四話 呼ぶ山3-2
ログハウスに入ると、締め切られていたせいもあり、外の澄んだ空気とは違ったもわっとした熱気が、華子と照を迎えた。しかし、室内は綺麗に掃除されており、空気以外は文句なかった。
玄関を入ればすぐに二階へ上がる幅の広い階段があり、右手にリビングとダイニングキッチン。一階の奥には、お風呂とトイレがあり、一つ部屋があった。二階はドアが向かい合わせにあり、ダブルベッドとツインベッドの部屋となっていた。
二階を寝室とし、直也は華子と一緒の部屋がいいと言い出すから、とツインに子ども達、夫婦はダブルと照が決めた。
ツインの部屋は、華子の自室よりももちろん広く、今まで家族旅行でも泊ったことがないほど、落ち着いた雰囲気で木の香りに満ちていた。
部屋の中でも、蝉の大合唱は木造の壁越しに聞こえてきた。
外から見ていた窓を、今度は中から臨む。山々の緑が遠くまで続いている様がよく見えた。
「すごぉい。花子、すごくない?」
小声で花子に話かけたが、答えはなかった。
(なによ……せっかく少し話せると思ったのに)
荷物をそれぞれの部屋に運び、空気換気のために、窓を開けた。
「少し休憩していこうか。ちょっと喉渇いちゃってさ。リビングで待ってて」
照の提案に、華子も賛同した。
直也と美優紀ともはやく合流したかったが、寝不足だった上に車に長時間揺られて、少し落ち着きたかったのだ。
リビングには、シンプルなこげ茶色のカバーがかけられた二人掛けのソファが一脚と、同じタイプで一人掛けの物が二脚、木製のテーブルを囲うように置かれていた。
華子は、その内の一人掛けに座った。
照はキッチンへと入っていった。
冷蔵庫には、飲み物だけ常備されているようだった。
華子にお茶を手渡し、照はアイスコーヒーを飲んだ。
「ここ、気に入ったかい?」
「あっ、はい! とっても!」
華子が元気に答えると、照もホッとしたように笑ったが、それはすぐに苦笑に変わる。
「ハナちゃん、君も、見える側なんだね」
「……え?」
急に核心を突かれ、華子は動揺した。
どこでバレてしまったのだろう。
さっきの小声が聞かれてしまったのだろうか。
まさか、直也と美優紀が気付いて、照に話したのか。
いや、そんなことはないはずだ。
(二人は、わたしを避けたりしないし、例え気付いても、きっと大丈夫……照さんだって……)
『もう、変わらないわね、照は』
「えっ⁉」
さっきは話しかけても応じることのなかった花子が、すぅっと姿を見せた。
花子のムッとしたような声に、照が苦笑を深くする。




