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二話 呪縛3-4

『ハナ、今日は帰った方がいいわ』

「えっ? でもまだ乙女ゲーム、一緒にプレイしてない……」

『あっ! そういえば、それしたかった! 明日、また来られる?』

「う、うん。いいけど」

『じゃあ、約束ね!』


 満面の笑みは、少女そのもの。

 花子は、華子に小指を見せる。華子も、繋げない小指を絡ませた。


「うん、また明日」

『ハナの帰り道は、大丈夫そうね。でも、振り返らないで』


 花子の言葉に、華子はしっかりと頷いた。

 こういった時は、友人の言葉に従わなければ、大変なことになる。

 花子が、『じゃあ、また明日ね』と言い、ふわりと窓の方へと移動した。


『あ、やっぱちょっと心配だから、あなた、ハナが家に着くまで一緒にいてあげて』

『はい! かしこりました!』

「えっ? えぇ⁉」


 見知らぬ霊に付き添ってもらう方が恐ろしいと思うのだが、という言葉は言えなかった。

 花子の姿はすっと闇夜に溶けて行った。


「花子こそ……大丈夫かな?」

『大丈夫ですよ! 花子さんはお強いですから!』


 サラリーマンの霊は、青白い顔を紅潮させる勢いで答えた。

 憧れの存在を褒め称える彼に、華子は戸惑いながらも苦笑した。


「あっ、……えっと橘華子です。帰り道、よろしく」

『僕は、宗像義純です。よろしくお願いします、ハナさん』

「あ、……」

『あっ、嫌、でしたか? 花子さんがそう呼んでいたもので、つい……』

「いえ、ハナでいいです。はなこだと紛らわしいですし、橘っていうのも、なんだか慣れないですから」

『では、お言葉に甘えて! ハナさん!』


 元気と言っていいのか、生き生きと言っていいものか。幽霊の宗像は、快活そうに華子へお辞儀をした。

 これでまた、生きていない者の知り合いが増えた。

 帰り道、少しだけ宗像と話した。彼は、言葉を発すれば花子を褒め称えていた。まるで信者のようだったが、彼は花子がいたから、自分は悪霊にならずに済んだと言った。恩を返すために、少しでも力になりたいと思ったそうだ。


『本当は成仏することが、いいのでしょうけど……花子さんには、はやく成仏しろって呆れられてます』


 そこだけは、宗像も力なく笑った。

 玄関の前まで来ると、宗像は自然と離れた。

 最後に、『おやすみなさい、良い夢を』とまで言ってくれた。

 華子も、「おやすみなさい、また」と手を振った。

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