三話 音楽室のピアノ5
雨が激しく降り始めた。
外で活動していた部は一旦中断し、校内に駆け込む。
しかし、サッカー部だけはボールを追って、ぬかるむ校庭を走っていた。
霖之助も、視界の悪い中、他の部員に負けずボールを追う。そうすることで、もやもやとする心中を振り払った。
(やっぱ嫌われてる? 俺、なんかしたかな?)
しかし、湧いてくるのは、華子の態度への疑問。
(えぇ……なんかしたかな? なんかあったとしたら、お見舞いに行った時くらいしか……)
「霖之助!」
「え? ぐッ……⁉」
謙の声にハッとしたが、少し遅かった。
勢い良く飛んできたボールが、霖之助の頭を直撃した。
「ぃッ……」
あまりの衝撃にその場に蹲れば、仲間と監督が駆け寄ってきた。
「吾妻! 大丈夫か?」
監督が心配そうに言った。
霖之助は、どうにか「あ、はい」と答えたが、頭の中はぐわんぐわんと回っていた。
星が見えるとは、まさにこのことか。
仲間の声と雨の音が、波のように押し寄せは弾いていく。
「軽い脳震盪を起こしてるかもしれんな。保健室でちょっと休んでろ。北川、肩貸してやれ」
「あっ、はい。ほら、吾妻」
謙に肩を貸してもらい、霖之助は立ち上がる。また世界が揺れた。
視界の端に、何かが見えた気がした。
(なんだ?)
赤い服――雨と灰色の世界に、映える。揺れているのは、自分の世界か、赤いそれか。
雨とは違う雫が、背中に流れるのを感じた。
霖之助は、緩慢にそちらへと首を動かした。
が、そこに赤はない。
「あ……れ?」
「吾妻? 大丈夫か?」
「えっ? あ、ごめん……うん」
気のせいか。雨のせいか。
霖之助は、謙に連れられ、ゆっくりと保健室へ移動したのだった。




