表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/33

しばらくは、これからのやることを考えた

一回家の中に戻り、神の部屋に行って、色々神に聞こうと思ったら、すでに絹布が現れていた。



<< 私は、あなたの外見を16歳にした際は、すでに一番整った顔と体を与えた。


しかし、私にも女の気持ちが分かるので、補足で言うと、化粧とは化粧品を使い顔に直接作用した結果なので、あなたが勉強や見聞きの結果、脳に残った知識と同じであり、ここを出ても変わらない。また、服と違い、体に直接作用するので、他人にも見える。


ちなみに、ものの消耗はしないので、化粧品を使い切ってから新たに作る発想は諦めよう。飽きたら消して新たに作れ。


また、あなたが作ったリンゴウォッチに関しては、他人には見えないが、特別に持ち出せることとしよう。あなたが正確に日付と時間を知ることで、この民族を救うことがよりしやすくなるはずだ。


他のものに関しては、あなたが持ってきたものと互換性のあるものに関してはどちらか一つを持ち出すことができる。つまり、あなたが今持っているスマホと、あなたがここで作ったリンゴフォンについては、どちらか一つ持ち出せられる。同時に持ち出すと前回持ち出したものだけが持ち出される。


しかし同様に、この時代で作れないものに関しては、あなたにしかそれをみることができない。


他のことについては、今のところ概ねあなたが推測した通りだ。


あと、古来婚姻をも司る私は、あなたがこの時代で恋愛して結婚して子作りすることを禁止しない。あなたがここで子供を産むことによって、この民族の繁栄にも貢献するので、もちろん貴方がしたいならの話だ。


つまり、あなたの疑問に答えると、代謝はしないので月経は止まるけど、子供は産める。あと加齢しないので卵子は減らない、つまり、永遠に産める。


もちろん繰り返すが、貴方が子供を産みたいならの話だ。 >>



……後半は、う、うん、うん、検討してみるよ、ありがとう。あと永遠に産めるのか…なんかここだけ切り取ると少しホラーに聞こえるけど気のせいかな。というかめちゃ私に産んでほしいみたい。


たぶんさっき交際歴のことをからかわれたさいに赤い糸を用意しろと言ったからかも…


まあいいや、恋というのは自分が一方的になんとかするだけで成就するような簡単なもんじゃない。神様でもなければ…………いやそういえば私はいまや神の化身……うーーーーーん…いやとりあえず一旦この思考をストップ。



しかしなるほどな。体に直接作用するのであれば結果として他人にも見えるか、ってことは色々整形したい部位に関しても空間の中で現代技術を用いて整えて仕舞えばいいのか。いいことを聞いた。


神が私の体をベストな形にしてくれたとはいえ、女ってどうしても他の女と色々比べてしまうものだ。まあこれはこれでおいおい考えよう。とりあえずそろそろここを出て、大長老に部族の現状を確認して、ボアスア族の今後を考えよう。


そして、リンゴウォッチについては、あっさり認められた。確かに時間を確認する点においては、この時間概念が薄い先住民族の社会で私がこれから色々成し遂げるには、時計は重要なアイテムなのだ。



また、スマホやノートパソコンなど他のものに関しても、今持ってるものとどちらか一つを持ち出せるので、嬉しいことだ。


例えば鞄は、今日は休日の外出なので、トートバッグを持ってきたが、正直本来の私は学校と自宅の行き来がほとんどのためリュックサックのほうを好んで使っているので、変えれるのは嬉しい。


そうだね、今一番使ってるリュックは、結局去年ジッブンの東北に旅行にいったときに、あいつがプレゼントしてくれた帆布リュックだよね…それと同じものを作ろう…うん、そうしよう。神よ、ありがとう。



神に感謝しつつ、私は少し休憩部屋でごろごろしながら、ここを出てからのことを考える。



ここ禁忌の地を出ると、入った時間に出るので、集落で生活するときに、特に夜の時間を潰す目的としてはあんまり使えないかな。


となると、集落の中心部から遠くないところに普段私が夜などに滞在というか住まいをもつ場所が必要になる。そこから神の祭壇もしくは集会所に通う。うん、アクワヌさんに聞こう。


あとここへの入り口は集落の中心地から若干離れているので、1人で行き来しても今の私は当然誰にも傷つけられないので平気だけど、やはりどうにかしてここまで集落の規模を拡大すれば、もっと便利なはず。



ハン族式の城でも作ろうかな。この時代では、先住民族は、集落の周りを刺竹林で張り巡らせて防壁としていた。とはいえ、もっと確実に敵からこの集落を守るためには、ハン族式の城が必要かも…、ただそれだと、前提としてこの民族に技術を伝授しないと作れない。まあ城の建築様式までハン族を真似る必要はないけど…


