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禁忌の地で、理想の環境を整えてみた

最後の答えは余計なお世話とはいえ、とりあえず現時点での疑問は全部片付けたので、あとはこの真っ白な空間をなんとかしたい。


外の時間が流れないのであれば、ここで気になったことを今全部やっちゃうのだ。


結果的に私は時間を持て余す程もらったので、これからこの一族をどうにか繁栄の道へ導くためのベストプラクティスを考えるためにも、また、私個人の研究のためにも、この空間を理想的な環境に変える必要がある。


この時代に呼ばれて神の代理人もどい神の化身になってしまった以上、今の私は研究の先に何か地位や名誉や財力を求めることもなくなったが、かと言ってそれで私が研究を続けないこともない。


私はこれから先も時間の許す限り研究を続ける。そもそも私はあんな浮世なものを求めるために学問を追求するのではない。私は学問を追求するために、学問を追求するのだ。私は研究をするために、研究するのだ。知識欲は人間の4大欲求の一つだからだ。いやまて、先ほどの神託の解釈では、私はすでに人間ではなくなったらしい。


でも私はやはり可能であればいつかは戻って修士論文を提出して学会に一石を投じたいかも。いやいつかは研究の傍ら、いい人と出会って子供を産みたいと思うかも。多分そのときは神に頼めばなんとかできるかな、いやそもそも何を持ってこの「民族の復興プロジェクト」が終了とみなされるのか聞いてなかったな。まあいいや、そのうち聞くとして、先に環境を整えるのだ。


まず家からかな、うーん、そもそも1人だし、家というよりも部屋で充分のような気がするので、とりあえずぐうたらする部屋と、集中する部屋と、食事する部屋の三つで足りるかな、いや今ここにあるものを収納する部屋も必要か、じゃあ四部屋か。


そういえば体が傷つけられないってことは、意図的に栄養を取らないことや寝ないことや呼吸しないことや排泄しないことによる身体損傷も起きない、つまり生命維持のための活動がいらないってことかな?ってことは寝ることも、呼吸することも、食事すること、トイレに行くこともいらないはずだよね。


あれまて、毎月来る女の子のあれも来なくなるのか?いやあれは生命維持するための活動じゃないから違うのか?いや卵子は生まれる前から減ることはあるけどあらたに作られることはないので排出されることはイコール母体からの分離、つまり損傷?うーん、そもそも加齢はしないのであればそこに至る過程自体がとまるはず?どうだろう?考え出すとなんか収束がつかなくなりそうだ…


まあいいや、どうせそのうち分かるし。


それより今の私は食事を楽しみたいのだ。あっ、そういえばカレーライス。確かに食べ物を作れないとは書いていないので、念じれば作れるはず、今試してみよう。


私は、「先住民族歴史文化博物館併設レストランの看板メニュー、カレーライスセット」と強く念じてみた。


そして、机の上に出来立てのカレーライスセットがトレーごと現れた。


わーい、本当に作れた。嬉しい〜。これで、ここに来ればいくらでもカレーライスを食べられる。


カレーライスを食べながら、私は色々考えながら念じ始めた。


まず4部屋の家、いわゆる間取り4Rの家を作る。


それぞれの広さは、多分念じれば簡単に調整できるはずなので、一旦7帖ずつに、ただし、今ここにあるものを収納する部屋、うーん名前は神の部屋にしよう、この神の部屋だけは、7帖じゃ収まらないので、まあそのうち整理して部屋をまた分けるとして、うーん、30帖くらいかな…


そしてこの机を含めてこの辺りが、一瞬にして一つの部屋の中に移動した。いや、部屋がこれを囲んで作られたと言った方が正しいのか。


カレーライスのトレーを持って、私は食事の間に移動した。


ちなみに部屋の配置は、廊下を挟んでこちら側に神の部屋、向かい側に他の三部屋が並べてある。北?からの順に研究部屋、食事部屋、休憩部屋とした。この三部屋は神の部屋に合わせて10帖ずつとし、四部屋とも正方形にした。


