戦い、そして神の奇跡
アリマンと名乗った、バロッチの戦士団長と思われる人物を、私は後ろ側から確認できた。
その服装は、ボアスアとは違った。また、そもそもバロッチの戦士たちは皆腰布一つ巻いただけだが、それと比べて団長の腰に巻いた布は、質といい色といい少々違った。
もちろんのことだが、バロッチの戦士たちは皆上半身裸のため、鍛え込んだ筋肉が優美な形をなして、お互いに密かに競い合っているような光景に見えた。
服装の改革を行ったボアスアとはやはり違い、私が先住民族の文献で見た挿絵に近い様子だった。
そんな私の学者妄想をよそに、二人の戦士団長が話を続けた。
=『ダネブ、俺は知っとるぜ、お前が狩った首の数がだいたいどれほどあるのかを。どうだ?俺に勝ったらこの首はお前のもんだ。』
ーー『ボアスアは、もう首狩りを廃止した。だからお前の首はいらん。降参するなら命は取らん。』
えっ、そうなんだ?首狩りはもう廃止したんだ…てっきりまだやってると思ったよ…あ、今はそれを考えるどころじゃない。
=『人数が多くても絶対勝てるわけねえのはお前も知っとるだろ、このぐらいなら俺は無事に帰れる。代わりにお互いに死傷者が大勢出る。こんなのお前が望むのか?』
ーー『…』
=『どうだ』
決闘を申し込んだバロッチの戦士団長、申し込まれて考え込むダネブ団長。
そこにダネブ団長のもとに一人の戦士が駆けつけ、なにか耳打ちをしたようだ。
考え込んだ団長の顔が明るくなり、察するにどうやら団長の策がうまく行ったようだ。
ーー『アリマンだな、お前の提案に乗る必要はない。お前の集落を今落とした。もうお前に帰るとこは残ってない。』
=『っ!?、な、なんだと!!おい、誰か確認してこい。』
自分の本陣が落とされて、動揺した様子を隠しきれずに周りの戦士に指令を渡した。
もちろんその確認が終わるまで待たせるつもりもなく、ダネブ団長は続けて話した。
ーー『お前は今ここで降参するか、決死するか選べ。』
=『卑怯だ!俺はお前と決闘のためにやってきたんだ。』
ーー『戦士である前に、戦士の長だぞ。そんな自覚もないのか?』
=『戦士の長だからこそ長たらしめる強さを示すべきだ!』
『はいはいこれ以上止めてくれ。』
こんなやり取りを永遠に見てられない。策が既に成功したのであれば、この後の展開は、勝手に私の考えたとおりに推し進めても文句言われないはずだ。まあそもそも私の立場なら今更誰にも文句言われないし…
そう思った私は後ろの人だかりをすり抜けて、ダネブ団長の近くにやってきた。
『ダネブ団長、仮に戦うなら勝つ自信はあるのか?』
ーー『確実とまでは言えないが、それに近い自信はある。』
『なら受け入れてくれ、怪我は私でなんとかする。』
ーー『……、承知しました。』
=『お前誰だ?』
ーー『おい、誰に対しての口の利き方だ。あ”あ”、今躾してやるじゃねえか』
『ダネブ団長、いいよ私は平気だから、集中して、あと、自衛を除いてあいつを殺さないでくれ』
ーー『畏まりました。では』
フォルサの先住民族では、決闘は揉め事を解決するためによく使われる手段の一つだ。
決闘の当事者双方がお互い承諾すれば、一対一で戦うことになる。その間は周りは決して手を差し伸べたりせず、ただ決着まで待つのみだ。
勝った人は、負けた人の首を持ち帰ることが許され、集落で盛大な宴を開く。負けた側の人間は仕返しに夜襲することはもちろん、または新たに決闘を申し出ることもできる。
つまり、永遠と戦い合う負のスパイラルの出来上がりなのだ。
現代の考え方が染み込んでいる私にとっては、これに理解を示しても、ここから先それを変えずに守り抜くことをするつもりはない。
ただ、今は手段としては最適だ。
まあ、ダネブが不利に陥ったらすぐさま助けるつもりだし。
お互いが決闘に了承した後、双方の戦士は、後方に下がり空間を作った。そこに私、アリマンとダネブが真ん中にいる。私は当事者の二人からは少し離れて立っている。
私が開始の合図を出すと、そこから二人は素早い動きを見せあい、キンキンと、カンカンと、刀がぶつかりあいながら透き通った金属の打撃音が響き渡る。
さすがお互いとも戦士団長に上り詰めた歴戦の戦士で、攻守とも劣らず、素人の私が見ても、しばらくはほぼ互角に見えた。
しばらくすると、徐々にダネブが優勢に立ち、アリマンは少しずつ後ろ側に抑え込まれていく。
次の瞬間
キーーーン。
カサッ。
刀が飛んできた。私の横を通り過ぎて、後ろの地面に突き刺さった。
慌てて私のところに駆けつけようとしたドバくんを手で制止し、地面に突き刺さった刀を見た。
アリマンの刀だ。
これで降参するかな、と思った私は少々甘かったようだ。
今度は、アリマンが腰布から一回り小さい小刀を手に持ち、再びダネブに挑む。
キン、キン、キンキン。
いつの間にかアリマンの両手にそれぞれ小刀を持って、二刀流でダネブの豪快で暴力な刀裁きを上手に受け流した。
しかし刀身の長さが邪魔して、アリマンはなかなかダネブと距離を縮めることが出来ず、ほぼ守勢に転じた。
そこに、ダネブもつい左手に小刀を持ち、大小二刀流で応戦。
キンッ
キーン
キン!
カサッ
=『!!!!うわああああーーーー』
悲鳴を上げたのはアリマンだった。
左足が避けきれず、ダネブが振り下ろした刀をそのまま太ももで受けてしまい、動きが鈍くなり、更に次の瞬間、ダネブはアリマンの反対側の右太ももも同じように切ってしまった。
切り傷がかなり深く、重傷を負って両脚から大量の血が湧き出てきて、痛みに耐えきれず座り込んだアリマンの首に、ダネブは刀を突きつけた。
=『……降参だ。俺の負け』
アリマンの降参宣言を受けて、ダネブは刀をしまい、そこに私が近寄った。
『ダネブご苦労さま。アリマン、これ以上はもう戦わないと約束してくれたよね?』
=『二言はない。約束だ』
『よし、じゃあそのまま待ててね。』
座り込んだまま太ももを手で抑えて止血を試みるアリマンも、刀を仕舞ったダネブも、ふたりともいまいち私の意図を把握できず、私の次の行動を待ってくれた。
私は、腰から神託剣を抜き出し、アリマンに向けて、今日はじめて試す新しい言葉を念じた。
(パターソ)
予想通りというか予想通りかもしれないが、アリマンの両足がふんわりと光り、というか暖かそうな電球色の光りに包まれて、ほんの一瞬にして傷が消えていった。
!?!?!?!?!?!?!?!!!
アリマンも、ダネブも、そして夕方に既に私の力を見たドバくんと近衛団員を除き、両陣営の戦士団員が、皆驚愕の一色で目の前の光景に呆然し、なんとか理解しようとした。
私は茫然自失となったアリマンに、爽やかな微笑みを見せながら自己紹介した。
『自己紹介遅れてすまぬが、私は、ナオ、神の代理人だ』
初めての小説なので、
言い回し、誤字脱字、文法の誤り、表現の改善などがあれば、
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