あとアクワヌさんは自分のことを大長老と自己紹介したのと、私を出迎えた人の中には複数長老のような服装をしている人がいたので、私の知識で間違いなければ、複数の集落をもつ大部族では大長老を持っている、なのでこのボアスア支族はここ以外にも何個かの集落が存在するはず。


複数の集落それぞれの防衛力を高めながら、複数の集落の間の連絡道路の整備も必要で、その通行においては安全確保も必要だ。そうすれば集落間の流通が滞らないので、ボアスア族全体の生産性が上がるはず。



休憩部屋から出て、シャワーを浴び、湯船にゆっくり浸かりながら、さらに考える。



防衛力と道路安全を考えると、まずは敵がどのぐらいこの周りにいるのかを先に考える必要がある。敵とは他の部族のこと、もちろん友好な部族も少なくないが、この時代ではほとんどの部族はお互いに敵視して「首狩」し合っている。この風習は300年近く後に、ジッブン国による統治が始まって初めて全面禁止にしたが、それでもたまに特例を許すほど根深く残っていた。


私はできれば早くにこの首狩を禁止したいが、現状すぐにはできないだろう。となればまずは自分たちの部族の人間が狩られないように防衛力を高めることが重要になる。


そう、今後外来の異民族との対抗において、向こうを交渉のテーブルに連れていくという意味でも、防衛力を含め、武力はこれからますます重要になるので、できれば部族の人口と経済をなるべく外来民族並みにまで持ち上げてから武力を強化したいんだ。幸いまだ数年間の猶予があるので、今の段階で無闇に武力だけ執拗に強化すると帰って部族を苦しめるだけ。現状できる強化だけして、あとは経済力を上げることに集中しよう。



経済は、特にこの時代の先住民族は農耕はあるものの小規模に留まり、基本的に採集や狩猟、漁労が多い。ただし経済成長と人口成長を追求するためには、大量に安定した収穫が期待できる農耕と畜産を中心に整えていく必要がある。



人口に関わる健康、環境衛生でも課題だらけ、そもそもこの時代は異民族も含めて、出生後幼少期までの乳幼児死亡率は高く、平均年齢も短い。その多くの理由はまず環境衛生、そして医療技術、あとは栄養摂取量である。


栄養摂取量は農耕と畜産の整備ができれば、当分はある程度賄えるだろう。


そして環境衛生は、ほとんど水に起因している。この時代は、外来民族は皆やるであろう井戸の建設を、おそらく先住民族はやっていない。下水も、おそらくうまく処理されていない。


害虫と蚊などによる伝染病は、この時代では後に数十年後のジッブン国に連行された「フォルサ国使節団」と称された先住民族の一行にも多く見られるぐらい普通に流行っている。そして、のちにジッブン国による統治が始まって上下水道の整備を始めた当時は、こういった風土病のせいで、この島にいる住民の平均寿命は40歳前後しかなかった。


そうなると、上下水道の整備が必要だね、とくに下水か。あと、住環境もか…


そして最後の医療技術は、完全に私の専門外である。まあ自力で頑張るなら多分ここ禁忌の地で必死に勉強すれば、それこそ医学部を出るまでの年月を費やせば私の研究脳ならなんとかできるはず、どうせ時間は流れないし。


他の方法としては、なるべく早くこの時代のハン族やジッブン族、ネーデルランド族などと接触を果たして、そこから医薬品の調達、場合によっては医者の育成をお願いするなどで、少なくとも今よりはよくなるはず。あっ、そういえばジッブン国はあと20年後に鎖国に入るのか…それまでに直接接点を持ちたいな…


これらの対策を実施したら、直近の数年間で寿命が伸び、死亡率が減るはず。特に乳幼児の死亡率が減少するだけで、人口増加がぐんと上がる。さらに経済成長を続けるためには、生産性の向上と、出生率の増加に伴う労働人口、そして消費人口の増加が必要だ。



そういえば人口増加の別の手段として周辺部族を合併して領土拡大という手もあるな。まあ今後この民族の繁栄と、いくつか必ず発生する異民族との対峙のときの対策を考えると、領土拡大は不可避で、むしろ短期間で進まないと間に合わないのだ。


で、消費人口については、他部族や異民族との貿易を強化することで「外部の消費人口なら」簡単に増やせる。輸出が輸入を大幅に超える貿易黒字を作ればさらなる投資や、この時代の先進国であるハン族のミング国、ジッブン国、ネーデルランド国などから先進技術を導入できる。


特に先進的な武器である銃器はなるべく早い段階で導入したい。あれを持つだけでも同じ歩兵を組織しても武力は数段違う。ネーデルランド人でも銃器のおかげで、少数ながら数年後この島の南部を統治できたのだ。



湯船から出て、メイクルームで髪を乾かし、メイクをしながら続けて考える。



そして教育については…、うーん。


まずは文字を教える。禁忌の地で初めて見たオーストシア祖語の古代文字と、本来はこれからネーデルランド宣教師との接触によってもたらされたネーデルランド文字の二つが候補としてある。もしくは自分で新たに作るという手もある。


