四話 呼ぶ山10-1
夜は、外でバーベキューだった。
夜と言っても、夏場だから陽はまだ高く、空は薄っすら茜色になる程度だった。だが、昼間よりは各段に涼しい。
美優紀の体力はすっかり戻り、華子と直也にお肉と野菜を取り分けてくれた。
炭火で焼いたお肉は格別で、近くの道の駅で購入した新鮮な野菜はどれも甘くて、子ども達は驚いた。
華子にとっては、友達とバーベキューをすること自体はじめてで、楽しいあまりに終始これは夢ではないかと疑うほどだった。
直也の釣った魚も、塩焼きにした。
ジュウジュウと魚の焼ける音に、まだまだ鳴き足りないのか蝉の声が重なる。
山に夏が戻ってきていた。
「ハナ姉ちゃん、ぼくが釣った魚、おいしい?」
「うん、すっごく美味しい! 直君、ありがとう!」
「ごめんね、私があんなことにならなかったら、ハナちゃんも釣りができたのに……」
「気にしないでください、美優紀さん」
美優紀はまだお昼のことを気にしているようで、時折申し訳なさそうな顔をする。
が、華子はその度に笑顔で返した。
お腹も満たされて、釣り具屋から差し入れの花火をすることになった。
直也は大喜びだ。
「花火だ! 花火!」
打ち上げタイプの花火を、照が庭の真ん中に置く姿を大はしゃぎで見ている。
「ちょっ、直! 危ないから下がって」
「はぁい!」
元気いっぱいに返事をした直也は、華子や美優紀の所に戻ってきては、また照の方へと走る。
まるで、子犬のようだった。
息子が周りを走り回り、なかなか火を点けらない照は、仁王立ちした。
「おまえはぁ……言うことを聞かない子は、こうだぞ!」
「あはははッ! お父さん、くすぐったい!」
いつの間にか、花火を見るというより、直也と照の追いかけっこを見る気分で、華子も笑った。
美優紀も苦笑していた。
「まったく、男の人は子どもに戻るのが早いわね。ハナちゃん、私達は線香花火でもしましょうか」
線香花火の束から、丁寧に一本取った美優紀は、それを華子へと渡す。華子が受け取ると、袋に付いていた小さなロウソクにマッチで火を点ける。一瞬だけ、美優紀の柔らかな表情が照らし出された。
「はい、ハナちゃん。どうぞ」
「ありがとうございます」
ジュッという小さな点火音に、チリチリと仄かな火花が散っていく。
華子の前で、美優紀もまた線香花火に火を点けた。
二つの小さな灯が、チリチリパチパチと微かな音を立てる。




