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三話 音楽室のピアノ6-2

「夏休み、どこへ行く?」

「そうねぇ、海とか、プールとか」


 借りたタオルを畳み、テーブルに置いて、華子は答えた。

 休み時間は誰とも話さないからもちろんのこと、授業中も直也とどこへ行こうか考えていた。

 が、正直、友人と遊びに行くという経験値が、華子にほぼない。しかも、小学三年生の男の子が楽しめる場所は、さらにハードルが高かった。

 できれば、特別な場所や人気の場所を提案したかったのだが、思い付いたのは、さっき言った定番の海やプール、後は花火だ。

 華子のありきたりな提案に、直也はしかし嬉しそうに頷いた。


「うん! プールや海、いいね! 夜のプールや海に出る幽霊とか、お化けとか、見られるといいなぁ」

「え? あ、……う、うぅん、夜はちょっと……」


 直也の反応に、華子は肝心なことを失念していた。


 彼が、怪談マニアだったことを――


 遊園地のお化け屋敷の方が喜ぶだろうか。


(ただ……わたしがお化け屋敷、苦手なんだよなぁ)


 単純に怖い。どこに潜んでいるか分からないお化けに驚かされると、心臓が止まりそうになる。


(夜の小学校も、花子以外未だに怖いし……)


「ちょっと、直。そういうことばっか言わない。華子ちゃんまで巻き込んで……前のようなことになったらどうするの?」


 これには、さすがに美優紀が渋い顔をした。

 以前、直也は呪われた彫刻の邪気に中てられ、操られた経験がある。美優紀もそれを見ただけでなく、操られた直也に吹き飛ばされたのだ。

 直也達との出会いのキッカケとなった事件ではあったが、あのようなことは華子も御免だ。


「好きなのはいいけど、遊び半分でそういう場所には絶対に行かない方がいいって、何回も言っているでしょ?」


 美優紀は、頭ごなしに直也の怪談好きを否定していないようだが、そういった場所などに関わることは止めているようだった。当然と言えば当然だ。


「うん……」


 直也も素直に頷いた。彼もまた、あの体験は恐ろしい記憶なのだろう。

 それでも、彼は怪談話を嫌いにならない。どうしてなのだろう、と華子は不思議に思った。


「夏休みに行く場所を相談しているの?」


 美優紀が話を変えるように言った。

 正直、華子はホッとした。


「はい。でも、わたし、あんまり友達と遊びに行ったことがないから……だから、直也君に喜んでもらえるような場所が、思い付かなくて……」

「お姉ちゃんと行けば、どこだって楽しいよ!」

「えっ……」

「まあ、直ったら」

「ほんとだもん!」


 真剣そのものの直也に、華子の顔はまた赤くなっていく。

 美優紀は、優しく笑っていた。

 夏休みの計画と言いながら、あの後華子は恥ずかしくてなかなか上手く話ができず、結局は直也の学校でのことや今ハマっている怪談話をうんうんと聞く時間になった。

 直也が、トイレに立った時だ。


「華ちゃん、ありがとう」

「え?」


 美優紀が、徐に言った。

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