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予定より早く、畑を見学することになった



『そういえばドバくん、次はなにするの?』



朝ごはんを食べて、イスルとタタが後片付けをしている間、私とドバは一旦家を出た。



ー『そうですね、次は、母たちと畑に行こうと思います。いつもは、朝ごはんの後、母と姉は畑に行くので、僕は成人までは手伝っていましたが、成年後ずっと戦士団にいるので、手伝えるのは休みの日ぐらいですかね。』


『おお、畑か、いい選択をしたよドバくん、私もちょうど見てみたかった。』


ー『では、そろそろ母と姉が出てきますので、出てきたら伝えますね。』


『うん、ありがとう』



想像より少し豊かだったこの時代のこの集落、背景にあるのは民族の接触でしかないのだが、今の所変化が出たところもあれば出ていないところもある。さあ、農業はどっちだ。



ーー『あ、ドバ、ナオ様、どうしたの?』



少し待っていたらイスルさんとタタが出てきた。手には簡易な農具などを持っている。



ー『ナオ様を連れて見学したいんだ、あと僕も久しぶりに手伝いたい。』


ーー『そういうことか、いいよ、じゃあ行こうか』



イスルさんは極めて普通にこちらの急な要望を受け入れてくれた。やはり一家の主は冷静さが違うんだね。


そのままイスルさんについて集落の南を出て、少し歩いたところにやってきた。


目の前には、畑が広がっていた。



『おお、なかなかすごいな。』


ーー『ナオ様、こちらがここ中央集落の南畑です。畑はこちら南以外に、もう一箇所西側にあります。』


『北と東にはないのか?』


ーー『はい、北と東は、主に鹿などの狩猟の場であり、あと果物と野菜の採集を少しではあるが行っています。』


『なるほど、ちなみに畑では主に何を作るのか?』


ーー『西畑と南畑はそこまで違いはありません。どちらも米や雑穀などを中心に栽培をしています。』


『それにしても、なかなかの面積だね。』


ーー『はい、一家の主である女性は基本的に一定面積の畑を責任を持って管理しています。もちろん実際に管理責任だけで、栽培については管理範囲に関係なく農耕を行う女性全員お互い助け合っています。』


『では、結構な収穫量が得られたの?』


ーー『いいえ、実は土地は年々衰えるばかりで、本来はもっと集落の入り口側にも畑があったが、使えなくなったのでだんだんと耕地が離れてしまいました。』


『なるほど、確かにそうなるんだよな。にしても結構詳しいんだね』


ーー『はい、恐縮ですが私は大長老からこちら中央集落の農耕管理を任されています。』


ーー『お母さんは、中央集落の農耕責任者です。』



イスルさんの説明がなかなか詳しかったのでひょっとしたらそうかなと思ったらビンゴだった。タタの補足で確信を得たが、イスルさんはここ中央集落の農耕責任者であった。これもなかなかの幸運である。


農耕の技術を向上させることでこの時代では当たり前だった「慢性的栄養不足」から脱却することで寿命が伸びて、そして出生率と死亡率も下がることに繋がるので、私としても早く農耕責任者にあって現状把握したいところだ。



『ありがとう、もうちょっと聞いてもいい?』


ーー『はい、承知しました。少々お待ち下さい。』



イスルさんは、タタと手伝いに来たドバくんに少し指示を出したあと、再び私のもとに戻った。


私にとって今の公務ではないので、ドバくんには自由にしてあげたい。所詮私は無敵の体なのでプライベートのときは体裁でしかない護衛はいらない…。


カップルでもないから、カップル以上にくっついてたらドバくんは疲れるし。私?神の力で、疲れないよね。



ーー『お待たせしました。ではあちらに行きませんか?』



イスルさんに案内されて、近くのガジュマルの下に移動し、腰を掛けた。近くには様々な農具や食器などが置いてある。



ーー『ここは私達が休憩する際に使う場所です。今は冬の朝なので関係ないが、夏のときは昼前に農作業を終えてここで休憩してから集落に戻るのです。』


『だから食器とかも置いてあるのね』


ーー『はい、昼は簡単に済ませていますので、こちらでも問題ありません。』


『しかし、農地がどんどん離れていくのに良くも集落は移動しないままだね』


ーー『実は、それが私にとってもアクワヌ大長老にとってもかなりの悩みです。』


『はやり悩んでるんだ』


ーー『昔から私達も常に新しい耕地をもとめて、何度も集落を移動しましたが、先代の大長老のときからやり方が変わり、中央集落周辺に点在した小さな集落を中央集落に移住させながら拡大してきました。その時は、大体は使えなくなった農地を転用して住宅を建てたので、なんとか集落を移動せずに済みました。』


