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四話 呼ぶ山8-2

 白い子どものような姿だった。一体、また一体とどこからともなく現れ、最終的に十体ほどとなっていた。

 しかし、異様に頭が大きい。そして、そこに顔はなかった。

 ようやく歩き出した幼児のようによたよたとしているが、まるで美優紀が見えているかのように彼女へと真っ直ぐ手を伸ばし、体に縋った。


「ちょっ……! 美優紀さんに何すんのよ⁉」


 華子が叫ぶと、白い子ども達は顔のない顔をばッと一斉にこちらへ向けた。その中には首の曲がり方がおかしい者もいた。


「ひッ……」


 華子は恐怖からその場に立ち竦んでしまった。

 さっきまでよたよたと歩いていた十体のそれらは、しばらく華子を見詰めていたが、急に四つん這いとなり、ものすごい速さで向かってきた。


「いッ……いやぁ!」


 声は出るが、体は全く動かない。

 向かってくる、もう子どもとは呼べない白い物体達に、華子ができることは慄くだけだった。

 が、すっと赤いワンピースが揺れる。


『捨て駒をいくら放とうが無駄よ』


 鳥居を潜り、こちらへ飛びかかる白い物体を、花子は腕の一振りですべて破裂させる。


「す……すごい……」


 今までも花子の力を見ていたつもりだったが、これだけたくさんの相手を一気に退ける姿は華子も初めて見た。

 弾けたそれらは白い花びらのようにひらひらと舞った。

 甘い香りが辺りを包み込む。


「この、香り……」


 ユウカと同じものだった。


「まさか、ユウカが……?」

『いいえ、彼じゃない』


 そこで花子が初めて反論した。


『彼は、止めようとしているのよ。それよりもハナ、集中して。どこかに本体がいるはず』

「本体?」


 花子の言葉に、華子は鳥居の奥を見る。

 直感的に、そこだと思った

 美優紀の横たわる奥は、白い靄のようなものがかかっていて、よく見えなかった。

 が、必死に目を凝らせば、そこに小さな祠のようなシルエットが浮かんでいた。


「あっ、あれ!」


 華子が指を指せば、体がビクッと震えた。


(え……?)


 声が聞こえた。

 子どもの声が重なっているような音だった。



 サミシイ……さみしい……

 寂しいよ……

 こっちにおいでよ……

 サミシイ……サミシイ……



 それは段々と様々な声質となり、華子を誘う。



 こっちへオイデよ……

 さみしいんだろう?



 それは、とても優しく聞こえた。

 不気味なはずなのに、妙に心地良い。

 この森に入った時の違和感に似ていた。


(寂しい……うん、いつも、どっか寂しいのかも……)


 恐怖とは別の怖れが、華子の中に湧き上がる。

 それは、独りぼっちになる時のどうしようもない不安や抗えない疲労に似ていた。

 学校へ行った時の疎外感に似ていた。

 家に帰った時、家族がいなかった時の心細さにも似ている。

 自分の住む場所にはたくさんの人が存在しているのに、自分のどこにも居場所がない。

 作ろうとして、藻掻いて、抗って、ふと思うのだ。


(寂しいことに……なんだか、疲れちゃってた……)


 でも、目の前にそれを許してくれる者がいる。迎えてくれる者がいる。


(ここなら、もう独りだって思わなくてもいいのかな……)

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