そして食事部屋に移動したあと、家具を作り始めた。念じれば作れるので、トレーを持ってても簡単だ。


まずは、ダイニングテーブルを横180cm、奥行き80cmくらいの木製にして、色はライトブラウンの木目調で…


椅子は、どうせ今は私しかここに入れないので、一つで十分だ。テーブルに合わせて木製の背もたれ付きのライトブラウンの木目調にした。


そして出来上がったテーブルセットに腰をかけ、再びカレーライスを食べながら、今度は窓から眺める景色を作る。


念じれば作れるのであれば、景色は、それぞれの部屋を別のものにしても、問題ないはず。一応玄関も作ってあるが、玄関の外はまた別の景色にしよう。まあものは試しだ。ダメだったらまた考えよう。


そう考えて、私は窓とそこから眺める景色を作った。


窓のサイズとタイプは、正方形の部屋の一面の壁をフルに使って、一枚ガラス張りの横滑りタイプにした。


景色は、私が旅で訪れたフォルサ東部のタロワンにあるモロンガヤンガイの砂浜と、そこからみた海とタロワン海岸山脈の景色。時間帯は、昼前。


最初にこのモロンガヤンガイを訪れた時に気に入り、そこから数ヶ月に一回は来るようになった。この場所の名前はここに住んでいるタロコ族がつけたのだ。意味は「7つの星の湖」だけど、今はビーチなんだ。本来はもう少し離れたところにあった湖をさす名前だったけど、まあこれもまた悲しい歴史的な経緯があったのだ。


そういえば時代が変わっても、ここの景色はそんなに変わらないので、いつかはこの時代のモロンガヤンガイを訪れてみたい。


色々回想しながら、窓以外のところを改装した。壁と天井は白いままで、照明は温白色にした。そして床はフローリングで、色は、テーブルと同じくライトブラウンだ。


カレーライスを食べ終わり、そして念じるとトレーごと消えた。ゴミ出しもしなくていい点ではすごく便利だ。


そこから私は部屋を出た。ちなみに部屋のドアも木目調のライトブラウン色だ。


今度はぐーだらだらしたいときに使う休憩部屋に入った。この部屋で安らぎの一時を過ごしたいので、まず照明は電球色にした。そして壁色は、天井を含めてオールダークグリーンで、床はクッション性のある素材で、かつ表面は一面ダークグリーン色の絨毯を敷き詰めた。


窓のサイズは、食事部屋と同じ大きさにした。景色は、地元のハッケ山奥の展望台から眺めたものに変えた。このハッケ山奥の展望台には、子供の時よく来ていた。そういえば、先ほど神から彼氏ではないと断言されたあの人ともここによく来ていたな。


そしてぐーたらするなら欠かせない、人を確実にダメにするクッションを、特大からミニまでのサイズでいくつか用意。あとは雑誌を読むためのミニテーブルとかかな


そういえば雑誌とか本とかって作れるかな?やってみよー


そして20代向けの女性誌を、うーん、最新号でいいのかな、って念じたら、本当に出てきた。いやこれはすごい、私のここでのぐーたらのお供を悩まずにすんだ。


そしてミニテーブルと、あと大量の毛布も作った。


このまま少しここでぐーたらしたかったが、もう一つの部屋の整備を先にすることにして、私は休憩部屋を出た。


最後にやってきたのは、この研究部屋。


研究部屋の中は、できれば私が大学院で使った個人研究室のままにしたい。本来大学では学生に個人研究室を割り当てていないが、私の大学時代からの熱心ぶりと研究実績をみて、教授がわざわざ学校に特例申請を出し、私に個人研究室を学校側に用意させたのだ。ただし特例なのと、まだ学生ということで、一番小さな、元々当直用の部屋が支給された。もちろん組織としての研究室ではないので、メンバーはいない。


その中には、私が研究のためにかき集めた本とか資料とか様々なものがあって、いつもそこで論文を書いてるので、そのまま作れば一番集中できるはず。


そして、「大学院の私の個人研究室そのままを」と念じたら、本当にそのまま再現してくれた。しかも多分私がここに呼ばれた時のままで、なぜならテーブルの上に前日に食べかけたお菓子と飲み物もそのまんまだったから。


