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四話 呼ぶ山3-4

「本来なら、ハナちゃんが入院している時、お見舞いへ行くべきだった。本当はもっとはやくにお礼とお詫びを伝えなければならなかったんだけど……」

「ほんと、もう大丈夫ですし、あの時、照さんは出張でお忙しかったって聞いてますからっ……」

『息子と奥さんが大変な目に遭ってる時に、出張ねぇ。仕事が忙しいのね』

「花子! そんなこと……」

「耳が痛いよ。花子さんはいつも本当のことしか言わないな」

『あたしは事実しか言わない。現に、休みも取り辛いんでしょ。本当のことは、照が勝手に決めてるだけ』


 痛みを堪えるような照の表情に、花子の幼い顔が向き合っていた。


「……なんでここにいるんだ? 花子さん」


 華子が当初抱いていた、そしてすっかり忘れていた疑問を、照は口にした。

 花子の半透明で、どこか遠くを見据えるような瞳を華子は不安げに見詰めた。


「君は、小学校から動けないはずだ。なのに、どうしてここまで来られた?」


 花子はただ照を見ていた。


「なぜ、ここに来たんだ? ハナちゃんに取り憑いてここまで来られたのか? ……いや、違うな。そうすれば、俺よりも力の強いハナちゃんが気付かないはずがない。どうやって?」


 確かに、途中トイレに立ち寄ったあのサービスエリアまで、花子の存在に気付かなかった。

 大切な親友の気配に気付けないわけがない。

 幽霊やお化けという存在でも、できないことがあると、花子本人が言っていた。特定の場所から移動することができる者もいれば、できない者もいる。花子は後者のはずだった。

 華子の鼓動が急にドギドキと胸を蹴り、冷や汗がじわじわと背に伝う。換気をしているはずなのに、ちっとも妙な熱気は消えない。


「花子さん」


 照が、彼女を呼んだ。

 華子は、ねっとりとした何かを頬に感じた気がした。

 さっきまでの蝉の大合唱が、急に聞こえなくなった。


「花子さん! 答えてくれ!」


 焦れた照が、声を大きくした。

 彼もまた気付いたのかもしれない。

 花子は、ふわっとその場に浮いて見せた。


『呼ばれたのよ』

「え……?」


 窓の外から、枝葉が擦れるようなざわざわとした音が滑り込んでくる。

 いや、それは本当に外からなのだろうか。枝葉の音なのか。

 花子の変わらない表情に、華子の感じる得体の知れない恐怖が透けて見えるようだった。

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