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会議が終わっても、初日はまだ続いた

戦士団の再配置、武器の視察、防衛資材の確認の依頼を出したあと、


大長老、長老そして戦士団長それぞれが指令を出し終わるのを待ち、会議を再開した。


軽く時計を見て、午後の4時頃か、ここに呼ばれたのは昼過ぎのはず、そして一度禁忌の地に行って帰ってきたので、禁忌の地での時間はノーカウントだとしても夕方頃になる。うーん、これから外交、経済産業、公共衛生と医療、交通、財務などを全部議論してしまうと明日になりそう。


私は別にこのまま続けても神の力の影響でおそらくというか絶対に疲れることはないが、大長老たちは違う。


なので、軍事に近い「外交」のことだけこの場で一緒に片付けて、今日の会議を一旦終わりにして、続きは明日にしよう。



『これからまだ色々について聞きたいところだが、皆も私を呼ぶためのこともあり連日疲れているはずだ。後2、3個の質問をして、今日の会議は一旦これで終わりにして、続きは明日にしよう。』


ー『お気遣いありがとうございます。承知しました。』



『まず、西のアソック族と南のダボー族を、なるべく早く訪れたい。そしてアソック族を訪れた際に、そのままロッコの港にも一度訪問したい。なので、早速日程調整を頼む。その後、ベジレン族に訪問する、こちらについては急いでいない。』


ー『承知しました。ではアソック族とロッコの港との連絡に関しては、西の長老、調整を頼む。そして南のダボー族に関して、南の長老、連絡をよろしく。』


ーー『今から早速アソック族とロッコの港に連絡係を派遣して調整してもらいます!』


ーー『我も今からダボー族に使いを伺わせて取り次ぎます。』


ー『西南の長老、ベジレン族との日程調整は、もう少し先でもいいので、先方と取り次ぎを』


ーー『承知しました。その際は私の方で事前に一度相手の都合を確認させていただき、訪問可能な日にちをご提示します。』



『大長老、北のミダッホへの訪問はまた考えるとして、他にまだ報告にない近隣部族は存在するのか?』


ー『今の所、密接に交流のある部族は他に特にございません。』



『分かった、あと、数日間会議が続くと思うが、終わり次第まずは各集落の視察をする。大長老、用意を事前に頼む』


ー『畏まりました。長老は今全員こちらに集まっているので、後ほどすぐに調整を行います。ちなみに順番的には北集落からのほうがよろしいでしょうか?』



『ああ、そうしてくれるとありがたい。私もできれば外敵がいる北から確認したいんだ。残りの順番は任せる。』


ー『承知しました。ではこちらので対応させていただきます。』



『礼を言う。とりあえず今日の会議はこれで終了する。続きは明日の昼過ぎに開始しよう。では、これから武器確認の案内を頼む。』


ー『はい、では戦士団長、案内を頼む』


ーー『承知しました。では神の代理人様、ご案内いたします。』



一旦会議を終了して、大長老と長老たちは、残りの指示と連絡を出すために集落の集会所に向かった。私は武器の確認が終わったあとに、集会所に行くことになった。合流してそこから大長老は私を粘土層へ案内する予定だ。


万が一武器の確認で時間が取られてしまったら、粘土層の確認は明日の午前中に回ることにしよう。



そして、戦士団長のダネブとその息子、戦士団長見習いのドバの案内で、武器庫にやってきた。



武器と防具などを検品したが、中堅部族だけあって、近接武器から遠距離武器がバランスよく一通り揃っている。これなら基本的な軍事力の心配はないのだ。


しかし、パーフェクトかと言うともちろんそうでもなく、やはり製鉄はできるけど、もう少し改良ができそうで、そして防具に関しては鉄など金属類の使用量は少なすぎた。おそらく製造量が限られて、とりあえず武器に優先的に使ったのだろう。



『一つ聞きたいんだ。防具にあんまり鉄を使っていないんだけど、これは軽さのほかに何か理由でもあったのか?』


ーー『はい、確かに軽さ以外、そもそも我々の製造量が足りないため、やむをえず防具における使用量を減らしているのです。』



本来ならまだ大量破壊兵器がないこの環境なら、兵士一人ひとりの命は軍事力においてはとても貴重なんだけど…うーん、防具を先に何とかしないとだめだ。



『なるほど、では製造所を案内してくれる?一度確認してみたいんだ』


ーー『はい、ではこちらへお願いします』



そして、ダネブ団長親子は私を連れて武器庫を出て、その裏から少し歩くと広場があった。


広場には、鉄器製造のための設備が、製銑、圧延、加工まで一通り揃っている。うん、これは一貫型製鉄所だな。この時代のこの場所でよくこんなのを作ったんだね。


製銑自体は古くからある木炭銑鉄の方法で行われている。多分そうだろうなと思って、製鉄のことは禁忌の地にいた時に少し勉強した。質を上げるには、この時代ではハン族だけがもつ石炭やコークスによる製鉄技術を早いうちに導入したい。


もしくは、ジッブン族からたたら吹きを導入してもいいが、とりあえず比較的に接触率の高いハン族のほうに頼もう。



恐らくこの製鉄所もそうだけど、今日この集落を見た感じ、私が推測した400年前の光景よりもだいぶ技術が進んでいる。住宅もそうだし、服装もそうだし、たぶんでもなんでもない、100%ハン族との接触による影響なのだ。


