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ガバチャー奮闘記  作者: 高橋太郎
姉弟子
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 クリスに拉致されるかのように内弟子にされて数日、少年は旅の空の下、馬車にゆられていた。

「ドナドナの心境ですねえ」

 前世の音楽の時間に習った曲を思い起こしながら少年は(つぶや)く。

「別に今生の別れでもないし、正当な徴用(ちょうよう)なのだから君の気分の問題だね、これは」

 (ほが)らかな声でクリスは言う。

「一介の平民の子には王都からこの村までの旅費が出せそうにないのですが?」

「ハハハハハ、君が一人前になったら、毎年ここら辺の魔力調査の担当に推してあげるよ」

「それはどうもありがとうございます。いつになるか分かりませんけどね」

 少年は正直な感想を告げる。

「今は王都に戻るだけの旅だ。とりあえず、必要な情報の交換と行こうじゃないか」

 幸か不幸か、クリスの魔力量調査の旅は少年の故郷が最後の目的地であった。

 従って、少年を内弟子にする手続きの終了とともに、家族との別れを惜しむ間もなく、そのまま王都への帰還の道に巻き込まれたのである。

「もう少し余裕があると思ったのですがねえ」

「申し訳ないがそれは無理な注文だよ、少年。ボクはまだ君に信用も信頼も置けていないんだ。逃げられては困るからね。さっさと確保するに限るのさ」

「そこに関しては納得するしかないのですが、肉体年齢10才にも見たいない子供相手にそこまでしますか?」

「肉体年齢と精神年齢が一致しない相手に対して用心することに超したことはないからね。ちなみに情報ソースはボク自身だ」

「うわあ、否定できないこと云われると辛いですねえ」

 少年は思わず溜息を付いた。

 実際問題、前世の四十代半ばまでの記憶を有している時点でただの十歳になったかならないかの少年にはない実行力を有している可能性は多大である。事実、魔力量を増やすというこの世界には存在しない知識を実行しているのだから、失踪(しっそう)した上で(ひそ)かに生き残るだけの動きをしてもおかしくないと判断させるには十分であった。

「流石に自殺願望はありませんから、大人しく待っていましたけどね。後で迎えに来るという話になったなら、ですけど」

「自殺願望ねえ。云い得て妙だね、それは」

 クリスは苦笑し、肩を(すく)めて見せた。

 乱世が近づいてきているとは言え、王国内だけで判断すれば、一応はまだ小康状態と言える。

 どこにもここにもそれなりの問題はあるが、この世界における平常だ。

 だからと言って、一人旅をすれば盗賊や山賊に襲われるだろうし、どこからか流れてきた魔物に殺されることもある。

 ある程度の人数というものは武器であり、抑止力となり得る。

 いくら前世知識があるとは言え、まだ体もできていない年端もいかない少年が一人旅をして生き残れるわけがないし、()しんば生き残ったとしても暮らしていけるだけの生活の糧を得る方法がある訳がない。大人の庇護(ひご)がなければ、子供は食い物にされるだけの社会なのだ。

()う云えば、この世界にも少年十字軍のような出来事はあったのですか?」

「神が実在する世界だよ。神の名を(かた)った行動に出るのは命取りさ。逆に、神託を受けて動き始める者はいるが、詐称する詐欺師でもない限り、神の名において人を害することなど起きえない。まあ、魔族の神々が自分たちの眷属が痛めつけられたことに憤慨(ふんがい)して人類種の神を詐称することはあるかもしれないけどね、そんな時は人類種の神々が即座に動き出しているさ。だから、仮に子供を騙して売り払うような事態は、大人が何かしらの理由で(もっ)(おこな)った結果さ。大人の庇護の無い状態の中、子供自身の好奇心だけで動けばどうなるかは、君の方が理解しているのではないのかな?」

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