戦後の交渉に向けての話し合い
=『ア、アキ・ア・ミンパカリバだ。』
身震いしながら、改めて姿勢を正したバロッチ戦士団長のアリマンは、私に向かって土下座をした。
=『あ、ありがとうございます。さ、先程のご無礼をお許しください。』
謝れたけど、恐らく最初に私が会話に割り込んだときの話かな、まああんま気にしていないし。
私の次の言葉を待たずに、アリマンは言葉を続けた。
=『敵である私の怪我を直すことを、感謝の言葉をいくら飾っても、そんな寛大なお施しに報えることができません。』
めちゃ畏まられている…まあ私的にはこれが目的だったからいいか。
『アリマン団長、私は争い事が嫌いなんだ。しかし力なしの平和交渉は何も意味を成さないことも理解している。現状、私には十分にあなた達を皆殺しにできる力を持っているが、それをしたところであなた達の集落の幸せには繋がらない。』
『今日はあなた達が負けた。今後についてどうしたいのかを、私はあなたにも一緒に考えてほしい。皆で幸せになることを私は目指している。』
『これから武装解除してもらい、うちの集会所に来てもらうんだ、いいか?』
=『畏まりました。恐縮ながら一つだけお願いを申し上げても?』
『言って』
=『落とされた我々の集落の状況が知りたいです。』
『それについては心配いらない、多少の戦闘員の死傷は避けられないが、それ以上のことは私は許していない。』
私はダネブ戦士団長から、第二案の展開に合わせて行う奇襲策を一緒に聞いた。人員的にはこちらが上回るので、敵の本隊がこちらに来ていると確信できた際に、予備団員を中心に奇襲隊を編成して向こうの集落に襲撃を仕掛けるとのこと。
大筋同意したが、私からは、その際は決して戦闘員以外へ手を出してはいけないと、再三ダネブ団長に念を押した。
=『ありがとうございます。その大恩は決して忘れることはございません。』
その後、アリマンの指示によって、バロッチの戦士団員全員の武装解除を行い、私とダネブ団長は、バロッチ戦士団からの正式な敗北宣言を受け入れた。
武装解除したバロッチの戦士団員には、先程捕虜となった戦士とは別に、北西門近くの詰め所で休んでもらうことになった。その際に私はこちら側の戦士を含めて、両方陣営の重傷者の怪我を治し、怪我を治された者から全員神として拝まれた。まあ実質神だから…やっぱ拝まれるのは少々驚いた。
けが人の治療をへて、私はダネブ団長たちが待っている集会所に戻った。
ちなみに捕虜となったバロッチの戦士たちは、万が一に備えての人質として使えるよう、戦士団長の強い要望で捕虜解除されていない。ただ、不便を強いていないようにはしている。
『待たせた』
ーー『いいえ、事前にいくつか確認する事項を先に行いましたので、ちょうど終わったところです。』
『そか、じゃあ報告をお願いね』
ーー『はい、まず捕虜の処置については、正式にバロッチの大長老と交渉した後に決定します。』
『分かった、それについての調整は任せるとして、交渉の場はどこで設ける予定?』
ーー『先程占領した集落ーー「ウサイ」で行うことにしました。アリマン団長から戦士を派遣し、明日の正午に面会を行います。』
『分かった。今後についてはどのように考えているのか?』
ーー『アリマン団長は、責任は自分にあると言っている。集落の一般人には手を出さないてほしいとの要望があって、それ以外はすべて受け入れるとのこと。』
『なるほど、ダネブ団長はどう考えている?』
ーー『私は、バロッチを併合し、戦士団を編入統合すべきだと思う』
『ほう、ってことは明日バロッチの大長老にもそういうふうに持ちかけるつもり?』
ーー『はい、勝者としては然るべき代償をもらうべきだと。』
『うーーん、分かった。混乱は起きるので、戦士団の統合はもう少し待とう。確かにバロッチは東側の部族と今係争中だし、今編入統合を行うと東側の防衛体制が弱体化する恐れが出る。』
