二話 呪縛3-1
母親が泣いていた。
もうどうしていいのか分からない、と。
「あの子をどこかへやって……!」
悲鳴のような声が、家に木霊した。
「どこへやると言うのだ? 他所へやれば、さらに私達のせいだと言われるじゃないか」
「私が悪いのね。そう言いたいのね、あなたは?」
「誰がそんなことを言っている?」
「私があの子を産んだのが悪いのね……そうなんでしょう?」
「そういうことを言っているのではない!」
「ならば、誰が悪いのよ⁉ あの子⁉ そうでしょうね! あの子にあんな力があるのが悪いのよ! 産んだ私が悪いのよ! あの子にあんなに、……化け物みたいに恐ろしい力があるなら……産まなかったわ……!」
「落ち着け! 君がそんなことでどうする⁉ 例え、あの子が化け物だとしてもだ、我々はそうではないのだから」
産んだのが悪い。化け物だと思われている。
ここにいることがもはや罪だと、母親が言っている。
学校での惨事は、両親にすぐ告げられ、できるならば、いやもしかしたら早いうちに他所へ移ってくれと言われたようだ。
が、どこへ行こうが同じことだと、自分が一番分かっている。
恐ろしかった。
他の誰でもなく、自分のことが恐ろしくなった。
あれだけ人を傷付けたというのに、まだ湧いてくる怒りがある。憎悪が、ぐらぐらと心の奥底で煮えている。
あたしは――化け物なのね。
ここにはいられない。しかし、どこへ行こうと同じ。
では、どこへ行けばいいのか。
こっちへおいで
いつもよりも鮮明にそれは聞こえた。
外へ出る。両親は己に降りかかった不幸に嘆くことに夢中で、娘が外出したことに気付いていなかった。
月の綺麗な夜だった。それだけはなぜか鮮明に思い出した。
足は自然と小学校へ向かっていた。
学校にいる時は、まるで逃げるように隠れていた場所があった。
それが、三階のトイレの個室だ。
鉄筋コンクリート造りで三階建ての学校は当時珍しく、地域では注目されていた。それもあってか、噂は広まるのははやかった。悪い噂は特に、だ。地域の繋がりの強さも、この時は悪い方へと働いていた。
自分のことも、周知されていただろう。
危険人物として――




