四話 呼ぶ山9-1
(あの白い子達や、花子やユウカのこと……もしかして、美優紀さんは気付いてる……?)
「私はきっと運が良かったんです」
美優紀の声が聞こえた。
「捜してくださり、ありがとうございます」
男の嗚咽が聞こえてきた。
今まで黙っていた秘密を打ち明け、安堵したのかもしれない。
そこに美優紀の優しさが染みたのだろう。
釣り具屋を後にして、華子達はログハウスに戻った。
直也が大喜びで美優紀に抱き付き、大泣きした。
美優紀もまた息子を抱き締めて、涙を流していた。
二人の姿を見て、華子はやっと美優紀が戻ってきたことに心の底から安心した。
「ハナ姉ちゃん、今回も本当にありがとう!」
お礼の言葉と共に、直也に腰の辺りをぎゅっと抱き締められた。
「へっ⁉ えっ、いやっ……わたしは何も……」
「本当にありがとう、ハナちゃん」
照と美優紀が頭を下げていた。
華子は狼狽してしまった。顔が熱い。
「ほっ、本当に何もしてないので……大丈夫です!」
何が大丈夫なのかは分からないが、つい口からその言葉が飛び出していた。
美優紀が、直也と一緒に華子を抱き締める。
「大丈夫じゃないわ。だって、あんな所まで助けに来てくれるなんて、すごく勇気のいることよ」
(美優紀さんの方が、大変な目に遭ったのに……)
優しい香りが華子を包み込む。
さっきとは違う安堵が、心から溢れてくる。それが、頬に伝う。
華子は慌てて手の甲でそれを拭った。
「あ、……あれ?」
「ハナ姉ちゃん、こわかったの? 大丈夫だよ!」
直也がさらにぎゅっと華子を抱き締めた。
直也の温かさに、涙がさらに溢れた。
大きな手が、華子の頭を撫でた。照だった。
「ハナちゃんはすごいよ。本当に、ありがとう」
感謝されることが恥ずかしかった。
(こんなわたしでも、役に立てたのかな)
同時に、心の中が満たされていく感覚がした。
慣れてしまっていた寂しさに気付いた。それが徐々にだが癒されていく。
しばらく、直也と美優紀に抱き締められて、華子は泣いた。照がそれを見守っていた。
ふと、花子のことを思い出した。
(花子……どこ行っちゃったの?)
また、寂しくなる。
でも、花子の気配は戻ってこなかった。