ーー『承知しました。確かにおっしゃる通りです。』
『ありがとう。バロッチの併合には賛成だが、どのような形で行うのか、併合後の体制をどうするかは、大長老と一度あってから最終決定しよう。』
ーー『畏まりました。また、先程アリマン団長から聞いた話では、仮に併合をした場合、今後北東のアタブ族、南のパクド族、ラムド族と関係について、それぞれの部族との交渉も出てきます。』
『それは確かに大事だ。ハッケ山をぐるっと回って東側に位置するバロッチが領地に加わると、実質北、東と南から挟まれている形で、なにかあった場合は山を挟んで西側にあるボアスアからの救援が遅れる。地形上は我々にとってかなりな不利を強いられる。』
ーー『おっしゃる通りです。できれば友好な関係を築きたいです。少なくともどちらか一部族とは。』
『併合は色々課題が出てくるが、一つ一つクリアしていこう。とりあえず今日はこれでおしまいにしよう。』
ーー『承知しました。』
私が来るまでにダネブ団長が既に大部分の話をまとめてくれたので、それを報告して貰う形で概ね今後の進め方が決まった。
理想的な形で進められれば、私がここに来て二日目にしてボアスアの領土拡大に成功したと見てもいい。
戦士団員の装いを見ると、恐らくボアスアと比べてバロッチの集落の様子がより原始的のはずで、以下にそこから脱却させるのかという新しい課題も出てきた。
一番危惧しているのは、現代で起きた第二次世界大戦の後に、長年の間分断された西のボン共和国と東のDDRが再びドイチェランドに統一したときの前例を踏襲してしまうことだ。
1990年代に統一したドイチェランドの旧西側と旧東側の経済格差が大きくて、全体的に生活や技術レベルがだいぶ遅れた旧東側のDDRに引っ張られて、しばらく国全体が経済不況に陥った。
色々スケールが異なるが、これからボアスアの更なる改革を進めるとともに、バロッチとボアスアの格差も縮めなければいけないので、ドイチェランドの二の舞にならないかとても心労が絶えない…
大航海時代の諸国のように植民地政策を取るにしても、基本となる経済力がまだそこまで培っていないし、軍事力も圧倒していないので出来ない。仮に出来たとしても私の目的に一番沿わない最悪策としか思えない。
とにかく、バロッチの現状については、明日バロッチの大長老から直接話しを聞くことにして、今日は終わりにした。
戦時体制を敷いたダデイ集落の復旧については、北の長老に任せるとして、ドバくんたちと一旦北の長老が用意してくれたそれぞれの部屋で休息を取ることに。
12月26日
今朝、ドバくんに、近衛団員を使わせて、タナワス事務団長と事務団員の複数人を呼びつけた。今日の交渉に際して伝達や指令を出すには必要なのだ。
その後、昼前に、捕虜を残して、ダネブ団長が率いる本隊と、武装解除した状態のアリマン団長とその団員たちとともに、私達も一緒にバロッチのウサイ集落に向かった。
400年前の1620年代は、まだ小氷期の真っ最中のため、現代よりは全然寒く、亜熱帯に位置するボアスアの冬も体感的にひんやりとしているが、神の力の影響で私には無縁である。
ただ冬独特な透き通った空気と青空、そして頬を撫でる風の感触は、割と好きだ。
「にしても、イブに呼ばれて、クリスマスに戦って、今日は受降か…全く神のやつは…」
独身の今は、クリスマスはあんまり関係ないとはいえ、やはり気持ちとしては文句一つぐらい言わせてほしい。
あれこれ考えながら歩いているうちに、ウサイ集落と思われる集落が目に見えた。
初めての小説なので、
言い回し、誤字脱字、文法の誤り、表現の改善などがあれば、
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