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「おお、ここが学園かァ」

 思わず想像以上に立派な建物を見上げながら、僕は独り言ちました。

 いやはや、知識として知ってはいましたが、実際本物を見ると感動するものは世の中多いこと、多いこと。すり切れた精神で社畜していた頃の僕にはなかった余裕がこれほどまでに嬉しいものとは思いもしませんでした。

 師匠もちゃんとそこら辺を伝えてくれればいいのに。

(……ああ、師匠は若い身空で死んだからな。万年社畜中年親父の僕とは違ったか)

 どうにも、肉体の方の精神年齢に引っ張られて冷静に考えたら分かることもすぽんと抜け落ちたりするのが今の僕の悪いところでしょうか。

 今生で初めての学園生活を前に浮き足立っていることには違いありません。

(まあ、師匠に拾って貰えたことは有り難いんですが、計画が全部パーになったからなあ)

 手持ちの情報で考え得る最良のチャートを全部台無しにされたわけですから、僕としては師匠のお膳立てがそれよりも良いものであることを願うしかありません。

 少なくとも、師匠と僕の原作知識のすり合わせの結果、平穏無事に暮らすには学園の卒業は必要不可避、だからと言って平民が正攻法で学園に入ると目立ちすぎる。

 従って、多少力業でもなにがしかの推薦を受けることで学園の入学枠を手に入れて、原作のメインストリームに乗らないように立ち回る事が肝要という結論に落ち着きました。

 そう、原作。

 師匠と僕にとって、この世界は前世で遊んでいたゲームの世界。あ、いや、これには語弊がありますね。僕は直接遊んでいません。実況動画をゲラゲラ笑いながら見て、興味を持ったから設定資料集やら攻略本、リアルイベントに出かける程度のはまりかたをしただけです。

 師匠の方は第一作からがっつりはまって全てのルートをクリアする程度にはプレーしていたらしいです。ただ、やり込みプレーや深掘りはしなかったエンジョイ勢だと言い張っていましたね。

 なので、ゲームと同じ様な世界に転生して、そのことをなぜ覚えているのかという根本的な問題はとりあえず置いておくとして、今自分たちがいる現実を理解した上で、異端として排除されたり、戦乱に巻き込まれて死んだりしないように人生設計をしっかりと煮詰めないといけません。現実ではガバチャート失敗による再走なんてできませんからねえ。流石に二度も苦しい死に方はしたくありません。

 まあ、師匠も原作設定全然知らないくせに、原作が始まる前の時代を適当に生きてきてますからね。考えすぎなくても問題ないと言えばないんですが、絶対、原作の時代で想定外のことが起きてガバるのが目に見えているんですよ。情報すり合わせた時点で、幾つか原作の流れにならないやらかしを既に行った後なんですよねえ。一応微調整はして貰いましたが、どこまで原作知識が頼りになるやら。

 最大の問題点は、原作のメインストリーム、勇者対魔王というお約束の構図で、魔王を倒さないと世界平和が来ない図式なんですよ。流石に致命的なやらかしはありませんでしたが、あのまま放置していたら難易度が上がりすぎて、勇者様が敗死しかねない流れが放置されておりましてね、気が付かなかったらやばかった。

 多分、あの師匠のことだから、そういう覚えていない無意識なやらかしも含めて色々あるでしょうから、安全係数高めの学園生活チャートを構築して対策していますが……ガバチャートになるんだろうなあ、と諦めております。

 何せ、原作の主人公が誰なのか、今でも分かっていませんからね!

 これでガバらずに完走できたら神懸かった才能を持っていると自負してしまいますね。

 まあ、思い返してみると、僕が作ったチャート、毎回師匠に完膚なきまでぶっ壊されているんですよねえ。

 本当になんなの、あの人?

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