一話 呪われた彫刻4-1
空は相変わらず真っ黒だった。雨が降ったり止んだりで、湿った空気が町を押し潰しそうだった。
そんな中でも、直也はワクワクしていた。
昨日は図工がなかったから、あれを見ることができなかったが、今日は――
(呪われた彫刻が見られるぞ!)
こんなに学校へ行くことが楽しみなのは、はじめてだった。
それに、昨日の朝、話しかけたお姉ちゃん。彼女は華子と名乗った。
直也が、『トイレのはなこさんと同じだね!』と言えば、華子は『漢字が違うんだよ』と教えてくれた。
実は、毎朝すれ違っているお姉ちゃんだったが、ずっと浮かない顔をして、まるで自分自身が呪われているような雰囲気を出しているから、正直少し怖い人なのかと思っていた。
それでも、勇気を出して話しかけた。
直也は、彼女が何か知っていることを感じたからだ。
実際は昨日何も聞けなかったが、呪われた彫刻のことを知っているに違いない。
今日こそは聞くつもりだった。
が、なぜか今日に限って、彼女は通学路にいなかった。
「どうしちゃったんだろう?」
少しだけ待ってみたが、結局華子が通ることはなかった。
雨が降ってきた。直也にとっては少し大きい黄色い傘を差す。
(やっと怪談話ができる人と会えたのに……)
直也は肩を落として、学校へと向かった。
でも、楽しみにしている時間はすぐにやってくる。
そう、ついに見られるのだ――呪われた彫刻。
もちろん、先生達はそんなことを言わない。
この噂が広まったのは、その彫刻がこの小学校へ持ち込まれた次の日だった。
他の学年が図工室で授業していた時に、体調不良の児童が続出したのだ。症状の軽い子は、頭痛を訴えるだけだったが、酷い子は吐き気と眩暈で立っていられないほどだった。
図工室が、家庭科室の隣だったため、部屋にガスが充満していると思った先生達はすぐさま換気し、その日は図工室を立ち入り禁止にした。
が、それからも、図工室に近寄ると体調不良を訴える児童がいた。先生達は、図工室のせいではないと言ったが、明らかにあの日から学校全体が変なのだ。
そうなると、もうこれはあの彫刻に何かあるのだろう、と子ども達の間で噂になった。変な人影を見た、彫刻が動いていた、呻き声がする、など。本当のことのように、彫刻の噂が口から耳へと渡り歩いた。
直也もそれを聞いた一人だ。
しかし、直也ほどこの彫刻を見たいと思っている児童はいないだろう。他のクラスメイトは、「怖いね」「本当かな?」と言いながらも、結局次の瞬間には別の話をしている。




