二話 呪縛3-2
きっと転校しても、受け入れてくれる学校はなかったはずだ。
そんなことを考えながら、小学校へ向かった。
月明かりに照らされる学校は、不気味よりも神々しく見えた。
さっきまで自分が多くの人を傷付けた場所だというのに……
校門は堅く閉じられ、通常ならば中へ入ることは困難だろう。が、怒りが収まりきらない自分の前では、鍵などないも同然だった。
鍵に集中すれば、鈍い音を立てて、それは壊れた。
壊すって、簡単。
正面から堂々と小学校へ入り、昇降口の鍵もさきほどと同じように破壊した。そのまま自分の教室の近くにあるトイレへ歩いていく。
誰もいない校内は、静かだった。が、見えない者達のたまり場でもあった。
声なき声に歓迎されている気分だった。
居場所はやはりここなのだ。そう自分でも感じた。
三階のトイレに着く。
やけにそこだけ明るかった。
お気に入りの赤いワンピースと長い黒髪が、風もないのに揺れた。
「誰……?」
ふっと人の気配を感じた。
気配自体は薄っすらとしていたが、こちらに伝わってくる雰囲気が鋭かった。
「あなたは……」
この小学校ではじめて感じるものだった。しかし、知っているような気もした。
容貌が徐々に見えてくる。
――あれは……
赤いワンピースに、長い髪。
「あた、し……?」
それが、自分だったことを、今思い出した。
いや、それは本当に自分だったのか。
自分は――自分は誰だ?
自分は……あたしは……?
目の前の者が笑う。それは、まるで鏡のようで、そうでないような――
やっと……
自分の声だ。
いや、違う。誰の声だ?
自分が自分でなくなったような――
「あたしは、……」
赤いワンピースが揺れる。
すべてのことが、分かったような気がした。
しかし、すべてが消えていった。
自分が、自分でなくなった。
そして、自分が――
『あぁ、そうか。あたしは――花子』
一人の少女が此方からいなくなり、彼方に彼女が生まれた。




