四話 呼ぶ山1-2
しばらく、親子の話を聞いていた華子だったが、カフェオレを飲んでいたのもあり、トイレに行きたくなった。
(遠慮なくって、照さんは言ってくれたけど……ど、どうしよう……みんな、行きたくないかも……でも、このままでも、もっと迷惑かけるし……ど、どうしよう……考えれば考えるほど、トイレに行きたくなってきたし……!)
華子がおろおろしていると、運転席から再び声がかかる。
「ちょっと休憩しようか。もう少ししたら、サービスエリアだよ。そこが有名でね。揚げパンが美味しいんだよ」
「行こう!」
直也が嬉しそうに答えた。
サービスエリアに着き、華子は慌ててお手洗いへ向かった。
用を足し、ホッとしていると、頭上からぞわぞわとした感覚が降ってきた。
が、いつもの恐怖はなく、どちらかと言えば、安心する。
(なっ、なんでここで……⁉)
こわごわと上を向くと、そこにいたのは、見慣れた赤いワンピースの――
「はッ……⁉」
『呼ばれてないけど、出てきてジャジャジャジャーン!』
思わず大声を出しそうになった華子は、さっきよりも大慌てで口を噤み、彼女の名前を呑み込んだ。
『はぁ~、こんなに遠くに来られたのは初めてかもぉ!』
仰天し過ぎて口をパクパク開閉させる華子とは反対に、長い黒髪を、シャンプーのCMのようにふわりと掻き上げた彼女は、嬉しそうに笑っている。
が、華子の格好に、肩を竦め、いつも通り呆れた。
『下着、上げないと、風邪引くわよ、ハナ』
「だって、突然……!」
『シッ! 声が大きい!』
「ッ……!」
華子は困惑しながらも、またぐっと言葉を呑み込み、いそいそと下着を上げた。
だが、しかし、彼女が本来いるはずの小学校の三階の女子トイレの右から三番目の個室では決してない。
心から叫びたい、この疑問。
(なんでここに……花子がいるのぉ⁉)
その答えを、学校のお化けであるはずのトイレの花子さんは、今くれることもなく、満面の笑みを華子に向ける。
『ハナ、あたし、有名な揚げパン見たい!』
時々見せられるこの無邪気さにいつも押し切られてしまう。
華子は苦笑し、頷いたのだった。




