八話
「充分です!今は只、それだけで…!」
ソフィアはホオズキを優しく抱き寄せる。
その時、物音がした。
ダッダッダッダッダッダ…
誰かがこちらにやって来る。
ソフィアとホオズキは慌てて立ち上がった。
ドアが開く────
「大丈夫?!師範の部屋から凄い音が聞こえたけど…」
ランドルーフだ。
この展開は初めてだ!…と歓喜すると同時にソフィアは焦った、ホオズキがすぐ横にいるのである。
傍にいるホオズキを見て、ランドルーフは不思議そうな顔で言った。
「……なんでホオズキさんがここにいるんですか?」
当然の疑問である。
ちなみに、残念だがソフィアはとてつもなく嘘が下手だ。
どんな馬鹿でも、ソフィアの顔を見れば嘘を一瞬で見破れるだろう。
咄嗟の起点は利くタイプだが、嘘は専門外なのだ。
黙っているソフィアを見て、ホオズキは呆れたのか口を開く。
「悪かったですって、機嫌直してくださいよ。ねぇ?」
ホオズキは悪戯っぽい顔で先生に話しかけた。
ちなみに、ホオズキは嘘どころか、人を騙すのが大得意である。
「貴殿らの仰る"師範"とやらに興味がありまして、毒針を打ったり…実験しようとしたのですけれど。見てくださいよこのカーペットの血とこの腕を!背後から近づいたら返り討ち……蘇生はしてくれましたけど、剣が強力過ぎてまだ傷跡が!………で、ラドルファス殿ですか?それともランドルーフ殿?」
ホオズキは演技も天才的だ。
彼は不気味な笑みを浮かべる。
「ランドルーフですよホオズキさん…それに、相変わらず考えることは変わらないようで……災難だったね、師範。」
ランドルーフは、呆れ返ったが信じたようだ。
ランドルーフは続ける。
「ホオズキさんも師範も早くして、もう歓迎会始まる。ボクと一緒に行こう?」
「はい、喜んで。」
ホオズキは返事をした。
彼とは対象的に、ソフィアは黙ったまま頷く。
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パーティールームには、既に全員が揃っていた。
長いテーブルに、高そうな椅子が左右に二個ずつ並び、奥に一つ椅子がある。
「師範!ね…いや、ホオズキ…さんも一緒?!っていうか、遅ぇよルーフ!!」
しびれを切らしたラドルファスの一言。
「ごめん…ファス兄。」
ランドルーフは、分かりやすくしゅんとした。
感情が高ぶったのか、右腕と爪が獣化している。
獣化するのを見て、使用人たちは震え出した。
「では、私たちはこれで…」
使用人たちは足早に去っていく。
ソフィアはそれに少しイラつき、舌打ちをした。
帝国の人間ですら、獣を嫌うのか。
ホオズキはソフィアの顔を見つめた。
そして、向かい側の少女に頭を下げる。
ソフィアはホオズキの視線の先が気になり、向かい側を見た。
そこに飛び込んできたのは、見知った顔。
ソフィアが、かつて救い、殺した者がそこに居た。
「ようやく主役の登場?」
チリチリとしたくせっ毛の白髪に青い目、そばかすが印象的である。
彼女は、イザベラだ。
「さっさと支度をして貰えるかしら、剣聖様?」
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