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一話

------------


あなたの姿を選んでください


→男性 女性 その他


------------


------------


あなたの名前を選んでください


→ソフィア


------------


------------


デフォルトネームのままで

よろしいですか?


→はい いいえ


------------


ゲームを開始します。




ベッドから起き上がる。

さっきまでの悪夢が嘘のようだった。

こんどこそ俺は、皆を幸せにしなくてはならない。

ソフィアがそう心に誓うと、母親が部屋に入ってくる。


「大変よ、大変よ!ビッグニュース!」


母親は手紙を三つ持っている。

その中身を、ソフィアは知っていた。


「あの王様と、皇帝と、リーダーから!!お子様を指導して欲しいんですって!」


ここまでは、前と同じ流れ。

勝負はここからだ。


「あの三国を支える御三方が…あなたにプロポーズ?!言ってきなよー!お母さんがチケット買ってきてあげるから!行きたい所にお手紙書いておきなさいね!泊まり込みの用意も!」


母親はとても嬉しそうだ。

この笑顔を見るのはいつぶりか。

ソフィアから自然と笑みが零れる。


------------


→分かった


別にプロポーズでは…


------------


ソフィアがそういうと、母親は頷き、リビングに戻った。

誇らしげな母親を見ると、彼も嬉しくなる。


「(よし、ここからが本番だ。)」


気合いを入れて、手紙を書く。

前回も前々回も、王国に手紙を書いた。

もっと前は別の所にも手紙を書いたことがあり、これらを何回も何回も繰り返している。

それでも彼がこれを繰り返すのには、訳がある。


それは、皆が幸せになれる世の中を作る為。


その為に何度も頑張っているのだ。

しかし、何度やっても終わり方は三つしかない。

彼は、今度こそ世界を救うと誓う。


王国には、かつて一番足を運んだ。

三国の間でも、一番影響力があるからである。

しかし、何度やっても少しと変わらない。

ここは少し心を変えて、ソフィアは帝国に行こうと決心した。


------------


だれに手紙を書きますか?


 王様 →皇帝 リーダー


------------


筆を走らせ、手紙を書いて鳩に渡すと、ソフィアは支度を始める。

帝国に行きたいと伝えると、母親も帝国行きのチケットを購入してくれた。


先程敵として殺した彼に、今度は師範として会いに行く。





次の日


母親に見送られ、帝国行きの電車に乗りに駅へ向かう。

ソフィアはとても強い剣聖なので、そこそこの有名人だ。


「行ってらっしゃい、頑張ってね!」


母親のその一言に黙って頷くと、ソフィアは走り出した。

キャリーバッグには、最低限の着替えや道具、大好きな本や魔導書に、愛剣サンディも入っている。

今日は生ぬるい空気だが、風があるのでなんだか気持ちいい。


ソフィアがご機嫌で走っていると、待ち人が声を掛けてくる。


「あんた、電車の乗り方わかるかい?」


------------


電車について聞きますか?


 はい →いいえ


------------


この人は、最初にここを通ると毎回声を掛けてくる。

何でかはよく知らない。


駅に着くと、係員にチケットを渡して電車に乗った。

帝国に行くには一晩かかるので、ソフィアは本を少し読むと、寝てしまった。


━━━━━━━━━━━━━━


ソフィアが起きてカーテンを開けると、窓の外は帝国だった。

最初はホームシックになっていたりしたが、もう慣れた。

だが、あればっかりは慣れない───


駅に着いた。

皇帝の住まう、フィロソフィー城を目指して帝国内を進む。

城に近づくにつれ、体が震えだす。

吐き気も出てくる、震えが止まらない。

寒い、怖い、嫌だ。


ソフィアは、彼らに会うのを恐れている。

厳密には、ソフィアの身体が拒否している。

彼は、優しすぎるが故に毎回こうなってしまうのだ。


震えながらも城にたどり着き、使用人に挨拶をすると、ノックをしてドアを開ける。

皇帝が玉座から立ち上がり、こちらへと向かってくる。

結構な年だったはずだ。


「宜しくお願いします、剣聖様。

うちのバカ息子二人をどうかよろしく頼みます。庭にいるんで、声をかけてやってください。」


ソフィアはぺこりと頭をさげると、庭に出た。

すぐに、漫画を読んでいる同じ座高の兄弟が目に入る。

ソフィアは、ごくりと唾を飲み込んだ。


前回は、二人を───


首を横に振って心を落ち着かせると、意を決して、二人に声をかける。


------------


→今日からよろしくね


 俺は新世界の神なんだ


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兄弟は、二人同時に振り返った。

彼らは、ソフィアを見つめている。


「アンタが、師範とやらか?」

「オマエが、師範とやらか?」


二人が同時に口を開く。

彼らは見た目も何もかもがそっくりな双子である。

黒っぽい、お揃いのジャージだ。

端正な顔立ちに、赤みがかった金髪。

中性的な声もそっくりで、正直なところちゃんと見ても見分けがつかない。


一方、ソフィアは動悸がしていた。

汗がだらだらと頬をつたう。

いつになっても、最初だけは慣れないものだ。


「オレはラドルファス、アンタの名前は?」

「ボクはランドルーフ、オマエの名前は?」


双子の笑顔と、無垢な視線に、耐えられない。


「お、俺の名前は──」


バタッ


ソフィアは倒れてしまった。

かつて殺した二人のの無垢な視線が、突き刺さったのだ。

……ここで彼が倒れたのは何度目だろうか。

ラドルファスが声をかける。


「お、おい!アンタ!」


「ボク、使用人をよんでくる。」


「サンキュな、ルーフ。」


ランドルーフは使用人を呼びに城内へと走っていった。

兄弟達は協力して、ソフィアを休ませようとしているようだ。

ラドルファスが、ソフィアを見て口を開く。


「アンタ、顔が真っ青じゃねぇか…」


「はぁ…あぁ…まただ、大丈夫…なのに…」


とても悲しそうな顔で見つめられ、ソフィアは苦しみながらも涙を零した。

次は上手くいくはずなのに、怖い。

やり直すたびに知識や剣、魔法の腕は上がるものの、身体がとても弱っている気がするのだ。


でも、この双子は間違いなく今、生きている。

そう思うと、不安で安堵で涙が零れてきたのだ。

ラドルファスは、そんな彼を不思議そうに見つめ、言った。


「なんでアンタは、泣いてるんだ?」


ソフィアは、酷く悲しかった。

前回、ラドルファスとランドルーフが合体して、自ら獣となり襲いかかったことを彼は知らないのだ。

その兄弟二人をソフィア自ら殺して、それによって王女であるイザベラが酷く悲しんだことも───


だが、同時に嬉しかった。

彼らは辛さを知らない。

まだやり直せるのだ。


次こそ、次こそは。


ラドルファスもランドルーフも。

イザベラも、ホオズキも。

そして、敵勢力の彼らも救う───


ソフィアは、安心に包まれて眠った。


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セーブが完了しました!

タイトルに戻りますか?


→はい いいえ


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