まあここからロッコまでそんなに離れていなかったから、必然じゃ必然である。

別に技術の進歩自体は悪いことではないし、むしろ「復興プロジェクト」のスケジュールが短縮できたから万々歳だ。



そして、製鉄技術の更新となれば、あと解決しなければならないのが原料となる鉄鉱石、燃料となる石炭か。



鉄鉱石は種類が様々だけど、基本的に世界中どこでも取れる。集落近くのハッケ山からも取れるし、海岸まで行けば比較的大量の磁鉄鉱が取れるので、とくに心配することはない。


しかし石炭は違う、このフォルサで取れる一番大きい石炭地層は、たしかに現代での調査によれば、この時代でいうミダッホより北のアタヤル族の分布地にある。ミダッホの領内でもないので、どうなるかはわからないし、現時点ではまだ考えないでおこう。



そうすると、頼りになるのが、このハッケ山を超えて、東側にある中小規模の石炭地層か。もしくは南にしばらく進み、フォルサ最長にして最大の川「ヒメオウ・チ・チュム川」を超えたところを東の山方向に進めば、中規模の石炭地層もあるはず。


地層が表面に露出すれば採取が一番楽だけど、そうじゃなければ、それはそれでまた大変な作業だ。とりあえず一番近いところはこのハッケ山の東側かな、であれば恐らく東側の敵対部族の活動範囲内にある。ますますその部族と何らかの方法で解決しないといけない。



まあ度々攻撃を受けているなら、平和的な交渉はもしかしたら無理かもね。私が一人で行けば神の力で守られているので、私がしたくなくてもたぶん私一人による一方的な虐殺に終わるだろう。もちろん無闇に人の命を奪うのはしたくない。


あと、たぶん大長老たち、戦士団長は必ず戦士でも同行させたいはず。となると今度は私が戦士の命を心配するので、結局交渉自体はうまくいかないだろう。残りの選択肢は戦争のみか…



まあ、とりあえず新しい設備の製造は時間がかかるので先に行うとして、今一番按配な方法は、やはりロッコの港まで行きそこでリタン氏と交渉することかな。大陸側はすでに石炭法を改良したコークス法で製鉄を行って久しいので、石炭と比べてもコークスを手に入れるのはそこまで難しくないはず。


ただ貿易という観点で考えると、逆にこちら側はどんなものを用意するかだね。高級なものとしては恐らく獣皮だろう。明日東の長老に聞いてみよう。



では、とりあえずこの広場の奥にはまだ広大な空き地があるようなので、現在の製造を止めないまま新しい製鉄設備を先に作ることができる。ついでにレンガの窯も作ろう。


「製鉄所・煉瓦工場の建設プロジェクト」というやることが決まれば、あとはそれをやってくれる人や資源がどのくらい必要で、どのぐらいかかるのか、どこまでやるかの、コスト・スケジュール、スコープの問題だ。


プロジェクトを回すこと自体は、院生になる前からさんざん教授にあれこれの研究プロジェクトを任されたので、規模が違うとはいえ、私のプロジェクトマネージャーとしての経歴は充分に活かせるはず。


今回はできればスケジュール重視なので、もちろん他のプロジェクトとの兼ね合いもあるが、最大限にリソースを投入したい。



『戦士団長、ここの製鉄所は、誰が管理しているのか?』


ーー『こちらにつきましては、我々戦士団が管理しています。こちらで働いている方のほとんどは予備団員を兼任しています。』


『こちらの製鉄所の奥に新しく製鉄所と、そしてレンガ工場を作りたいんだ、今の生産量を減らずに、こちらも作ることは現実的であるか?』


ーー『レンガとは何かは初耳ですが、恐らく問題ございません。現在は、割と休憩長めのシフトを組んでおりますので、簡単に調整できます。また、正規団員の一部をこちらに当てることも可能です。』


『分かった、作りたいものは明日までに指示を出すとして、それまでは今調整できる最大限の人員を集めて欲しいのだ。』


ーー『承知しました。いますぐ手配します。』



これで武器の視察が終わり、新たに製鉄所とレンガ工場を作ることにし、戦士団長親子は手配のために戦士団の集会所に戻るので、私と一旦ここで別れた。


私はこのまま大長老たちの集会所に向かうことに。


途中、戦士団長見習いのドバが数名の戦士を連れて、走って私のところにやってきた。



ーー『神の代理人様、団長からの命令で、私たちが護衛を担当することになりました。引き続きよろしくお願いいたします。』


『あ、なるほど。うん、よろしくね。ドバくん。』



ドバは、ダネブ団長がいないからか、明らかに先ほどより緊張している姿を見せた。この子は、見た目はまだ成人してそんなに経っていないようで、多分17、18ぐらいかな、身長はこの時代の男性平均で、私と同じく160前後か少しだけ高いぐらいかな。


団長見習いまで上り詰めたので相当強くて賢いはず、それなのにまだ子供っぽく緊張もするんだね。


ドバを見ると、どうしても我が家の賢くてかわいい弟のことを思い出す。力強くて、賢そうで頼りになるし、そして可愛さも相まって、なんとも微笑ましい。



『ドバくんは、おばあちゃんとお父さんの性格を受け継いでいるみたいだね、強くて賢くて頼もしいから。頼りにしているよ。』



そう伝えると、さらに緊張したのか、ドバくんは顔を真っ赤にして、私から目をそらしながら口を開いた。



ーー『こ、光栄でございます。か、神の代理人様のご期待に沿えるよう、じ、じ、尽力いたします。』



あ、かわいい〜。

11話現在の地図を掲載します。(右が北です)

これから物語が進むにつれ、地図の情報が追加されます〜

挿絵(By みてみん)


初めての小説なので、大事に育てていきます。

言い回し、誤字脱字、文法の誤り、表現の改善などがあれば感想や誤字報告に書いていただくととても助かります。

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