、魔力溜まりを効率的に見つけられない」

「ぶっちゃけますと、設定集に載っていた情報を頼りに瞑想していただけなんですけど?」

 何か無駄に勘違いされている気がして、少年は男に対し、転生者ならではの方法をとったと素直に言った。

「ああ、そうじゃない。魔力溜まりの場所に当たりを付けることは知識があれば、こちらの人類でもやれることさ。要は、魔力溜まりを視て知覚し、そこから魔力を引き上げる行為を視えていると云っているのさ」

「何となくあるんじゃないかなあ、程度の認識なんですが?」

 不思議そうな顔付きで少年は首を傾げる。

 前世の記憶を取り戻して以来、魔力溜まりがありそうな場所から魔力を汲み上げる行為は感覚的になんとなくできそうだな、としか考えていなかったので、男の言い分が()に落ちなかったのだ。

「それだけで引っ張り出せるほど魔力溜まりにある魔力は分かり易い存在ではないのだよ」

 くつくつと笑いながら、「どこにあるかのおおよその位置を知識で当たりを付ける、それは少し知識があればやってやれないことはない。次にその上で瞑想する。これも経験則で癒しを求めて行う野人はいるやも知れない。ただ、そこから魔力を自分の身体に汲み上げる、これはいかん。いかんよぉ、君。身体や世界を循環する魔力が視えていない限り、やれない芸当なのさ」と、男はさらりと言ってのけた。

「それこそ前世知識でやれるのでは?」

 ここに至って、要らぬ隠し事は面倒事の始まりと踏んだ少年は一気に踏み込んだ。

「例え知識があっても、才能が無ければ始まらない。この世界はそういう残酷な世界なんだよ。誰もが平等などと云う甘い幻想は一切ない。端的に云ってしまえば、力こそ全て、だね」

 男は少年が危惧していた魔力を自在に扱えなければ無価値と見なされる世界であることをはっきりと言い切った。

「そのような才能を僕が持っている、と?」

「少なくとも、ボクが見る限り、魔道士級の資質を既に有している。まあ、こんな田舎にいては華開かぬ才能だけれどね」

 両手を天に大きく翳し、「この、ボクの元でなら、華麗に華開くのだがね!」と大仰な仕草で自らを抱きしめるかのように腕を回した。

「“院長”の元でも開くのでは?」

 少年は一つ鎌をかけてみることにした。

「……んー、ん~? 君が院長と云っているのはアル爺さんのことかな? それとも、バーニーのことかな?」

「それでホッとしましたよ。少なくとも、貴女は院長ではない」

 男の返事を聞き、少年は心底安堵した。少なくともこの人物は、原作が崩壊するほど状況を変えていないと確信できたのだ。

「……なんでそう思ったんだい?」

 男は初めて少年に対し警戒感を抱いた。

 男と少年を比べれば、こちらでの生活も長く、築き上げた力も間違いなく男の方が上である。間違いなく、こちらの世界での優位な状況を作り上げている自分に対し、底を見切った態度を取ったのである。前世知識と経験を使いこなし、無かったはずの余裕を生み出して何らかの取引を持ち掛ける態勢を瞬時に生み出した。男は明らかに自分より交渉ごとに長けている気配を少年から感じ取ったのだ。

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