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一話 呪われた彫刻3-3

『学校にはルールがあるって言ったの、やっぱ理解してないみたいね。あたしの学校で好き勝手すんじゃねぇよ』


 青白い炎の玉達が照らし出す。窓の外の激しい雨と、廊下を進んでくる者達をくっきりと華子に見せた。


「ひっ……!」


 華子は慄いた。


 それは、顔、顔――顔。苦痛に歪む、複数の顔だった。が、それはボコボコと生まれては消え、また現れる。どれが本体なのか分からなかった。


『ったく、あれに一体どんだけ詰まってんだ?』


 ぶわりと一斉に青白い炎の玉が、顔を目がけて飛んでいく。ぶつかり合った瞬間、微かだった呻き声が金切り声になり消滅していった。


「ッぃ……耳が痛い」


 華子は思わず耳を塞ぐ。それを嘲笑うかのように、それは耳から、肌から染み込んでくる。

 言葉として意味のない金切り声なのだが、頭と胸の内側を抉られるような感覚がした。


『っんと、質が悪いわ』


 花子が憎々し気に言った。


『生がそんなに疎ましいか? 生きていた頃を忘れた者達よ』


 花子の問いに答える顔はいなかった。

 やがて、青白い炎に焼かれ、顔達は消えた。

 華子も、やっと鋭い痛みから解放される。

 小雨になっていることに気が付いた。


「……き、消えた……いなくなったの?」

『いや、あれはまだ一部よ』

「一部⁉」

『ええ。あれの中には、まだまだいる。だから、厄介なの』


 花子が振り返る。

 いつももなく、硬い表情だった。


『彫刻が壊れれば、あれらが一斉に飛び出してくる。けど、その彫刻が元凶でもあんの』

「出てくるのを倒してもキリがなくて、彫刻を壊してもいけないってこと?」

『壊した瞬間、学校どころか、この町全体にやつらが散らばることになる。徐々に削っていくしかないか』


 華子は、そこでようやく合点がいった。

 花子が疲れている理由は、彫刻がこの小学校に持ち込まれて以来、ずっとあの顔達を消し続けているからだ。

 さすがの花子も、力を使い過ぎているのだろう。


「花子……大丈夫?」

『あぁ、あたしの学校にいる限りは、死人は出さない』

「違うよ、花子が」

『え?』


 花子が一瞬キョトンとする。

 が、次の瞬間、笑った。それは、綺麗に――


『ハナ、あたしを誰だと思ってんのよ? サイキョーの学校お化けよ。そこら辺の輩と一緒にしてもらっちゃ困るわ』


 腰に手を当て、ふんぞり返る花子に、華子も釣られて笑う。

 ――と、まさかの落雷。


『さすが花子さぁん!』

『我らが花子さぁん!』

『ファンですぅ花子さぁん!』

「…………」


 花子の背後に現れた学校のお化け達が、稲光に浮かび上がる。その個性豊かで不気味な顔ぶれに、華子は――


「ぎゃあああぁ!」


 落雷に負けない絶叫だった。

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