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赤子峠

作者: エドゴン

【1.序章】


昔むかし、そのまた昔、ある小さな村に若い夫婦がおったそうな。旦那さんは力で奥さんを支配しようとする暴力の絶えない人でした。奥さんは旦那さんの暴力に耐えながら生活をしていました。


バシン!


奥さん「きゃぁ。」


旦那「俺のいうことを聞け!」


奥さん「ひえぇ。落ち着いてください。」


そんなやりとりが頻繁にありました。


そんな二人にもついに赤ちゃんができ、どういうわけか旦那さんの暴力は一時的に少なくなっていました。


赤ちゃん「おぎゃあ、おぎゃあ。」


奥さん「それそれそーれ。ベロンベロンばぁ。」


旦那「うるせぇぞ。泣き止ませろ!てめえが産んだんだろ。」


赤ちゃん「おぎゃあ、おぎゃあ。」


奥さん「それそれそーれ。ベロベロベローン」


旦那「本当にうるせぇな。」


バシン!


奥さん「きゃぁ。」


旦那「泣き止ませろと言っているだろ!いつまでそんなことをやっているんだ。うるせぇんだよ。」


奥さん「もう少しお待ちください。今すぐに泣き止ませますので。」


旦那「すぐに泣き止ませないとただじゃおかねぇからな!」


【2.赤子峠】


そんなある日。


赤ちゃん「おぎゃあ、おぎゃあ。」


奥さん「それそれそーれ。」


旦那「本当にしつこいな。もう許さん!何が赤ちゃんだ。うるせぇだけじゃねぇか。赤子峠に捨てて来い!」


奥さん「それだけはお許しください。私たちの子供ですよ。」


バシン!


奥さん「きゃぁ。」


旦那「口答えをするな!捨てて来いと言ったら捨てて来い。本当にうるせぇな。」


しぶしぶ、奥さんは赤ちゃんを背負って赤子峠に向かいました。そしてやっとの思いで赤子峠にやってきました。


奥さん「ここに赤ちゃんを置いていくの?私には無理。私には赤ちゃんは捨てられない。あの人を説得するしかない。」


奥さんは赤ちゃんを捨てられず、家へと引き返しました。


がらん。


旦那「どうだ?捨ててきたか?」


奥さん「やっぱり私には無理。捨てられませんでした。」


旦那「何をしているこのクソ女が。」


バシン!


奥さん「きゃぁ。」


旦那「仕方がない。俺が捨ててくる。よこせ。」


奥さん「お待ちください。」


旦那は奥さんの静止を無視して赤子峠に向けて出発しました。そして赤子峠に着きました。


旦那「ここが赤子峠か。いらなくなった赤ちゃんを捨てる場所だ。ではさっそく。」


旦那は赤ちゃんを岩影に置いてしまいました。


旦那「これで静かになるな。本当にうるせぇやつだ。二度と子供なんか作らねぇ。」


赤ちゃん「おぎゃあ、おぎゃあ。」


旦那は赤ちゃんが泣いているのも無視をして家へと帰っていきました。


【3.幻聴が聞こえる】


旦那「帰ったぞ。今日はお祝いだ。」


奥さんはショックでした。我が子が赤子峠に捨てられたわけですから。


祝酒も終わり眠りについた旦那でしたが・・・


赤ちゃん「おぎゃあ、おぎゃあ。」


旦那「な、なんだ?おい、赤ちゃんを連れ帰ったのか!許さんぞ!」


バシン!


奥さん「きゃぁ。」


奥さん「赤ちゃんなんて連れ帰っていません。どこに捨てたのかも分からないのに連れ帰れません。」


赤ちゃん「おぎゃあ、おぎゃあ。」


旦那「こっちか!あれ?いない。トイレだな。あれ?おかしい、どこにもいないぞ。」


赤ちゃん「おぎゃあ、おぎゃあ。」


旦那「どこに隠したんだ?おい答えろ!」


奥さん「連れ帰っていません。」


旦那「嘘をつくな!」


バシン!


奥さん「きゃぁ。」


赤ちゃん「おぎゃあ、おぎゃあ。」


旦那「うるさい、うるさい。泣くんじゃない。どこだ?どこにもいない。」


赤ちゃん「おぎゃあ、おぎゃあ。」


旦那「まるで頭の中に響いてくるような感じだ。」


奥さん「赤ちゃんを赤子峠に捨てたりするからバチが当たったんですよ。」


赤ちゃん「おぎゃあ、おぎゃあ、おぎゃあ、おぎゃあ、おぎゃあ。」


旦那「うるさい!うるさい!うるさい!もう許さん。」


【4.冷静さを失った旦那】


奥さん「落ち着いてください。赤ちゃんは赤子峠に捨ててきたのでしょう。」


旦那「よくも俺をコケにしてくれたな。隠し場所を教えろ。」


奥さん「連れてきてなんていません。赤ちゃんの鳴き声なんて聞こえません。」


旦那「嘘つけ。よ〜しこうなったら家に火をつけて炙り出してやる。」


奥さん「どうか冷静に。火を付けたりしたら大変なことになります。」


旦那「うるさい、どけ!」


旦那は火を放ちました。奥さんは慌てて消そうとしましたが火の勢いは凄まじく、消すことはできません。


旦那「さあどこに赤ちゃんを隠したんだ?連れてこい!」


奥さんはもう無理だと悟り家の外に逃げました。旦那もついて行くように家の外に出ました。


家が燃えていきます。奥さんは落胆しました。


赤ちゃん「おぎゃあ、おぎゃあ。」


旦那「なんだ?どこから聞こえたんだ?ぐおおぉぉ!てめぇ、俺をコケにしてくれたな。どこに隠したんだ!」


バシン!バシン!バシン!


奥さん「きゃぁ。」


近所のものたちが暴れる旦那を取り押さえました。


旦那「赤ちゃんが、赤ちゃんが。」


奥さん「あなたが赤子峠に赤ちゃんを捨てたからですよ。」


近所の老婆「赤子峠じゃと?」


奥さん「おばあちゃん!」


近所の老婆「赤子峠に赤ちゃんを捨ててきたのか。可哀想なことをしたのう。赤子峠には恐ろしい獣が出ると言われておる。きっとその赤ちゃんは獣に食われたのじゃろう。赤ちゃんの怨念が旦那さんに幻聴を聴かせておるのじゃ。もっと生きたかったとな。」


赤子峠に赤ちゃんを捨てるとその家庭は不幸に見舞われるという噂があっという間に村中に広まった。旦那はその後も幻聴に苦しめられ、狂ったように死んでいったそうな。

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