悪魔の棄却-2
「ここにつないでおけ」
俺は手足を縛られ、首は鎖でつながれ、地下の檻に閉じ込められた。
「災難だったな小僧。だが安心してくれ、私がお前の命に家畜よりかはましな価値を与えてやる」
「あの、なにがなんだかさっぱりなんですが」
「説明してやる暇はないし、お前が知る必要のないことだ。少ししたら戻ってくる。それまで神にでも祈っておくんだな。」
おっさんは衛兵を引き連れて地下牢から出ていった。いったいなんだってんだ。地面は固く冷たい。
何か危なげな薬品のにおいもするし、お世辞にも良い環境とは言えない。まあ、話を聞いている感じ俺はもうじき死ぬのだからもう関係のないことだろうが。
「大丈夫か?」
急に話しかけらえて顔を上げると、衛兵が檻の外に立ってこちらを見ていた。
「見ての通りだ」
「野暮なことをきいたな。おまえ、今自分がどういう状況に置かれているかわかるか?」
「いや、まったく。たぶんこの後殺されるんだろうとは思っているが」
「その通りだ」
「俺は一体何をされるんだ」
「うーむ...」
衛兵は少し悩んだ後、口を開けた。
「この世界は今、悪魔の侵攻により、存亡の危機に立たされている、ということになっている。」
「『ということになっている』って、まるでそれは建前で、本当は違うといいたげだな」
「その通り、悪魔の侵攻なんてない」
「ほう、面白くなってきた」
「実際はその逆、俺たち神の下僕、要するに人間側が悪魔の領土を奪い取ろうとしているのさ。建前は国民感情をたきつけるためのものだ。」
「なるほど。で、その話と俺の状況はどうつながるんだ」
「まあ待て。人間が今悪魔に侵略をしかけているんだが、脆弱な人間じゃ悪魔に歯が立たないんだ。生まれ持った身体能力が違うからな。だから悪魔に対抗するために悪魔について研究する必要がある。そういうわけで、お前はこれから研究されるというわけだ」
「俺が悪魔付きだといっていたが、そういうわけか。しかし、俺に悪魔がついているからといって、別に悪魔的な強さを発揮できているとは思えないのだが」
「ああ、この宮殿にはいろいろと神聖魔法がかかっているからな。悪魔にしたら呪いみたいなもんだ。そのせいで能力が出せないんだろうよ」
「となると、万事休すか?」
「そうなる」
「助けてくれよ」
「俺の立場も考えてくれ」
まあ助かるなんて無理な話か。俺は床に寝転んで土の天井を見上げる。
俺は何となく衛兵に毒づいた。
「しかし、俺にそんなことを教えてしまっていいのか。この話を持ち出してお前も道連れにできるぞ」
「わかっている。だが、なんだろうな。ちょっとした復讐心かもしれない」
「復讐心?」
「この国は腐っている。人類の救済という大義名分のもと無茶苦茶やって国民は苦しんでいる。俺もその一人だ。何が神の国だ。神に祈ったって誰も救ってはくれないじゃないか」
衛兵はいらつきげに壁を思いきり蹴る。どうやら相当恨んでいるらしい。下の立場ってのはどの時代も理不尽にあわされるんだろうな。まあ俺に至ってはもうすぐ殺されるらしいが。