四話
────────動けない?!
ソフィアは一瞬そう思った。
しかし、今は普通に動ける。
……気のせいだったのだろうか。
「ふふふ…ふふふふふ。」
後ろから声がした。
ソフィアは慌てて声のした方を振り返り、剣を構える。
そこには、知っている顔があった。
「ドアに鍵くらいかけておくことをお勧めしますよ…不用心ですねぇ。」
少し長めの黒い髪に、鬼灯と秋桜の装飾品が光った。
顔を含めかなりの美形で、全体的に背が高い。
目は切れ長だが、まつ毛が長くぱっちりとしている。
この橙色の正装、琥珀の集落に伝わるものだ。
間違いなく、彼は──────
「初めまして、私は"紅葉鬼灯"と申します。」
やはり、ホオズキだったか。
久しぶりに見た彼は、少し幼く感じた。
「おっと失礼…こちらでは、ホオズキ・コウヨウと名乗るべきでしたか?すみません、現国主義者でしてね。」
ソフィアはやっと気づく。
今までにこんな展開があっただろうか。
そういえば、ここの場面で着るのは王国の正装だったはずだ。
ソフィアは想定外の展開で混乱している。
何故、集落の正装が?!
何故、急に動けなくなった?!
何故、ホオズキがこんなところに?!
必死に物事を整理するソフィアに、ホオズキは言った。
「貴殿には体が硬直する毒針をうっても、あまり効果がないようですね。残念残念。」
何故か、彼はとても嬉しそうだ。
「あぁ、そろそろ本題に入りますか?」
ホオズキは不気味な笑みを浮かべながら喋る。
ソフィアはバクバクなっている心臓を心の中で押さえつけた。
ソフィアが口を開く。
「本題とは、何だ?」
彼のその問いをきくと、ホオズキは真顔になる。
「その服を、今すぐ別の物に。」
彼はまたすぐに笑みを見せた。
しかし、目が笑っていない。
殺意すら感じられる目だ。
ソフィアは、彼が何故このような目をするのか、知っている。
前、彼との人生を歩んだ時に、彼から教えてもらったのだ。
ソフィアは知っていたが、彼に聞く。
「何故この服ではいけないんだ?」
…ホオズキは、言った。
「その服を着ると、父上が生き長らえてしまいますから。」
彼は先程とは比べ物にならない程に殺意を放っていた。
------------
セーブが完了しました!
タイトルに戻りますか?
→はい いいえ
------------