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五話 受け継いだ者4-2

 最初は、ただダンスができる女の子になれれば格好良いと思って始めたのだが、今では本気でやりたいことになっていた。野球部やサッカー部よりもきついトレーニングメニューも中にあり、顧問の女性教師もかなり厳しい。普段は汗だくになって、発表時以外は思っていたよりも格好良い女の子にはなれない。

 それでも、瑠奈はダンスが好きになっていた。

 選ばれたい。


(集中……!)


 心の中ではそう唱えているのに、リズムが頭に入ってこない。


(マジでなんなのよ……)


 イライラしたまま、部活動の終了チャイムが鳴った。

 緑川が部員の収集をかける。


「はい! 今日の練習はここまで。文化祭のメンバー決めだけど、来週にはやるからね。各自、悔いがな

いように、毎日自分に足りないとこを見付けて練習を重ねること。みんな、良いパフォーマンスができるんだから、良いところは自分でしっかり信じてあげてね」

「はい!」

「あと、なるべく一人で帰らないこと。じゃ、お疲れ様でした」

「はい! お疲れ様でした!」


 三十人以上いる生徒の声が重なり、部活は終了した。

 瑠奈が汗を拭いていると、緑川から声が「平井」とかかった。


「今日はどうしたの?」

「え……あ、すいません。集中していなくて……」

「だよね。でも、いろんなことがあるから、そこはいいよ。集中できない時もある。でも、なんだか平井の表情が、楽しくなさそうだったから……いつもだったら、練習でも生き生きとしてるのに、何かを睨んでるみたいな顔だった」


 緑川の言葉に、瑠奈は目を逸らす。


「いつもニコニコしてろってことじゃない。でも、私はダンスをしている時の平井の表情が好きだから気になったの。ダンスのことだけじゃなくて、他にも何かあったら、私でもいいし、誰かに相談しなさいね」

「……はい、ありがとうございます」


 緑川からのアドバイスに、瑠奈はやっとの思いで答えた。

 友達の嶋谷香帆と渡辺多佳子からこの後ファミレスに行こうと誘われたが、瑠奈は断った。一人になりたかった。


「途中まで一緒に行くよ」

「ファミレスと反対だからいいよ」

「でも、今は危ないし」


 香帆が心配そうな顔をした。多佳子も、頷いている。

 しかし、瑠奈は「大丈夫だよ」とうんざりした表情で答えた。


「あたしの通るとこ、人も多いし、遠いわけじゃないしさ。また明日ね」

「う、うん」

「また明日ね、瑠奈」


 二人のか細い挨拶を背に受け、瑠奈は更衣室を出た。

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