9
「まあ、そうなりますか」
少年はクリスの説明に納得した。
存在しないのではなく、希少である。それならば、原作でも実装されてもおかしくないと少年は直感した。まだ確証には至っていないが、転生は不可逆ではなく可逆なのではないか、ここ数日、この大魔法使いを自称する人物と付き合うようになって思い至った。何者かが、こちらの世界からあちらに転生して、原作を作ったのではないのか、と。
それを立証するためにも、少年はこちらの情報を多く集めたいと考えていた。自分が再び転生するにしても、記憶を保持したままとは行かないかも知れないし、そうでないかも知れない。どちらにしろ、できることならば自分の手でそれを確認したいと設定マニアとしては血が騒いでいたのだ。
「そこで他の方法を求めているわけさ」
「前世の性別に戻りたい、と?」
当人は明言をしていないが、クリスの言動や態度から少年は前世では女性であったのではないかと推察していた。まあ、男性でもヅカキャラ好きはいないわけではないが、女性から見た男の理想とする女性像と実情の乖離に違和感や気持ち悪さを覚えるのと同じく、男性からしても女性の考える理想の男像というものは据わりが悪いというか何とも言えない感覚のずれみたいなものを感じるのだ。少年から見たクリスは正にそのような存在であった。
「どうにもね、この体と魂とでも云うのかな。違和感が酷くてね。どう考えても前世の記憶や感覚に引っ張られすぎているから、いっそのこと性別が変わればしっくりきそうなんだよね」
少年に一目で見破られていると察していたクリスは、素直に現状を説明した。
「僕は前世も男でしたからねえ。ちょっと、その感覚は分かりませんが、性転換を求める理由は分かりました。要するに本編クリア後のおまけ絡みの情報が欲しいということですね?」
「ああ。残念ながら、ボクは前世でそこまでやり込まなくて、性転換する方法が課金以外にもあるとは知っているのだが、それが何なのかまでは知らないのだよ」
「うーん。一応知識としては知っているのですが、僕は何度も云うようですがゲームプレー動画を見る専だったものでして、設定資料集を読み込もうともデータとして認識しているだけです。ゲームプレイしての難易度の実感やら、原作と現実との乖離などは保証しかねますが、それでもよろしいでしょうか?」
予防線というわけではないが、少年はしつこいぐらいクリスに確認を取る
出会って間もないのもあり、クリスがどの程度この世界のことをゲーム感覚を通して見ているか否かを量りかねていたのもある。流石に、同郷出身者を完全にそうなのかどうなのか確定していない情報で死に追いやるのは気が咎めたのだ。
「いいとも。ボクはいかなるものであろうとも情報を欲しているのだからね」
いわゆるガンギマリした目付きでクリスは少年を見据えた。
少年はその目を見て、一つ大きな溜息を付いた後、
「課金アイテム以外の主人公性転換の方法は周回プレーをするに当たって、一つのセーブデータで全てのシナリオを読みたいというやり込みユーザーの希望を叶えるために存在しているものです。故に、その方法はやり込み要素に他ならない。大本になったエロゲー版は男主人公しかいませんから当然存在はしていませんが、コンシューマー版に移植された全年齢版には女主人公も実装されたから、いわゆるナンバリングで呼ばれるタイトルには存在していました。ここは御存知でしょう?」
と、確認を取った。
「それは当然知っているさ。一応全ルートクリアはしたからね。まあ、やり込み要素をやる気力は無かったから、男主人公と女主人公を作ってそれぞれで強くてニューゲームをやっていたけど」




