新しい玩具で遊んでみた
ー『うぅ、いっったぁーー』
数メートル先に飛ばされたドバくんは、背中を擦りながら立ち上がった。そこに私が慌てて駆けつけた。
『ドバくん、大丈夫?ごめんねドバくんが目の前にいると思ってなくて…ごめんね』
ー『い、いえ、大丈夫です。ナオさ、っ!?』
私の心配の言葉に答えながら私の方を見たドバくんは言葉を失った。
あっ、そか。
『えへへ、びっくりした?どう?似合う?イメチェンしたの』
ー『あ、き、きれい…』
そんな私の新しい装いを、ドバくんが見惚れてしまったようで、目が釘付けになり、口がぱかっと開いたまま棒立ちになった。
『おーい、ドバくん?いる?』
思わず私の方から手を振ってどっかに行ってしまったドバくんの意識を呼び戻した。
ー『あっ、すみません、ナオ様が一瞬で違う姿になってしまって驚きのあまりに、失礼しました。』
視線を斜め下にそらし、赤らめた顔をしたドバくんが冷静さを取り戻して私に答えた。
『そういえばそうだったね、私は中に結構いたんだけど、外にいる人間からしたら一瞬だもんね。ごめんね二回も驚かせて』
ー『いいえ、僕のほうこそすみません、次回は立ち位置に気をつけます。』
そういえば、私が禁忌の地に入ったときは、ドバくんは出口を背向けしなかったはずだけど…やっぱ少し時間は進んだかな?今度聞いてみよう。
『ドバくんやさしいね。普通だったら激怒なのに、へへ。あっ、ドバくん、一度神の祭壇に戻らないといけないので、行こう。』
ー『畏まりました。皆、一度戻るんだ、付いて来い。』
公務モードに素早く切り替えたドバくんは、団長らしく早速指示を出した。
まあ10人も行かない小さな近衛団だからね、このぐらいはこなして当然というべきかな。下手に褒めると却って顰蹙を買ってしまいそう。まあドバくんは優しいし、立場的にも逆らえないし。
小走りで私達は素早く中央集団に戻り、神の祭壇に入った。
相変わらず神託剣が祭壇の真ん中に突き刺さったままである。
ドバくんたちを下で待たせて私だけ壇上に上がった。昨日呼ばれたときの立ち位置から、もう少し剣に近付く。
間近で見ると、さすが神が作っただけあって、その美しい剣身の質のよさは、恐らく私がいた現代でもまだ到達できない境地のはずだ。
余計な装飾はないが、味気がないわけでもなく、しっかり上品さを兼ね備えて、殺戮の兵器なので絶対的な力を感じつつも、どこか人間味を併せ持った権威の一端が味わえた。
そんな高評価を心から出しつつ、私は剣柄を握った。
その瞬間、またしても白く輝きはじめた剣だが、一瞬にして大きさが何回りも縮み、私が振り回すのに丁度いいサイズに変わった。
目安としては、2メートル半はあったはずの長さが、100センチ前後か、もう少し短くなった感じ。しかも丁寧にベルト付き鞘に入れた状態になったので、これで持ち運びも楽だ。
それに、重さは全く感じない。
早速ロングワンピースの上から腰にベルトを回して装着し、剣を抜いた。
美しい…
美しい…
恐らく先程私を見たドバくんと同じような表情をして、私はこの剣を見惚れてしまった。
無事神託剣を持ち出した私は、再びドバくんたちと中央集落を出た。
北集落に向かう道の様子が、先程とがらっと変わった。
『ドバくん、これって』
ー『はい、ダネブ戦士団長の指示で間違いないと思います。団長はいつも動きが早いので』
『なるほど、これは期待できる。』
道は、数百メートルおきに、恐らく予備団員だろう戦士が立ち並び警備に努め、その脇を、北集落の方向からやってきた年配者と子供など、非戦闘員かつ非生産要員が中央集落に避難する列を作って、通過していく。
まさかこんな短時間ですでに沿線の警備と避難の指示を出し、そして集落の住民の避難準備も避難の列も混乱一つ感じさせずに行った。
恐らく普段からの訓練なのか、または今までの経験なのか。
そんな列の進行方向とは逆に、私達は立ち止まることなく北集落に向かった。
『ドバくん、一回あのへんに行こう。』
北集落が見えてきたとき、私はどうしても確認したいことがあって、ドバくんに指示を出した。
ー『承知しました。そこの空き地でよろしいでしょうか?』
『うん、ちょっと試したいことがあってね』
団員を連れて、空き地のところに着いたら、早速私は剣を抜いた。
「確かにやりたいことを念じればいいよな」
独り言をしつつ、私は念じた。
(マーバリ)
次の瞬間、「ドンッ!」という音とともに、私を中心点にして、四方八方の空気が強烈な速さの動きを起こし、超音速の衝撃波のように一瞬にして空き地を囲む草原が私とは逆の方向へ薙ぎ倒された。
しかしドバくんを含めて、団員は全員平気だった。
なるほど、自動的に味方を判断してくれたんだね。
ただ、影響範囲はそんなに広くなく、目安では大体半径10メートルぐらいあるかないかかな。
ー『ナオさ、あ失礼しました。神の代理人様、これはいったい?』
『ドバくん、いいよナオでも。これは神に授かった力だよ。』
ー『こんなすごいことができるんですね、ナオ様。』
『へへ、ただ限定的なので、万能ではない。』
まるで子供が新しいおもちゃを手に入れたように、私は次から次へと呪文を念じた。
(モナード)
今度は、同じくらいの範囲の中で、すべての草が勢いよく燃え上がった。もちろんドバくんたちのところは何も影響を受けていない。彼らはただただ驚いた表情をして己の周囲に起きた異様な光景を見渡した。
(モエタス)
入れ替わるようにして、土砂降りとも言える豪雨が暴れるようにしてドカンと降下し、目に入ったのはまさに傾盆大雨という光景、それが落下した先にあるあらゆるものを激しく叩きつけ、先程ひどく燃え上がった炎をまたたく間に消し飛ばした。
(マーララ)
今度は、私を中心に、やんわりと暖かく明るい光が充満した。あ、これは夜道に使うやつだ。これじゃなくて、さっき会議中に私を呼んだときのあの殺人レベルの光線がほしいんだよね。であれば、こうかな。
(リムカ)
今度は視界が真っ白になるほどの光が剣から放射された。うん、そうそう、これだよこれ。
よし、これで大体分かった。
だいたいどんなことをしてもやはり範囲は今の所限定的なので、とっさのときのためにしか使えない。
ただそれだけでも、限定的な神力でも私が取れる行動に新たな選択肢を与えてくれた。
推測するに、初日に敢えて私に剣のことを伝えなかったのは、そもそも私の体が無敵なのでまだいらないと神は判断した。
そして二日目にして紛争の早期解決したい私の考えに対して、私が戦地でドバくんや周りの人を守れるよう、情報開示したのだ。
まあ推測の域だし、今更確認する必要もない。
『ドバくん、お待たせ、じゃあダデイに入ろう』
ー『はい、行きましょう。』
さあ、これからが本番だ。
初めての小説なので、
言い回し、誤字脱字、文法の誤り、表現の改善などがあれば、
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