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ガバチャー奮闘記  作者: 高橋太郎
姉弟子
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11

「とは云っても、魔族領域内とはね……。侵入方法は、鉄門か古の坑道のいずれになるのかな。どちらも最終迷宮(ラストダンジョン)手前の最難関、向こう側に抜けるのは至難の(わざ)といったところか」

「まあ、帝国側から入り込むわけにもいきませんから、鉄門は現実的な選択ではありませんけどね」

 魔族領域は東と北に長大な大山脈により他の地域から切り離されている天然の要害(ようがい)である。行き来するには空を飛んで山脈を越すか、帝国側と接している鉄門と呼ばれる要塞(ようさい)化された切り通しを抜けるか、王国側と接している古の坑道と呼ばれる東の山脈地下に張り(めぐ)らされた洞窟(どうくつ)(もう)を抜けていくしか(すべ)がない。

 いずれにしても、人類の領域から魔族の領域への進入路であり、防衛路である。

 人類と魔族が領域を接して以来、争いの中心点とも言えた。

「どちらにしろ、手軽に行ける場所ではないね」

「まあ、本当にその迷宮があるのなら、ですけどね」

「人類未到(みとう)の地だから、本当にあるかの裏付けできていないからね。それもあって、調べに行くしかないか」

「結局時間がかかると思いますが」

「課金アイテム捜しだけに全てを賭けるのもどうかと思うからね。並列で処理できるものなら、全ての可能性を捨てるのは勿体(もったい)ないさ」

 強い決意を秘めた(ひとみ)でクリスは少年を見た。それは絶対に決めたことを成し()げてみせるという強者特有の覇気にも似た堅い意志で(かたど)られていた。

 少年は止めても無駄かと考え、

「まあ、有るか無いかの噂話を拾うだけなら、意外と帝国編の方のおまけ迷宮に関わる話が飛び込んでくるかも知れませんし、意外と無駄ではないかも知れませんね」

 と、情報を集めるだけならと言う賛意を表明する。

 どう考えても、対魔族、対帝国で主戦力となり得るだろう人物が掛かり切りになって良い問題ではない。前世を同じく持つものとして同情はするが、それを以て国の命運を揺るがすような選択を後押しできなかった。

「そうだと良いんだけどねえ」

 大きく溜息を付きながら、クリスは自分の膝の上でくーくー寝ている少女の髪を撫でる。

「それで、ちっとも起きる様子がないその方はどこのどなたなのでしょうか?」

 初対面からして幼女らしい悪意をぶつけてきた相手の情報を全く知らない少年は今更ながら聞いてみた。

「んー、人造聖女さん」

「ああ、あの人造聖女ですか。……時報じゃん!」

 あっけらかんと爆弾発言を投げ込んできたクリスに思わず少年は素で突っ込む。

 クリスは苦笑しながら、

「まあ、そう呼ぶ人たちもいるね」

 と、言葉を(にご)す。

 人造聖女。

 聖女とは勇者の(つい)になる存在であり、魔王を(ほろ)ぼす定めを持った勇者の隣に立つ者である。その役割は数多(あまた)(わた)るが、勇者の隣には常に聖女が()った。

 故にこう考える者が出てもおかしくはない。“聖女が在るからこそ勇者が存在する”と。

 そこで、聖女を人の手で創り出すことで、勇者を人為(じんい)的に顕現(けんげん)させられるのではないかと研究を進めた教会内の過激派が進めていた計画が人造聖女計画である。

 彼らにとっての計算外の事象(じしょう)は、既に勇者の印を持って生まれていた者がいたことと、彼らよりもそれを重んじた陣営、魔王軍の存在であった。

 魔王を倒せるのは勇者だけ、この不変の法則を嫌った魔王軍が勇者を(みちび)く存在でもある聖女の存在を許容(きょよう)できるはずもない。

 原作において、物語が急変する事件『聖女暗殺事変』は、人造聖女の犠牲をもって始まりの終わりを告げる。

 それまでの青春学園モノから、魔王討伐物語へと変貌するのだ。

 何枚かの静止画でその存在がプレイヤーに知らしめられる彼女は、物語の急変直下を知らせる“時報”として広く知られ渡ることとなった。

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