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一話 呪われた彫刻3-2

「しにん?」

『まあ、今でも口裂けちゃんや赤マントやメリーポピンズみたいな輩はいるけど、そいつらとはまた違う』


 花子は頭をがりがりと掻いた。


 ちなみに、メリーポピンズは、花子と犬猿の仲らしいメリーさんのことだ。ニックネームが本名(なのかは華子も分からない)よりも長い理由は、ただ語感が良いからだと花子が言っていた。

 花子はまるで有名な彫像のように、顎を手に乗せ、指を忙しなく動かしていた。ここまで彼女が困惑しているのは珍しい。


「ね、ねぇ……直也君、大丈夫よね?」

『分からないわ。彼らに意思はないもの』


 彼らと花子はハッキリ言った。


「えっ、ちょっ……話が見えないよ。彼らって? 呪われた彫刻って物なんじゃないの? それがどんな悪さをするの? 見たら祟られるってこと? それとも、呪いが取り憑くの? そしたら、死んじゃうの?」


 いつもだったら、一気に言うな、と一喝されるだろうが、今日はない。

 校内に反響する雨音が五月蠅い。


『まあ、全部ね』


 さらりと肯定された答えは、絶望的なものだった。


「はっ、花子! それ、まずいんじゃ……」

『だから、頭抱えてるんじゃない』


 この小学校一古株のお化けは、真剣だった。

 トイレの花子さん。彼女は、学校の怪談の最強のお化けであり、学校の守り神のような存在でもあることを、華子以外知る者はいない。

 彼女がいなかったら、危険が増していた霊障は数知れないのだ。

 それだけではない。学校のお化け達も、花子がいるから安心して、人を怖がらせることができると言っても過言ではなかった。


『今も、他のお化け達が怯えてる。いつもだったら、雨音以上に五月蠅い理科室や音楽室に誰もいないわ。自分達が吸収されるかもしれないから』

「学校のお化け達にも被害が出るの……?」

『あたしが考えるに、学校だけじゃない』


 突如、校内が震えた。雨音のせいではない。

 蒸し暑かった空気が、やけにひんやりとし、雨の音と混ざって何かが呻いているような振動が伝わってきたのだ。

 それは、一人ではない。何人もの呻き声。それが重なり合い、学校全体を揺らしている。


『……探してる』

「さ、探してる?」

『同調してくれる者をね。生きている者が聞いたが最後、連れて行かれるわ』

「ちょっ、ちょっと! 聞いちゃったんですけどぉ!」

『あ、忘れてた。そういえば、霊感だけは強かったわね、ハナ』

「おいぃ!」


 勢いに任せて花子に掴みかかりたくても、彼女に実体はない。

 その間にも、呻き声達は徐々に三階の女子トイレに近付いてきているようだった。


「どっ、どどう、どうしよう⁉ 花子ぉ~!」

『あたしがいる限り、手出しはできないわ。てか、させないから安心して』


 ふわりと赤いワンピースを揺らしてトイレの入り口に立った花子は、徐に右手を前に翳す。

 と、青白い炎がぽつぽつと現れ、ゆっくりと円を描き始めた。

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