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ガバチャー奮闘記  作者: 高橋太郎
姉弟子
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「大人の云い付けを守らずに、村の外に遊びに行った子はたいてい(ろく)な目に遭っていませんね」

 クリスの言葉に少年は深く同意した。

 大人でさえ村の敷地の外に出れば命の危険に出会すのだ。子供ならば更に、である。

 それでも、年に何人かはその好奇心に負けて外を見ようとして大怪我をする。それでも運が良いのだ。死なずにすんでいるのだから。

 本当に運が悪い子は何事もなく助けを求められない距離まで無事に辿(たど)り着いてしまう。

「野良仕事をしながら子供を見張るのには限度があるだろうからね。城壁に囲まれた街の中ならば、街から出さなければ良いだけだが、柵程度でしか囲われていない村ともなるとねえ」

「魔物避けの結界はあっても、外敵から身を守る城壁を築く予算なんてありませんからねえ。いや、城壁を作ったとしても、農村だとそれを維持する方が難しいか」

 少年は自分で言いながら問題点にあっさりと気が付く。

 この世界の農村は魔物が入り込めない結界を張り巡らせなければ成り立たない。戦闘訓練を受けた者ですら並の使い手にでもならない限り魔物を倒すのは難しい。

 戦って勝ち目が少ない以上、最初から戦わない方法を採用すべきである。

 そのために、魔物が好き好んで人が住まう領域に入り込まない結界技術が発展したのである。

 ただし、それが通用するのは魔物だけであり、相手が人であったり魔族であったりする場合には通用しない。それを防ぐには防壁が必要であり、撃退するための武器が必要である。

 従って、城壁に守られていない農村での軍事訓練は自分たちと同じ人型の生き物を殺すための技術である。決して、勝てるかどうか分からない魔物に対応するための技術ではない。

 だからこそ、対人型生物用の建造物は重要となるわけだが、一般的な農村の収入で都市並の城壁を築き上げ、それを維持することはほぼ不可能であり、獣避けの防柵に毛が生えた程度のものを準備し維持し続ければ上出来と言えた。

「堀ぐらいは用意している集落は多いけれど、土塁(どるい)以上のものとなると農村程度の集落規模ではなくなるのは確かだね。その規模ともなれば、領主直轄であったり、騎士団の分隊が常時駐屯(ちゅうとん)しているような重要拠点だ。自ずから自衛力が違うね」

「成程。うちみたいな開拓(かいたく)村がそのまま育っているような農村とは根本(こんぽん)から違うということですね」

軍屯(ぐんとん)中の開拓村だとまた話は変わってくるよ。そこから民屯(みんとん)に変わったばかりでも、退役軍人に下げ渡されるから村の性格がかなり違うな。数世代重ねた本物の農村になった様な集落だと危機感が相当違うからね」

屯田制(とんでんせい)による開拓ですか」

「魔軍との戦争がない時期はそうやって人類生活圏を増やしていくからね。まあ、帝国と戦争になるとそうとも云えないから、軍に余裕があるときと云い直すべきかな」

 前世の中世以前と同じで、王国は開発の及んでいない土地が多くある。そのような土地で開発しやすそうな場所を先ずは退役寸前の軍人で開拓させ、国の手が必要ではなくなったと判断したときに退役する者の中で独立した農家になるために土地を求める者に開拓した村を任せていく制度を取っていた。いわゆる、軍屯と民屯である。

 平時ならば軍の余力や予算が多くあり、軍屯に労力を回し兵糧(ひょうろう)の生産量を増やす方向に流れるが、魔軍や帝国の動きが不穏(ふおん)なときはそちらに労力を回すために屯田が疎かになる。

 民屯と言っても予備役軍人とでも言うべき層であり、開拓が中央から見たら辺境に多い──要するに国境に近い──ことから準戦力として期待している側面もある。

 そのため、民屯に移ったばかりの開拓村は平和()けとはほど遠い雰囲気を持つ。

 逆に長い年月の末に安定した収穫を期待できるようになる頃にはただの農村となってしまっていた。

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