『だからこんなに人がいたんだね』


ーー『はい、先代の大長老は、ロッコの港に長く滞在したことがありまして、その影響だったと思います。』


『先代の大長老はロッコに住んでたんだ。』


ーー『はい、私の母が次代巫覡としての神託を受けて、私たちを連れて中央集落に来たときは、まだ先代の大長老の代でした。当時の話も母から聞いた断片的な内容しかわかりませんが。』


『うん、でも農耕のことに関しては、先代大長老のときでも特に変化は起きてなかったんだね。』


ーー『そうみたいです。先代の大長老は、就任してからまずは一族の服装から着手しました。それまで私達の服装は、男女とも腰衣だけでした。』


『服装を変えるのはなかなか大変だと思うが…』


ーー『はい、当時まだ幼かった私にとってはそこまで違和感なく受け入れましたが、父のほうは受け入れるのに確かに時間がかかりました。そして集落でも反発はそれなりに大きかったが、最終的には先々代巫覡が受け取った「神託」に支持された形で落ち着いたと、母から聞きました。』


『神託をうまく利用したのか、神が助けたのか』


ーー『それについては私にはわかりませんが、母から聞いた話では、神託を偽造すると巫覡に天罰が下るので、恐らく神様が助けてくれたと思います。』


ーー『で、その後は、製造所を建造して、農具と武器の生産に着手しました。』


『確かにあの製造所のことは気になった、よくこんなの作ったなと』


ーー『はい、そのおかげで、私達は点在していた集落を中央集落に集めることが出来て、そして一人あたりの農耕範囲が広がりました。』


ーー『また、武器も少し前より良くなったので、敵対部族との衝突で命を落とす人数もだいぶ減らせました。武器が良くなったおかげで、私の夫のダネブも私と結婚する前に起きた部族戦争で運良く一命を取り留めました。先代の大長老には感謝でしかないです』


『それもとても良かった話だね』


ーー『そうですね。私はできればそういう衝突は起きてほしくないんですが、世の中はそんなうまくいく話でもないです。もっと前の大長老なんかは部族の衝突はこちらから仕掛けるべきだという人でしたが…』


『それも確かに、私も衝突はなるべく避けるべきだと思っている。しかしながら他の部族はそう思わないかもしれないので、であればここが攻撃されるときには然るべく反撃はするつもり。』


ーー『そうですね。もっと戦士たちの命を守れる防具、そして交渉力を持てば、最小限の犠牲に済みますね。夫も息子も今や戦士団の一員なので、母としてはやはり日頃心配するのです。』


『ダネブについては、今や戦闘力よりも指揮・統制力が重要で、前線に出る必要があんまりないし、ドバに関しては私の護衛なので、私が前線に出なければそこまで危険性はない。もちろん万が一は100%防げないが…』


ーー『あ、ナオ様に余計な心配をさせてしまったようですみません。私はお二人が重要な仕事についている事自体をとても誇っていますので、万が一が起きても私は既に心の準備ができているので、あんまり気になさらないでください。』


『わかった。しかし先代の大長老はなんで農具まで改良したのに、農耕に手を出さなかったのか逆に気になった。』


ーー『亡くなりましたからです。』


『!?』


ーー『先代の大長老は、製造所の稼働が開始してしばらく経ったときに、次のことをやりだそうとした矢先に、亡くなりました。』


『それって、病死とか老衰とか?』


ーー『詳しいことは私はわかりませんが、母から聞いたのは老衰でした。大長老はロッコに長く住んでいて、集落に戻って大長老についたのは、今の大長老の年齢よりも既に年が行っているころでした。』


『なるほど、しかし短い間でもこの集落を一変したね。』


ーー『はい、もしかしたら先代大長老の次の改良が農耕のことかもしれませんが…』


『イスル、今日の会議に、一緒に出てきてほしいんだ。農耕の改良、その続きを、私達がやるのだ。』



このままでは、この集落の人口は増えないし、いずれはまた集落を移動しないといけなくなる。なので、先代大長老がやろうとしたかもしれない農耕技術の改革を優先的に行いたい。そしてその舵取りは、すでに責任者であるイスル以上に適任なものはいない。


幸いこの時代の先住民族では「女は農業」の意識が強く、農耕の人手は女である。昨日行った製造所とレンガ窯は戦士団、つまり男性陣のリソースを使ったが、それとは別にある女性陣のリソースが使える。


ドバくんが私を実家に連れてくれなかったら、恐らく現状把握するまで私はもっと時間がかかったかもしれない。


ドバくん、ナイスプレイ!


後でたっぷりと褒めてあげよう。


初めての小説なので、

言い回し、誤字脱字、文法の誤り、表現の改善などがあれば、

感想や誤字報告に書いていただくととても助かります。

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