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学園敷地内にある寮での初めての朝を迎え、僕は新たなる生活の始まりを実感していました。
訳ありで本来二人部屋が義務付けられているところを曰くありげな部屋を改装した特別な一人部屋で過ごす。特別待遇ってやつです。
まあ、全くもって嬉しくないんですが。
故あって、師匠が外回りの仕事を請け負っていまして、王都を留守にしております。
あんなのでも魔道院の重鎮の一角、それもトップレベルの魔道士なれば、世の中に広まったら問題のある特殊な魔法の品々を国より預かっていたり、封印していたり、コレクションとして所有していたりするわけです。
流石にその全てを持って冒険の旅に出られるわけがない。
当然、自分の限度まで持っている他の魔道士にも預けるわけがいかない以上、一番頼りになる身内に預けざるを得ないのです。
要するに、僕と姉弟子ですが。
しかしながら、師匠の留守中は僕も学園の寮住まいとなり、師匠の役宅にいるのは姉弟子のみ。
形の上では未だ一人前ではない姉弟子しかいない留守宅にそれらの品々全てを置いておくのもセキュリティーの問題上宜しくない。
そこで、魔道院のお偉方の相談の結果、役宅に置く分と僕が責任を持って管理する二つに分け、なおかつ僕の寮の部屋に至るまでに特殊な結界を敷き、侵入者避けを造る。それでも入り込もうとする者は、扉や部屋に有資格者以外が呪われる罠を張り、その上で特別な保管庫を設置して管理しています。
何でそんな部屋に三年間も住まなければならないんだ、僕は?
何の罰ゲームだ?
先祖の供養を欠かしたか、前世の功徳が足りなかったのか?
一応ね、アルバート老師とベルナルド師にね、学園寮にそんな恐ろしい部屋を造ってどうするのかとは抗議したのですよ。
二人揃ってね、
「アレに持たせて旅させるわけにも行かぬし、だからと云って全てをカチュアに任せるほどなあ……」
ですって。
だったらお二人で預かってくださいよ、って話ですよ。
まだ見習いでしかない若者にさせる仕事じゃないんだよなあ。
「最早お前にしかできぬ」
「期待している」
二人して機嫌良く僕の肩を叩き、ベルナルド師に至っては僕の部屋の改装を陣頭指揮で自ら動いていましたからね。もうね、誰もが何事かと思って見学していたらしいですよ。
途中から見えなくなったらしいですけど。
凄いね、王国でも三指に入る魔道士の結界。
ついでとばかりに、結界を抜けたり、部屋に入り込んだり、保管庫に手を掛けた者が現れたら僕に伝わる術式まで仕込んでいるんですから、格の違いをまざまざと見せ付けて居る訳ですよ。
そりゃ、逆らえませんよ。
唯々諾々と従って務めを果たすしかありませんよ。
まあ、強いて言うなれば、これから毎日静かな朝を迎えられるというのは悪くはないメリットです。
どこかの過保護な姉弟子が毎日毎日起こしに来てくれていましたからねえ。
ある意味でプライベートな時間が一切ない、そんな生活でしたから、寮生活は新鮮そのものです。
「弟くーん」
そうそう、毎朝こんな感じに騒がしくやって来ていましたねえ。
この後凄い音で扉が開くんだわ。
──バタンッ!!
そうそう、こんな感じで……。
「弟君、弟君、元気してた? 朝だよ、お姉ちゃんだよ?」
「おはようござ……いや、姉弟子上。なんでいるんです?」
思わず真顔で見慣れた顔を見ます。
いつもの習慣で普通に返事を返そうとしてしまいましたよ。
脊髄反射って凄いですね。