これはすごい。ってか先からすごいとしか感想がないけど、いやでもやはりすごいじゃない?こんなに簡単に再現できるって、最高じゃん。


あと窓も含めて、天井と壁と床とドアも研究室のと同じものに変わった。そういえば研究室の窓は高くて小さくて、160センチの私が立っても及ばないところにある横長の嵌め殺しタイプだけど、うーん、正直あんまり気にしないが、雨の時に雨音を聴きながらなぜか大変捗るので、景色は雨にしよう。


よし、あとは本来持っていなかったものを足そう。


人間の欲望は無尽蔵であり、念じれば作り出せるなら、私は今まで持ちたくても持てなかったものを作りたいのも当然だ。


まあ大したものではないけどね。そして念じたら、研究室の机の上には、最新型のリンゴ卓上型パソコン、キーボード、マウスの一式が現れた。ふははは。これは研究が絶対捗るぞ。


あれ?電源コードがないんだけど。


あ、そういえばアビンさんの引き継ぎには、物の時間は経過しないと書いてあったな、つまり電力の消耗はしないってことかな?とりあえず立ち上げてみよう。


電源ボタンを押したら、モニター画面に普通に白く光るリンゴが出てきた。予想通りだ。


つまりあれかな、私のスマホもパソコンもここに持ち込めば電源は消耗しない。でもあれかな、ここを出ると消耗するよね?であればやはり充電用にコンセントとモバイルバッテリーも作る必要がある。


そしてついでにリンゴの最新型ノートパソコン、リンゴウォッチ、リンゴフォンも一通り作った。


別に持ち運び用なら今持っているのでもいいし、そもそも持ち出せないけど、でも簡単に作り出せるならやはり作ってみたかった。いやリンゴウォッチは時間が流れないここでは、時間を確認しようがないし、誰からも電話やメールやSNSが来ないし、意味ないのか。


なんか私ははしゃいでいらないものまで作ってしまったようだ…


神の部屋をどう改造するかはまたおいおい考えるとして、私は今度は、玄関…いや、廊下の反対側にあるもう一つのドアを開けた。


メイクルームだ。そう、女なら一度は持ってみたい、化粧するだけの部屋なんだ。


今までは、大好きな研究を最優先にして、メイクはなるべく時間のかからない時短メイクで済ませていたけど、ここでは違う、私は思うがままにメイクに時間をかけることができる。


あれ待ってよ、仮にここで作ったメイク道具でメイクしたところで、果たしてここを出たとき、みんなにそれが見えるのか?


先ほど、私の服はこの時代で作れなかったので透明にしてあると神が言ったし、そもそもここで作ったものは持ち出せないとも書いてあったのでな、うーーーーーーーん、まあ後で聞いてみよう、ネイルとかもやりたいし。


持ち出すか出さないかは別として、私は欲望のままに念じ、化粧台、化粧道具や椅子、ソファを作り出し、鏡は当然壁一面の物にして、先程の宣言通りでかい姿見も作った。また、化粧台には拡大鏡と手持ち鏡も合わせて作っておいた。鏡は大いに越したことはない。


そしてそして、このメイクルームの奥のドアを開けて足を入れた。これもまた新しい部屋だ。


女子たるもの、お風呂の時間も大事だもんね。だから、この部屋と、この部屋の奥にある部屋は、脱衣所と浴室にする。


脱衣所は、1人にしては広すぎる空間だったが、実はここにシャワールームを設置したかったのだ。


私は、オーバーヘッドタイプのシャワールームを設置して、その横に脱衣スペースや洗面台など一式を作った。そして奥の部屋に入り、壁と天井と床は全て真っ白のままで、部屋の真ん中にこれもまたオールホワイトの脚付きタイプのいわゆる舟形浴槽を作った。


これで、屋内の全ての部屋は完成した。残りは屋外だけなので、私は玄関を出た。


当然の如く真っ白な景色だけど。まあ今んとこ屋外については、特にこれといった拘りが浮かんでおらず、とりあえずここを小さな丘の上という設定で、そして地面は一面芝生にしよう。空の景色は…そうだね…晴れの日の青空で、少し白い雲が流れて、よそ風程度の午前中ってことで。


一瞬で、できた。やっぱすごい。


言い回し、誤字脱字、文法の誤り、表現の改善などがあれば感想や誤字報告に書いていただくととても嬉しいです。

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