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「確かに、おまけ迷宮は気が狂っているとしか云い様がない難易度でしたからね」
少年は思わず苦笑する。「雑魚的からしてダイヤモンドドレイクも斯くやって云うのは動画見ていてドン引きしましたし」
「あれ、絶対にライトユーザーのこと何も考えていない難易度だよねえ。何周すれば真面に遣り合えるのか分からないよ。少なくとも、全キャラクリアぐらいの周回数では無理だった」
クリスは遠い目をして首を横に振った。
「やり込み実況者はどれだけ修羅の道を進んでいたんですかねえ」
実際にプレーしていたプレイヤーの感想を聞き、改めて少年はおまけダンジョンの難易度に呆れ果てた。
何せ、やり込み系実況動画主ですらどこから出ているか分からない雄叫びや絶叫が鳴き止まぬ阿鼻叫喚のエンタメ動画として動画視聴勢から評価されていたのである。攻略サイトの情報すらエアプかメーカーから貰った情報をそのまま載っけただけではないかという疑惑を誰も解明できなかったとされる領域だ。雑魚戦に勝っただけで高評価となるトンデモ魔境、それが界隈での認識だった。
「君の云い草から嫌な予感が止まらないのだが、あの狂気の迷宮にあるのかい?」
「設定上、あの迷宮のどこかにある若返りの泉のランダム効果の一つに性転換がある筈です。まあ、条件次第で確実にその効果を狙えるらしいんですけど、実証した人が動画勢ではいないんですよねえ。設定集にはちゃんと書いてあるから、設定上は間違いない筈なんですが」
「記憶が確かなら、第三作までは第一作と同じ迷宮だったような覚えがあるのだがね?」
「正に正に。第三作まではあの迷宮がどれもこれもクリア後特典となっております。まあ、第三作目は更に他の迷宮も実装されたんですが、そっちには性転換要素はない、徹頭徹尾強敵と戦って理想の装備を手に入れようというハック&スラッシュ型の迷宮ですから、今はどうでも良いですね」
「それで、ボクが死んだ後に出た作品にも同じ様な要素があったんだよね?」
「そうですね。帝国三部作にも共通したおまけ迷宮と性転換要素がありましたが……正直、王国三部作に出て来たおまけ迷宮に行くのと同じぐらい無理がありますね」
「ああ、魔族の領域である、山脈の向こう側にある設定だったっけ、あの迷宮。帝国側も同じ様な場所なのかい?」
懐かしむかの響きを乗せ、クリスは感慨深げに尋ねる。
「絶海の孤島です。それも、帝国側の港から魔族領域に向かわなくてはならないので、王国の人間だと無理かなあ、って」
原作通りの関係ならば、そろそろ帝国と王国の決定的な破局が始まっている頃合いである。そのような場所に、王国の最重要人物であるクリスが冒険しに来ました、とアホ面で赴くことは不可能であろう。
しかも、“大魔法使い”の称号を持っている以上、クリスの動きは外交的な意味合いを持ってしまう。お忍びであろうとも、敵地にそのような人物が入り込めば、工作員として見なされ、船を目的地まで用立てることは不可能になるのも間違いない。
「……それは確かにキツイか。行けるとしても、かかる日数がなあ」
面倒な諸々のことを合法的にできたとしても、どう考えても魔国との戦争が数年後に待ち構えている現状、私用で長い期間職務を放棄して遊び呆けている暇はない。その程度の判断はクリスにでも容易にできた。
「はい。まだ、魔族領域内を偵察するという名目で王国三部作のおまけダンジョンを目指した方がマシです」