私個人としては、せっかく禁忌の地で発見したこの古代文字があるなら、これを使いたい。しかしこれをこのまま使うと発音と文字があっていないので、ネーデルランド文字より習得自体は少しだけ時間がかかるかもしれない。


であれば、第二次世界大戦後ジッブン国が半ば頭の悪いべー国人の司令官に強要されて行った可笑しな言語政策と同じように、発音をこの時代のボアスア族のに合わせて調整するという手もあるが、いや、これをやるとまるで私も頭の悪い司令官になるみたいだからやめとこ。


そもそもあのおかしな言語政策が誕生するまでは、ジッブン人は何も困らずに文字を習得したし、大陸北方の半島にいるハンクック国のあの四角いハンクック語は今でも歴史的な成り立ちを尊重して文字と発音を一致しないままにしているし、あの頭の悪いベー国人司令官が使っていたベー国のイングラン語ですら文字と発音があっていないのだ。


それに、これから私が描く繁栄のパターンには、このボアスア族、その上のバブサ族のみならず、このフォルサ島にいる全ての先住民族が属しているオーストシア族の復興が入っているので、その時はむしろこのままオーストシア祖語を現す古代文字の方が都合がいいはず。


よし、そうしよう。そして文字を教えたら、この部族内で口伝だけで伝わることを文書に残し、そこからなるべく全員に行き渡るようにする。さらに様々な知識も、文字として文書に残し、読める人なら誰でもいつでも手にとって読むことができるよう、整備したい。であれば図書館と学校とかかな。別に新たに建てる必要もなく、既存の類似施設、例えば集会所だったり、広場だったりをまず転用することからスタートしよう。



それと道路や公共施設の整備もあるが、これらを行う前は、やはり前提として集落の安全から着手したいのだ。となるとやはり城作りか…うーーーん。


この時代で、この場所で、一番ふさわしいもの、レンガを作るか。


元々、この地にレンガをもたらしたのはハン族だけど、数千年前からある技術だし、欧州でも作られてるので、全然新しい技術でもなんでもない。


ただし、日干しレンガよりも焼成レンガの方が梅雨や台風の多いこの地に相応しいし、城の防衛力も上がるので、そうなると焼成用の窯を作らないといけない。材料である粘土はボアスア集落の近くのハッケ山で少量とれるはず。ただしもっと大量に必要となれば、ハッケ山にそって少し南に行き、この時代ではガダンと呼ばれるところがあるはずなので、そこの方がたくさん取れる。


現代では私の母親の実家が経営しているレンガ工場も、そのガダンにある。小さい頃からよく工場内で遊んでいたし、レンガに興味を持っている私に対して、工場の従業員たちも熱心に教えてくれて、割とレンガ製造に詳しいのだ。


よし、時間はかかるとはいえ、レンガ窯業を立ち上げることを優先的に検討しよう。レンガの城が出来上がるまでの間は、とりあえず刺竹林でなんとか持ち堪えるしかない。まあ何も外壁がないよりはまだマシだ。


また、どうせ窯を作るなら、より質の高い鉄鋼製造のできる窯も一緒に作りたい。そうすれば、武器と防具の質を高めれば今の武力のままでも戦闘力を引き上げられる。



メイクが終わり、髪の毛も綺麗にセットして、研究部屋に行き、カバンの中を整理し始めた。



そしてそこから経済力をつけてから、ゆっくりと鉄筋コンクリートの製造に取り組もう、ここに近いガマチャト川からは良質な砂利と砂がとれて、現代でもたくさんのコンクリート工場が川沿いに点在するので、ここボアスアの立地はとてもいい。


色々考え出すとやはり収束するのが難しい。けれどそのぐらい今直面している課題がとても多い、私がまだ禁忌の地を出ていないこの時点でも、今持っている知識だけで予想できることが多い、そして実際に大長老に話を聞き、集落を見て回ると、おそらくもっともっと課題が出てくるはず。


本来なら役場を持ち、内政に強い役人部隊を持って臨みたいが、まあ大長老に相談して、何人かを補助官として紹介してもらえればいいか。その時、文字も早い段階で習得してもらいたいのだ。


よし、一通り軽く考えをまとめたので、あとは大長老と話をして、実際に見て周り、集落の現状を把握してから対策案を練り指示を出そう。



カバンをこの空間で作った愛用の帆布リュックに入れ替え、最新型のリンゴウォッチをつけ、ノートパソコンとスマホは一旦データの入っている昔のものを入れて、その他ものものはそのままリュックサックに放り込んだ。


そして私は神の部屋に入り、新しい神託がないのを確認してから、念じた。


「ここを出る」


言い回し、誤字脱字、文法の誤り、表現の改善などがあれば感想や誤字報告に書いていただくととても嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